以前、「「自分(私)がない」ということを前提にしてみる」ということを書いたことがあります。
人間というのは、「私」がなくてもとりあえずは生きていくことができる存在です。
しかも、そういう状態の人ほど行動力はあったりしますので、自分に私がない、なんてゆめゆめ思わない。
でも、確実に「私」というものはなかったりします。
(筆者も昔、それを他人に指摘されて、「えっ!?」ってなったことがあります。改めてチェックしてみたら、やはり、「私」はなかった。単に他人の規範を自分だと思って猛烈に頑張っていただけだった・・・)
例えて言うと、ログインしていないまま使っているスマートフォンのようなもの。
スマホは、グーグルやアップルのIDでログインして使用しますが、ログインしなくても、ある程度使えたりする。
電気屋さんに見本で置いてあるようなのがそうでしょうか。
もちろん機能は制限されています。
周囲からは「~~さん、不便だからログインして使えば?」と提案されても、
「いいの私はこれで」と答えたりする。
「でも、不便でしょう?簡単だからログインしちゃえばいいのに」と更に提案されると、
すこし怒り気味に
「私の好きにしているんだからいいのよ!!」となってしまう。
それどころか、ログインしていないことにも気がついていない、ということが起こっていたりする。
さらに、よくあることが、親など他人のIDでログインしていて、それに気がついていない状態。
「自分のIDでログインすれば?」と聞かれると、腰が抜けるような、足元が寒くなるような不安が湧いてくる。不安が怒りになってくる。
もしかしたら、他人に情報を乗っ取られるかも?スパムのメールが来るし、炎上するかも知れないし・・・などともっともな理由を考えてしまう。
当然現実に生きればリスクはありますが、健全なリスクを取ったほうが実際の被害は最小にできるのが社会というものです。
反対に、自分IDでログインしていない「私」がない状態を続けていることで大きなリスクを背負っている。親などの他者のIDに支配されている状態を無自覚に続けているような状態です。
※興味深いのは、「私」がない状態が重い方の中には、実際にメールアドレスも親のアドレスをそのまま使っていたりすることがあります。
あるいは、アドレスや電話番号がコロコロ変わったり。
「自分のIDでログインしていない~」というのは比喩じゃなく、本当に自分のIDを持てないんだ、ということがわかります。
これがトラウマというものの一番の問題ではないかと思います。
(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」
強いストレスを過去に浴びたことで、ログアウトしてしまった。ないしは、自分のIDでログインできない状態になった。
仮のIDや、ログインしていない状態で心身に違和感を感じている状態を「解離」と呼びます。
(参考)→「解離性障害とは何か?本当の原因と治療のために大切な8つのこと」
自分のIDではないから、機能が制限されたり、アプリがいう事聞かないのも無理はありません。
それどころか、リモートデスクトップ※みたいに、他人が操作していたりするようになります。
※リモートデスクトップとは、例えば、会社のパソコンを家で操作したりするような仕組みのことです。親が自分というPCを操作している、としたら怖いことですね。
自分のIDでログインできるようになるためには、いくつかの要件があると思っています。
その中での一番のものは、自分の自我(Being)を育むこと。
スマホでも、PCでも初めて使う場合には、セットアップを行いますが、そのセットアッププロセスのどこかでエラーしている。
人間で言えば、自我の発達段階のどこかでエラーが起きている。
具体的には、自他の区別がうまくつかなくなったり、自己主張できない、嫌と言えない、嘘がつけない、秘密が持てない、他人像や自己像が適切なものになっていない、といったことが生じている。
原因としては、親子関係が適切なものではなかったり、ストレスによる心身のダメージであったり、といったようなこと。
人見知り、といったようなよくある悩みも、信念の書き換えみたいなものでは到底解決できず、自我(セルフ)が成熟しないと対人関係の苦手感は拭うことはできません。
他者の価値観を内面化して、それに振り回されたり、ローカルルール人格みたいな状態になって乗っ取られたり、人の言葉に対しても壁がなく、ちょっとしたことでグサっと来たりしてしまうのです。
(参考)→「ローカルルール人格って本当にいるの?」
自我(Being)を育み、自分のIDでスマホにログインしてみたら、「なんで、今までこれをしてこなかったんだろう?」って、思うくらい世界は違って見えるのでしょう。
「他の人はどうりで、サクサク気楽に操作して、お互いにスムーズにコミュニケーションを取れているわけだわ」と。
それは、決して他者がすごいのではなく、自我が形成されていて、自分のIDでログインでしているという簡単な理由だったりするのです。
(参考)→「「私は~」という言葉は、社会とつながるID、パスワード」
従来のセラピーでどこかうまくいかない、悩みが取れない、という場合、自分のIDでログインしないまま(自我が未形成なまま)で、理想の人間になろうとしている、症状だけ取ろうとしている、ということが考えられるのです。
●よろしければ、こちらもご覧ください。
・ブリーフセラピー・カウンセリング・センター公式ホームページ
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