以前、「自分(私)がない」という記事でもかきましたが、トラウマを負っている人は、自分がなかったりします。
ぽっかり真空のように自分というものが空いている。
(参考)→「「私(自分)」がない!」
行動力があったり、色々と頭では考えたりしているので、とても「自分がない」なんて実感がわかない。
でも、よくよく考えてみると、自尊心はなく、自分の考えだと思っているものは、親や周囲の価値観の直訳だったりする。
そのことにも気がついておらず、ただ「失敗すると自分にダメ出しをしてしまう」「自分に厳しい」、あるいは「よくイライラする」と思っていたりする。
しかし、それは、実は親(他人)の価値観を真に受けてしまっている(内面化)ために起きている現象だったりします。
(参考)→「他者の価値観の影響はかなり大きい」
他人の価値観を直訳しているというのは、いうなれば主権を奪われて、「植民地」のような状態になっているということです。植民地は、土地があって人があって、政府らしきものはあっても、主権を奪われてしまっています。
同様に、人間は身体があって、頭が働いていて、行動していれば「自分(私)」なのではなく、「自分(私)」が成り立つためには、様々な要素が必要になります。
自他の区別(国境)であったり、自分の考え・価値観(憲法や法律)であったり、ストレス応答系など身体の機能(警察や消防や軍隊)であったり、
処理された記憶(歴史や伝統)、社会的地位と役割(正統性)であったり・・・
トラウマを始めとして、生きづらさを感じているとうのは、上記の要素のなにかを奪われていたり、制限されていたりする。国でいえば、主権が制限されているのです。
人間とは不思議なもので、植民地のように自分を奪われたままでも、他人の価値観を気が付かぬまま直訳して、あれこれと何十年も行動することはできる生き物だということです。
(参考)→「人間、クラウド的な存在」
全く動けなくなったりでもすればわかりやすいのですが、逆に行動的になったりするから、余計に気がつかない。
生きづらさは確実に感じています。ただ、それは自分のせいにしたり、何か他の原因であると考えています。
では、どうすれば気がつけるのか?ということが気になります。
「自分(私)がない」というと、何やら特殊で実感がわかない、ということになりがちですが、
例えば、
・自他の区別がついているか? 例えば、他人の考えや感情を先回りして考えたり、気をもんだりしていないか?
(参考)→「“自分の”感情から始めると「自他の区別」がついてくる」
・自分の考えや価値観をしっかり持っているか? 好き嫌いやその考え、実は親や他人のものなんじゃないの?
(参考)→「他者の価値観の影響はかなり大きい」
・ストレス応答系など身体の機能 睡眠、食事、運動は十分ですか?少しでも足りないとすぐに人間は心身のバランスが崩れます。
(参考)→「結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切」
・処理された記憶 過去について後悔したり、自分に駄目だしするような過去の記憶、ストレスはないですか?
(参考)→「更新されない記憶と時間感覚」「秘密や恥、後悔がローカルルールを生き延びさせている。」
・社会的な地位と役割 何らかしらの社会的な役割についていますか? 社会的な役割がないと人間は自分を保てなくなります。
(参考)→「「仕事」や「会社」の本来の意味とは?~機能する仕事や会社は「支配」の防波堤となる。」
といったことを具体的にチェックしてみることです。
とくに自分の考えや価値観は一番曲者で、ほぼ、他人のものだと、疑ってかかったほうが良いです。
私たちは、仕事やプライベートで自分の意見が通らないと思っていたり、自分だけがないがしろにされている、バカにされやすい、とおもっていたりすることがあります。
他人の考えや価値観からばかり発言したり行動したりしているのですから、他人に通るわけがない。
(参考)→「自分の意見ではなくて、世の中こうあるべきという観点でしか意見や不満がいえない。」
あるクライアントさんは、電車などでよく人が自分のスペースに入ってきてぶつかったりして、嫌な思いをすることがある、とおっしゃっていました。
それも、実は「自分というものがないために」他人からは自分は見えていないのかもしれない。
(参考)→「自分を出したほうが他人に干渉されないメカニズム」
「自分がない」という現象は、かつては特定のケースだけに起きているかと思っていましたが、生きづらさのある人はほぼ、なんらかしら「自分(私)がない」という事象が生じています。
生きづらさを感じていたら、
まずは、「自分(主権)がない」ということを前提にしてみることです。
(参考)→「ニセの責任で主権が奪われる」
すると、悩みの解決というのは単に症状を取るだけではなくて、自分(主権)というものを取り戻す取り組みでもあることが見えてきます。
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