他人の秘密を持たされる対人関係スタイル

 

 自分の責任の範囲が肥大化したり、ニセの責任を持たされたりすると他者から干渉されたり、生きづらさを生んだりします。

 そのことに関係するケースとして、よくあるのが「他人の秘密を持たされる」という現象です。 

 「あの人は、実は裏では人のことを悪く言っている」とか、
 「あの人は、他人を支配する人で、私のことを探っている」とか、

 
 家族についても
 「自分の母親は、自分に愚痴をいうのが当たり前だと思っている」といったようなこと

 自分の周りにはひどい人たちがいて、そのことに苦しめられている、と感じているわけですが、よく見ると、「他人の秘密を自分が持たされている」という構造であることがわかります。

 

 他人がひどい人である、という秘密を自分が持って悶々としたり、
 他人がほかでは吐き出せない愚痴を自分が持たされたり、ということ。

 「他人の秘密を持たされる」と、人間は呪縛にかかったように生きづらさを感じることがわかっています。

(参考)→「理不尽さを「秘密」とすると、人間関係がおそろしく、おっくうなものとなる。

 人間は、本来は自分で自分の秘密を持つことが大切とされ、それが自分と他人の境界を作り出します。成長に伴って、嘘をついたり、秘密をもつことで自己が確立されてくるわけです。

(参考)→「ウソや隠し事がないと生きづらさが生まれる」「人間にとって正規の発達とは何か?~自己の内外での「公的環境」の拡張

 

 それに対して、他人の秘密というのは、人間の自己の確立のメカニズムを狂わせます。

 
 かつてはやったアダルトチルドレンは、依存症の親の子どもという意味ですが、親が酩酊したり、くだを巻いている姿、問題があることを隠したり、尻拭いをしたりするなど、親の秘密、問題を子どもが持たされてしまい、表面的には大人びていますが自他の区別がつかない状態のことです。
 子どもはしっかりしているようにみられますが、実は生きづらさを抱えるようになります。
(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全」 

 

 

 「他人の秘密、問題」というのは毒のようなもので、とても大きな影響があるのです。

(参考)→「外(社会)は疑わされ、内(家)は守らされている。」 

 いつしか、他人の秘密や問題を自分が抱えることが人間関係のスタイルになってしまいます。

 ただ、上で見たように、当人は、他人の秘密を抱えている、ということに気がついていないことがほとんどです。

 なぜなら、見た目は、他の人がいかにひどい人かについて恐れや嫌悪感を感じていたり、他人の愚痴を聞かされている、と捉えているだけだからです。

 
 実はそうしたことは現象であって、問題の本体は「他人の秘密を抱えさせられるスタイル」にあるのです。

 

 他人の秘密とは、言い換えれば「他人の責任(ニセの責任)」です。

 他人の責任を抱えること、かまうことが当たり前になっていると、主権(私)が奪われます。

 ハラスメント、虐待というのは、実は、他人の秘密(ニセの責任)を抱えることに問題の核心の一つがあります。

(参考)→「ニセの責任で主権が奪われる」

 

 いじめでは、いじめられた子はそのことを親に言えないということがよくあります。いじめのことを伝えると家まで汚染されてしまうような感覚があって、いじめられているという秘密を抱えてしまう。

(参考)→「いじめとは何か?大人、会社、学校など、いじめの本当の原因」 
 
 性的虐待といったこともそうですが、その秘密は加害者がもたらしたものですがその秘密を被害者が抱える、という構図があります。
 
 職場でのハラスメントなども、自分に責任があるから試練として抱えて耐えることが自分の力であり、美徳であると感じていたりする。

(参考)→「あなたの苦しみはモラハラのせいかも?<ハラスメント>とは何か」  

 

 

 健康な感覚からすればおかしいとわかりますが、当事者になるとわからなくなってしまう。

 私たちも抱えている不全感について、「他人の秘密を抱えさせられるスタイル」が潜んでいないかチェックをしてみると、固まっていた問題が大きく動く感覚が感じられます。

 「自分の悩みとは、実は他人の秘密(責任)を抱えていただけだったんだ!?」と。

 
 ご自身の悩みも「他人の秘密(責任)を抱えていないか?」とチェックしてみると面白いことがわかってきます。

 

 

 

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