これ以上私を不安にするな! っていうイライラ

 

 他人に対してイライラする、といったことはとてもポピュラーなお悩みです。

 どうしてもイライラしてしまって、しかも、正当性は自分にある、と感じているケースも多い。

 ただ、イライラしていることには自分でも違和感を感じていてやめたいけど、やめられない。

 

 色々なケースを見ていてわかりますのは、人に対してイライラする!なんでもっとこうしないんだ! といった感情の裏には、「これ以上、私を不安にするな!」という不安感があることがあります。

 しかも、本人はそれを意識ができていない、ということが多い。

(参考)→「イライラ、怒りの背後にある「不安」

 

 たとえば、家族や友人が段取りが悪く、のんびり日常の用事をしているときに、それを見てイライラしてしまう。
 
 スーパーで買物をしててもたもたしているお客さんや店員さんを見てイライラする。

 道を自転車で走っていても、自分の予期しない方向へと道を塞ぐ人を見てイライラする。

 もっとこうして、手際よくすればいいのに! なんでもっと先を読まないのか?!ってイライラしたり、場合によっては口を出したりする。

 

 本人は、自分はテキパキ段取りが良くて、相手はダメで、という観点で、自分のイライラはもっともだ、と考えています。

 

 

 しかし、よくよく分析していくと、根底には「環境に対する不安」が背景にあったりする。

 安心安全感がないので、誰かから段取りの悪さや、自分の行いそのものについて駄目出しされないか、と感じていて、根底でビクビクしている。
 あるいは、不意に危険が襲ってこないか、普段ののんびりした行いがリスクとなってなにか大きな失敗を引き起こすのでは、とビクビクしている。

(参考)→「非愛着的世界観

 

 そのために、できるかぎり特に外での行動はなるべく最短で動こうとする。

 テキパキしなきゃと思っている。

 結局、落ち着きのない、せわしない行動になってしまっている。
 周囲を巻き込んでイライラしている。

 

 よく例えるのが、戦争から帰還した兵士が、平和な日常なのに、些細な物音でフラッシュバックが起きて戦場にいると錯覚して血相を変える、というもの。
 のんびりしている人の頭を抑えて「お前、ここがどこかわかっているのか?!のんびりしてたら、ゲリラにやられて死んでしまうぞ!」と叱責する。
 (昔、マンガ「こち亀」でそんなキャラクターがいましたが)

 

 アメリカ映画で、帰還兵(たしかトム・クルーズ?)が庭でくつろいでいたら、草むらがガサガサとなったら飼い犬が嬉しそうに出てきただけなのですが、「ゲリラか?!」となって汗だくになる、みたいなシーンを見たことがありますが、まさにあんなかんじ。
 

 周りののんびりしている人は気が利かない、危機感のない、腹立たしい連中にしか見えず、それがイライラにつながる。

(参考)→「「自分は他者とは違う」と思って落ち込み、「他者は自分と同じ」と思ってイライラし、不安になる。 

 

 もう一つの背景として、
 「段取りよくしなきゃ」「急げ!」「待たせるな!」という他人の価値観を内面化したままでいることも多い。多くの場合、親などの価値観の影響です。

 
 子どもの頃から、「段取り良く」とか、「きっちり」とかうるさく言われて育ってきた。

 その親も、同じく環境に対して不安を抱えていたりする。

 親を嫌っているはずなのに、その価値観はそのまま受け継いでいる。

(参考)→「内面化した親の価値観の影響
 

 そんな構造を抱えたことを知らずに、目の前の人にイライラしたり、怒ったりしてしまっている。

 でも、イライラをぶつけられる側とすれば、今起きていることとイライラとが釣り合わないことは薄々感じ取っています。

 

 上で見たように、繰り返しになりますが、トラウマを負った人は戦場から帰ってきた兵士のようなもの。
 フラッシュバックが起きて「ここは戦場だ!のんびりするな!」「世の中は危険だらけなのよ、わかってる?!」と怒るわけですが、
 健康な人にとっては、平和な日常でしかありません。

 

 だから、そんななかで、「もっとテキパキ動け!」「段取り良く!」なんていわれても全く響かないのです。

 「いや、戦場じゃないし・・・」「そもそも、なんであなたにそんなこと言われなきゃいけないの」と。
  

 

 職場でイライラする上司とか経営者なんかも、根底では不安を抱えていたりします。

 ビクビクおどおどしていて、そのために、イライラしている、ということはよくあります。

(参考)→「焦燥感、せっかちな態度、慌ただしさ、不安、ビビリなどもすべて巻き込まれるためにあるニセの感情に過ぎない」 

 

 それが、表面の威勢と食い違いを起こしてダブルバインドになっている。

 そのために、怒って脅していうことを聞かせているだけで、相手は無意識に矛盾を感じていますから、心からは動けない。

 その動けない相手を見て「使えねえな!」「危機感がないな!」「仕事できなないな!」とイライラしているだけ。

 

 

 本当であれば、「不安を感じている」と正直に言ったほうがいい。
 そうすれば、相手に伝わります。

 感情と態度が一貫しないと相手には伝わらないものです。

 さらに、自己一致もしていない。イライラに一番騙されているのは自分自身です。本当の敵(原因)を見失って、目の前の人や物にイライラをぶつけさせられているのですから。

 

 結局は、愛着不安であったり、親の不安であったりを代理で引き受けているだけなのに、そのことに目が向かないで、目の前の人をおかしい、仕事ができない、なんて原因を押し付けているためにずっとイライラが続いてしまうのです。

(参考)→「感情は、「理屈」をつけずそのまま表現する~自他の区別をつけて、ローカルルールの影響を除くトレーニング

 

 

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