“反面教師”“解決策”“理想”が、ログインを阻む

 

 以前にも書いたことがありますが、筆者も、両親が商売していた関係もあって夫婦喧嘩が多かったです。

 自営業だと職場と家庭との境界が曖昧ですから、職場の問題がそのまま持ち込まれて家庭内でも喧嘩になってしまいます。

 そうしたストレスを感じていたので、子どもの頃はよく怒った人の顔が出てくる悪夢を見ていました。

 当時のストレスはものすごかったんじゃないかな、とおもいます。

 

 

 さらに、社長である父と会長である祖父とが、税理士のおじさんを挟んで結論の出ない口論をしているのもよくありました。

 あと、親の兄弟が来ると、兄弟同士でごちゃごちゃとした話し合いになる。
  

 そういう事を見て「こういうふうにはなるまい」という“反面教師”にしたのだと思います。

 なので、本来おしゃべりで活発なはずが、成長するにつれて言葉が重くなっていきました。

 

 

 さらに、以前も書きましたように親戚のお兄さんから嫌われている、と伝えられたショックから、気楽にしゃべるということを封印してしまうようになりました。
 それは、子供の私がおしゃべりだから嫌われたのではないか?と父から聞かされたためです。

(参考)→「他者の視点は神の視点ではない。

 気楽にしゃべるということをしない、という意識的な“解決策”を持ってくることで、同じような目に合わないように、嫌われないようにしてきた。

 そうすると言葉がとても重くなる。
 
 相手の感情に感情で反論する、ということをしなくなる。

 本来だったら、サッと感情で対応して跳ね返すところを跳ね返せなくなる。
 
 運動神経で話すのではなく、頭で会話をするようになります。

 

 

 さらに、うまく人と付き合えなくなった自分を変えようとして、より良い自分を目指して、“理想”の人間像みたいなものを想定してそのように生きようとします。

 「寛容な人」
 「理性的な人」
 「物分りが良い人」「理解力がある人」
 「感情的にならない人」
 「優しい人」

 といったようなもの。

 

 

 すると、それらが連立方程式の一つの式となって重くのしかかるようになります。 
  
 シンプルに対応すればよい場面で、上に書いた式を考慮に入れることになります。

(参考)→「おかしな“連立方程式”化

 

 すると、対応できなくなる。
 

 例えば、失礼な言葉をかけられたら、「失礼ですね!」とサッと言い返せえばいいのに、

 まず“理想”という基準を考慮に入れます(「ここで反応したら、“感情的な人”になってしまう」「“理性的な人”であるためには、クールに対応しないと」)。

 さらに、上に書いたような“反面教師”も頭をよぎります(「あんな、おかしな大人たちにはなりたくない」)。 

 さらにさらに、過去に負ったトラウマ体験から“解決策”がよぎります(「もう、直感的に発言するのはやめよう」)。
 
 
 これらすべてを整合する行動を取ろうとして、すまし顔で冷静を装うような反応になって、自然な人間の反応にはならず、結局、相手にやられっぱなしになるのです。

 さっと直感的に言い返してしまえば、状況は沈静化するのに、それができなくなるのです。 
 

 

 映画「シン・ゴジラ」で、国が滅ぶかもしれないような非常事態にも関わらず、総理や政治家たちが、憲法や法律との整合性などで判断が遅れたりするシーンがありましたが、どこか似ています。
 あれは政治の難しい意思決定ですが、トラウマを負った人は、そんな複雑な意思決定のプロセスを平和な日常でも行い続けています。

 

 こうした“反面教師”“解決策”“理想”といったことを上から定立させることの一番の問題は、主権がなくなってしまうということです。

(参考)→「ニセの責任で主権が奪われる

 
 結果、自分というものがなくなってしまう。
 なくなってしまうどころか、他人のローカルルール上で生きるようになってしまう。
(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 たとえば、“反面教師”によって、自分がなりたくなりとおもっていた親とは真逆な人間になっているかと思ったらそうではなく、結局親にとらわれている。
 さらには、追い込まれると親と同じ行動や考えをしてしまっていることに気づいたりする。

 
 親が持つみたいなネガティブな感情は自分にはないと思っていたら、ベターッと拭えない感情の存在に気づいて愕然としたりする。

 つまり、他人のIDでログインさせられているだけだったりするのです。

 (参考)→「自分のIDでログインしてないスマートフォン

 

 この“反面教師”“解決策”“理想”はなかなかやっかいで、それがコンクリートの壁のように主権を取り戻すことを阻んだりします。

 スポーツなどにおける癖、それまでのフォームみたいなもので、それが次に進むことを邪魔してしまう。

 自分のエゴ(私)から出発して、他者の価値観は一旦否定して、自分のものに翻訳し直して、さらに社会での位置と役割を得て、公的人格に昇華されて初めて自分らしく生きていくことができます。

 
 人工的に“反面教師”“解決策”“理想”を持ってきてもうまくいくことは絶対にありません。
   

 

 

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