自分が見透かされている、という暗示

 

 以前の記事で、Doing と Beingの分離 や言葉は物理に影響を及ぼさない、ということを取り上げました。

(参考)→「存在(Being)は、行動(Doing)とは、本来全く別のもの」「言葉は物理に影響を及ぼさない。

 

 悩みがなかなか抜けない場合、魔術的なものが介在していて、自分に影響しているという感覚がどうしても拭えなかったりします。

(参考)→「目に見えないもの、魔術的なものの介在を排除する

 

 

 その際によくあるのが、「自分の心や考えは、人から見透かされている」というもの。

 特に親や、あと年上の人や偉い人には隠しても見透かされてしまう、という感覚。

 

 自分はおかしな存在、異常な存在であって、それを隠さなかればならない。

 穏やかな人やいい人であれば隠せるし、少しバレても目をつぶってくれるが、ちょっと鋭い人や、口の悪い人にはバレて指摘されるのではないか?という感覚。
(参考)→「自分がおかしい、という暗示で自分の感覚が信じられなくなる。」 

(参考)→「バレていない欠点があって、それを隠してコソコソ生きている感覚

 

 過去に実際に親などから、「あなたの考えていることなんかお見通し」みたいなことを言われたり、態度で示されたりした経験がある場合もあります。

 それは、相手を支配するために行っているトリックでしかなく、相手のすべてを見抜ける人、見透かすことができる人はこの世には存在しません。

 「でも、一瞬で相手の才能を見抜いたり、みたいなエピソードを聞いたり、読んだりしたことあるよ」と思うかもしれません。

 それは、限られた条件下のことであったり、誇張された話でしかありません。

 

 実際に、例えば、大企業などでも、人材採用などで、面接の方法などを工夫したりしていますが、未だに完全に相手を知るような方法は開発できていません。
 心理テストなども、ほとんどが科学的根拠がない、ともされます(村上宣寛「心理テストはウソでした (講談社+α文庫)」)。 

 見抜けている、というのは、そんな気がするだけで、実際にはそうはなっていない。

 

 たとえば、ベテランの精神科医や、心理カウンセラーは、クライアントの雰囲気や体感から瞬時に相手の状態を見抜いたりすることはあります。
 「におい」で感じ取ったりもします。
 
 「じゃあ、見抜ける人がいるんじゃないですか!?」と思うかもしれませんが、実は違います。

 見抜いているのは、“症状”という限られた領域だけで、その人の人格全般についてはわかりません。心の中もわかりません。

 

 プロ野球の選手がバットを振っただけで実力を見抜く、みたいなエピソードも、それはあくまで、野球についてだけで、その人全体のことはわかりません。見抜く力もいい加減なこともあります(ドラフト1位で採った選手も活躍しない人は多いし。。。)。
 

 会社の評価がいい加減、と感じるのは、働いている方であればよくよく感じていることです。
 全然実力を見抜けてなんかない。 

 トランプさんみたいな人でもアメリカの大統領になることができます。

 

 

 これまで挙げた例でわかるように、要は、人が人についてわかるのは、Doingの、さらに一部分だけ(野球のバッティング、とか、病気の症状とか)、ということです。Beingについてはまったくわかりません。

 そもそも、相手のBeingを云々すること自体が、恐れ多いし、おかしなことなのです。
 相手のBeingを評価したい、相手のBeingが見抜ける、という気持ちにとらわれたら、どこか問題を抱えていることになります。

 

 
「でも、自分の親は、私のことを見抜けるんです・・」「私は見透かされるんです」と感じるかもしれませんが、もし、親に本当にそんな力があったら、もっと出世してるし、偉くなっているでしょう。
 

 相手を支配しようという意図や、自分の不全感を癒やしたいという気持ちからくる、単なる暗示でしかありません。

 まず、痛めつけておいて自信を奪って、「あなたは自信がないでしょう?わかるのよ」とやっているだけです。

 「他の人はDoingが完璧なのに、あなたのDoingは失敗ばかり、それはBeingが不完全な証拠」
 「言われたくなかったら、Doingを完璧にしてからいいなさい。Doingが完璧にならなければ、Beingは完璧とは認められない」という論法です。

 

 

 

 前回もかきましたように、人間というのは誰でもズルくて、スケベで、いい加減なものです。

(参考)→「Doingは誰しも、もれなく、おかしい

 芸能人がスキャンダルで仕事を失ったりしますが、叩かれている芸能人が特別おかしな人なのではなく、バレていないだけでみんな同じようなものだ、ということです。

 「あんなキレイで、かっこよくて、しっかりしていて、自身に満ち溢れているのに、なんで?!」

 みんなそんなものです。

 でも、それらはすべてDoing の問題です。Beingは関係ありません。

 
 だけど、Doing の問題を目をつけられて、「ほら、あなたはこんなに汚れたおかしな人間なのよ!(=Being)」とされて、Doing とBeing を魔術的なものでくっつけられてしまう。

(参考)→「目に見えないもの、魔術的なものの介在を排除する

 

 でも、人間のDoing は誰でもいいかげんであり、間違いもするものであることは変わりませんから、日常でミスや間違いをするたびに、「見透かされている!?」「やっぱり自分はおかしい、なぜなら証拠があるもの」と感じて、その暗示から抜け出せなくなってしまうのです。

 

 

 

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