“作られた現実”を分解する。

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「物理的な現実に根ざす必要がある」と聞くと、
「いま、ハラスメントにあっている自分というのは現実なんです」「今まで失敗を繰り返してきたのは現実なんです」「だめな自分は現実なんです」
ということが頭に浮かんでくる方がいらっしゃいます。どうしても、目の前にあるものが現実に見えると。

 

 

 まず結論から言えば、それは、ローカルルールによって“作られた現実”ということになります。

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 

 ローカルルールは、現実というものを歪曲したり、不利な環境から現実を作り出したりします。今ある状態が現実であると真に受けさせられて、ローカルルールが維持されてしまうことになります。

(参考)→「ローカルルール人格が感情や記憶を歪める理由

 

 

 そのため“現実”とは何か?について整理しておく必要があります。

 まず“現実”とは、今ある「状態」のことではありません。

 社会において、今ある「状態」とは、多くの場合、時間の経過を経て、作り出されているものです。

 

 例えば、アメリカ社会において黒人は白人に比して、犯罪率が高かったり、所得も低かったりすることが知られていますが、それをもって、「黒人は白人よりも劣っている」と考える人がいれば、それが誤りであることは明らかです。

 

 「でも、個人が頑張ればいいじゃない」「機会の平等があるのに犯罪率が高かったり、所得も低いのはやはり努力が足りないのでは?」という考えが出てきますが、人間というのは環境によって成り立っている生き物です。環境のサポートがなければ社会的な成功もおぼつかないのです。

 

 個人の意欲や努力でさえ環境の支えによって生み出されるものなのです。
 実際、日本でも、東大に進学する人の家庭の所得はそうではない人と比べると高いことが知られています。

 差別されてきた人々にとっては、経済的な環境だけではなく、社会からの視線もハンデとなります。

 
 そうした諸々の影響の結果、道徳の荒廃などがうまれて犯罪率の高さにつながったり、所得の低さなどに影響するのです。

 その「状態」は物理的な現実か?といえば、違います。

 

 「物理的な現実」は、どこまでいっても「黒人も白人も、基本的に人間の能力に差はない」ということです。

 歴史的に社会的に形成されてきた「今ある状態」が「変わらぬ本質」であると思わせることもローカルルールだということです。

 

 

 私たち個人でも同様です。
 環境が整っていなければ、成功することはできませんし、否定的な認知にさらされ内面化されていれば、パフォーマンスは下がります。

 

 社会心理学では、「ピグマリオン効果」ということが知られています。

 実験で、教師が、本当は違いがない2つのクラスにおいて、「このクラスの子は優秀だ」「このクラスの子は問題児たちだ」と事前に伝えられて授業に臨んでいると、実際に伝えられたとおりに、優秀だと知らされていたクラスは優秀になり、劣っていると知らされていたクラスは成績も下がってしまうのです。

 これも、“作られた現実”です。

 
 「物理的な現実」は、「どちらのクラスも差がない」のですから。

 

 

 でも、目の前の状態を変わらぬ本質だと思わされてしまうと、「ほら、事実、テストの点数に現れているじゃないですか?!彼らは成績が悪い子達なのです」という人がいたら、その人はやはり間違っているのです。

 

 

  調査などで、集めた資料がすべて「証拠」では無いことと同様です。分析され、選別されたものだけが「証拠」です。
 

 しかし、私たちは今ある状況を「証拠」だという人によって振り回されることがある。「実際に、あなたはできていないじゃない」「実際に、失敗してきたじゃない」といったような発言に。

  
 親が不全感から、「あなたはだめな子だ」「あなたは気が利かない」「だめなお父さんにそっくりだ」などと子どもに伝えていれば、子どもはそのようになりますし、自信のなさから失敗を繰り返してしまうことになります。

 これは、人為的に作られた「状態」であって、「物理的な現実」ではありません。
 

 
 「物理的な現実に根ざす」とは、「今ある状態」について真に受けず、時間を巻き戻すようにして、ローカルルールによって形成する過程や、構成している環境を分解していくことです。

 不安、恐怖、罪悪感、劣等感と言った感情もまとわりついていますから、それも拭う必要があります。

 そうした作られた現実を剥ぎ取った先に「物理的な現実」が見えてきます。

 

 

 そのためには、普段使う「言葉」に注意する必要があります。
 安易に「現実」とよんでいると混乱させられて、ローカルルール人格にうまく利用されています。

 まず、今目の前にある現実については、「状態」「状況」と呼びます。

 過去についても、「過去の状況」と呼びます。

 そして、今ある「状態、状況」とは、歴史的、社会的に構成作られたものだ(作られた現実)と知り、
巻き戻して、分解した先にあるものだけを「(物理的な)現実」とするのです。

 

 「今ある状態、状況」=(物理的な現実+ローカルルール+否定的な感情+俗な知識+過去の記憶+取り巻く環境 など)

 といったように。
 

 

 「物理的な現実」がわかれば、ローカルルールに対抗できる足場ができます。

 

 

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 

●よろしければ、こちらもご覧ください。

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