ローカルルール人格というのは、内面化されたローカルルールのことです。
理不尽な親の価値観であったり、その言葉であったりを真に受けたり、それに対抗しようとした結果、内面化されてしまうのです。
人間というのはモジュール(人格)の集合体ですので、ローカルルールは人格のように悪さをしてくる。
否定的な考えを沸き立たせたり、はっきり言葉で聞こえてくるようにしたり、ということがおきます。
ローカルルールの目的は、ローカルルールの延命ですから、本当にその方が良くなると困ります。そのために、様々な邪魔をします。
(参考)→「ローカルルールとは何か?」
大変面倒なことですが、病院の治療やカウンセリングそのものもやめさせようとする(ドロップさせる)ことがあります。
速く治したいというふうに焦らせたり、
もう治らないのではないか、と悲観にさせたり、
治療者への不信をわたき立たせることもありますし、
なぜかわけのわからない理由で治療そのものを辞めるように否定的な観念が湧いたり、幻聴が聞こえたり、といったことがおきます。
辞めるのではなく、他の病院、治療者のところに行け、というふうに促されたりすることもあります。
もちろん、治療が合わない、といった合理的な理由で病院を変える、治療そのものを辞めることはあります。
先日、お笑い芸人の名倉潤さんがうつ病で休養されていましたが、途中治療が合わないので奥さんなどの判断で病院を変えてうまく行ったそうです。これはもちろん合理的な判断です。
一方、症状が重いケースを中心に多くの場合はローカルルールの影響で非合理な理由で替えてしまって、治療の機会を失っているということも大変多い。
ローカルルールによって引き起こされたものか、そうではないかを判断するのはなかなか難しいのですが、ただ、直感的に違和感を感じていたります。
なんとなくおかしい、というようなこと。
実は、治療も確かに進んでいて、まだ症状が残っているのに途中で辞めるという場合は、ほぼすべてのケースでローカルルール人格の影響があります。
ただ、治療者の側のためらい(引き止めることはなかなかしづらい。)もうまく利用されて、ドロップしてしまうことが多いです。
希死念慮など、重い症状を抱えている場合は、辞めないように誓約書を書いたり、といったことはありますが、そうではない場合、治療者の側もそれを妨げる、引き止めるということは通常しません。
ローカルルールについてもっともっと解明、理解が進めば、治療者も自信をもって「それはローカルルールの影響だよ」といえますが、現状だと、ためらいが出たり、巻き込まれる恐れもあるので、なかなか難しい。
ローカルルールの影響があることが確信を持ってわからないまま関わると、かえってローカルルールに巻き込まれる、ということもありますから、現状は引き止めずに、治療者は淡々と見送ることのほうが良いのかもしれません。
クライアントさんの中の本来の人格がなんとか頑張ってくれることを期待するしかない。
もし、後日なんらかの機会があれば、クライアントさんの身に何が起きていたかを説明する、というのが一番良いのかもしれません。
短期的には、こうしたことの結果、少なからず悩みの解決が停滞したり先延ばしされたりしますので、ローカルルールにとってみれば、ローカルルールの延命工作が成功することになります。
治療そのものを妨げるようなローカルルールが見られるケースというのは、重い愛着障害や、トラウマがあるケースが多いです。
(参考)→「「愛着障害」とは何か?その特徴と悩み、4つの愛着スタイルについて」
→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」
自分の存在をそのものをだめにするような観念や、将来への悲観、不信が内面化するくらいひどく理不尽な目に過去にあわれてきていた、ということです。
虐待や愛着障害の興味深いところは、単にひどい目にあいました、ということでは終わらずに、必ず、そこで展開されたローカルルールを内面化してしまっているということ。
そして、いまも親などへの恨みや怒りと同時に、そのローカルルールに健気に従い続けているということ。
境界性パーソナリティ状態が典型ですが、愛着が傷ついているために、自己破壊的な行動をとってしまう。
ケースによっては、依存症といったことにつながったり、自殺企図ということをおこしたり、これも、ある意味(生きることからの)ドロップということになります。
本人の意志ではなく、ローカルルール人格がニセの衝動を仕掛けてきていて、それに巻き込まれているということ。ローカルルール人格のうるささ、不快さから逃れるために問題行動を起こしてしまったりする。
ドロップというのは、ローカルルールに従い続けているということを表す顕著な事象であるということなのです。
(参考)→「ローカルルールとは何か?」
●よろしければ、こちらもご覧ください。