ご後援御礼。皆様の声をお届けください。

 

 2月に発売いたしました『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』ですが、お陰様で、好評をいただき発売1ヶ月で増刷(重版)となりました。
 皆様に応援、ご支持いただいておりますお陰です。この場を借り、厚く御礼を申し上げます。

 

 お読みいただいた方からは、

 「やっと自分の生きづらさを掬ってくれるものがでてきた」
 「この本によって、社会の一員として扱われた感があります」
 「はじめてトラウマがわかった」
 など、の感想をいただいております。
 感想を拝見しますと、今まで届かなかった方に橋をかけるというこの本の役割と、こ伝えたい事が多くの方に届いている印象があります。

 さらに多くの方に手にとっていただけるようになればと思います。 

 

○ぜひ、皆様の声をお届けください。

 すでにお読みの方にお願いでございますが、
 もし、よろしければ、

  ・アマゾンのレビュー

   などで感想をいただけますと幸いです。
  (あるいは、インスタグラムなどSNSに)

 皆様の声をお届けいただくことが、同じような生きづらさやお悩みの方にとっての機会となり、それが力となります。

 引き続き、ご支援いただけますようお願い申し上げます。

 

 みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)

 

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トラウマの本を読んでもピンとこない

 

 私もかつて、生きづらさにたいへん苦しんでいた時期がありました。
解決の緒(いとぐち)を求めて、色々と取り組んだり、本を読んでみたりしました。

 その中に、トラウマに関するものもありましたが、全くピンとこなかったことを覚えています。自分とは関係のない遠い世界の話が書かれている。あるいは、トラウマを題材にして、なにやら抽象的な、衒学的な事が書かれているだけ、という印象でした。

 自分の生きづらさとつながるような説明が全くありませんでした。
 

 

 ですから、当事者の私は自分の生きづらさとトラウマを結びつけることができず、「自分の生きづらさはトラウマが原因ではない」「トラウマなんて存在しないんじゃないか?」と考えていました。
 そんなことより、努力して頑張ろう、みたいに考えていたのです。

 

 

 それもそうで、ある意味専門家もわかっているようでトラウマの実態がよくわかっておらず、トラウマは劇的でわかりやすい症状や問題から概念化されてきたためです。

 そのため、トラウマは一部の人だけの特別な事象とされ、多くの人にとって遠い世界のものとされてきたのです。

 トラウマが生きづらさと結びつかないために、別の概念(アダルト・チルドレン、発達障害、パーソナリティ障害、HSPなど)で説明しなくてはならず、「たしかにそうだけど、いまいちすべてを説明しきれない」「解決には繋がりにくい」という事態が生じていました。

 

 

 

 トラウマ研究もまだまだ途上でしたので、それもむりもなかったのかもしれません。

 トラウマについて書かれた本がこれまで分かりづらかったことの原因としては、日常の生きづらさというものは当事者でなければ、なかなか言語化できない、ということもあったと思います。
 第三者の立場で接する研究する研究者にとってはなおのことで、そのために劇的な事例にばかり目が行くことになっていました。
 

 

 これは吃音(どもり)にもいえます。当事者と、研究者や治療者との感覚の差は、驚くほど大きいものです。
 そのため、果敢に吃音の解決に取り組み始めた一部の治療者が最初にしたことはなにか、といえば、それはそれまでに出た専門書を捨てることだった、といいます。
 専門書に書いてある通りにしてみても実態に即しておらず、全然良くならなかったためです。
 (実は、学会で別の治療者も、同様のことを言っていました。まず専門書を捨てるところから始めた、と。)

(参考)「吃音(どもり)とは何か?本当の原因や症状を理解する7つのこと」

 

 

 こうしたこともあり、トラウマに関する本はいくつも出版されてきましたが、臨床心理の専門家が見てもよくわからない、わかりづらいものとなってきました。

 近年は、良い本もいくつか出てくるようになりましたが、特定の理論から説明されていたりとまだ”遠い”と感じていました。 

 

 今回出版させていただきました本は、そんな状況を橋渡しして、生きづらさに悩む方に、トラウマとはなにか?をお届けするべく、
 なんとか頑張って書かせていただきました。

 

 よろしければ、ご覧くださいませ。

 

 

みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)

 

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『anan(アンアン)』2023/03/08号 No.2338[つながるチカラ/櫻井翔&菊池風磨] にて記事が掲載されました。

 

 本日(3月1日)発売の『anan(アンアン)』2023/03/08号 No.2338[つながるチカラ/櫻井翔&菊池風磨] にて 当センターのみきいちたろうが取材協力しました記事が掲載されました。
 
 「職場や友人、SNS…人間関係に疲れた人へ。備えておきたい現代コミュニケーション自衛術」というタイトルでSNSとの付き合い方や、スルースキルについてまとめたものです。
 書店やコンビニにてご覧、お買い求めいただけます。
 
 
 
 
 
 
 
 

 

日常にこそトラウマは存在する

 

 トラウマが身近な生きづらさを説明する概念として、これまで十分に適応されてこなかった理由として、「日常のストレスでは、トラウマになりえない」という専門家の先入観がありました。

 

 トラウマ概念自体が戦争やレイプといった重度のストレスを中心に概念化されていったためということや、概念化を担う医師たちは、一般には重いケースを中心に見ることが多いということも理由としてあげられます。
 (フロイトが日常のトラウマに着目して理論を展開できたのは、フロイトが日常のトラウマに触れる機会のある在野の治療者であったためだと言われています)

 

 しかし、ストレスのダメージとは、“強-弱”ではなく、その対象となる生物の脆弱性にかかわるかどうか?が重要で、実際には生物は強度のストレスには意外な抵抗力を示したりもしています。

 例えば、阪神淡路大震災でPTSDとなった人は被災者全体の1割、ベトナム戦争でも研究によって幅がありますが15%というデータがあります。
 もちろん簡単ではない経験ではありますが、多くの方は自然と正常へと復帰しています。

 

 一方、軽度~中度でも慢性的に脆弱性にかかわるストレスを受けてきたケースというのは、長く生きづらさを抱えることにもなります。

 

 実際に、自衛隊などでメンタルケアをしていた医師も、その著作の中で、軍隊においても、PTSDなどを引き起こすのは、実は劇的な経験ではなく、慢性的なローリスクストレッサーである、ということを指摘しています。
(福間詳『ストレスのはなし』中公新書)
 福間氏はいまだに強度のストレスばかりがPTSDの原因とされる精神医学の現状について違和感を表明しています。

 戦争でも後々まで苦しむケースは、その劇的な経験も影響しますが、その後に社会からのサポートがなかったり、厭戦気分などで生死に関わる事象への意味付けがなかったり、といったような脆弱性にかかわるダメージによってもたらされるようです。

 

 

 ストレス学の権威であるアメリカの心理学者リチャード・S・ラザルスも以下のように指摘しています。
「重大なライフイベンドだけでストレスを定義づけてしまうやり方は、ストレス対処の方法を解明するうえで適切なストラテジー(方略)ではない」
「日常的混乱とは、モラール、社会的機能、そして健康をも害するような、外見的にはささいにみえても、ときに非常にわずらわしさを感じさせる、日常のいらだちのことを言う。そして、驚くべきことに我々は、この日常的混乱のほうが重大なライフイベントよりも、健康障害にとって重要な要因であることを見いだしたのである」(『ストレスと情動の心理学――ナラティブ研究の視点から』実務教育出版)。

 

 

 先入観に加えてやっかいだったのは、研究分野同士の縦割りの壁です。
 
 トラウマ研究と、ストレス研究とは、ほぼ交流がなく進んできたために、ストレス研究では当たり前とされるような知見や成果が、トラウマ研究に十分に取り込まれてきたとはいえず、トラウマ研究の研究者は、全てではありませんが、「トラウマティック・ストレスと、一般のストレスは全く別物」と考えてきたようです。

 一般の私たちの常識からすればとても奇妙な捉え方ですが、こうしたこともトラウマが一般の人達の生きづらさの説明として適応されることを阻んできたといえます。

 

 

 その結果、「一部のタイプの「トラウマ」のみが診断学的に、あるいは治療上、特権的な地位を享受しているようにみえる」(立木康介「トラウマと精神分析」『トラウマ研究1 トラウマを生きる』(京都大学学術出版会))と言われるような状態になりました。

 

 京都大学人文科学研究所の立木教授は「PTSDを特権化する一部の言論によってともすれば忘れられたり、その背後に隠れてしまったりする種類の「心的外傷」に、あらためて光を当てることが重要なのだ」としています。その光を当てる対象とは「日常風景といってもよい外傷」や、「家族の言説のなかにタブーとして存在し続け、間接的に、主体に対して持続的な影響をおよぼすような外傷」としています。

 

 今回の著作では、そんな私たちの日常にこそトラウマは存在していて、それが生きづらさの多くの原因となっている、ということを明らかにしています。

 『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』は、日常にあるトラウマによる生きづらさに苦しむ人にケアが届かない状況に対して、なんとか橋渡しができないか、と思い微力ながら書かせていただきました。 

 

 

 

みきいちたろう『発達性トラウマ 「生きづらさ」の正体』(ディスカヴァー携書)

 

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