目の前の人への陰性感情(否定的な感情)もローカルルールによるものだった!?

 

 ローカルルール人格が厄介なのは、目の前の人への陰性感情(否定的な感情)を伴って現れてくるということです。目の前の人とは、家族とか、友人とか、あるいは治療者に対してです。

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 否定的な感情をぶつけられる事自体もとても嫌な体験ですが、それ以上に対処に困る厄介なものです。

 なぜ、陰性感情が厄介かというのは、否定的な感情を浴びせられて傷つけられた側は、皆「あれ?おかしいな」と違和感を感じているのですが、その違和感を言葉にすることがためらわれてしまうからです。

 

 一つは自分自身の中にある自己否定感、自責感のゆえに。
「人からの指摘は受け止めなくては?」とか、「自分が間違っているのでは?」という意識があるためです。
 ローカルルール人格はそれを悪用しています。間違ったリアリティを信じさせて、自分を延命させようとします。

(参考)→「モジュール(人格)単位で悩みをとらえる重要性~ローカルルールは“モジュール(人格)”単位で感染、解離し問題を引き起こす。

 

 

 もう一つには、一つ目とも似ていますが、自分に都合が良すぎないか?というためらいによるためです。
 「それって、ローカルルール人格によるものじゃない」とおかしくなっている相手に指摘をしたいのですが、どうしても、自分に都合が良すぎないか?というためらいから、違和感を口にすることを躊躇してしまうのです。

 

 

 例えば、「あなたの~~が嫌い。もうあなたとは付き合わない」といったことを言われた際に、言われた側はそれを受け止めなくては、と思いながらも、身体感覚(ガットフィーリング)としては「なにか変だ」と違和感を感じます。
(参考)→「頭ではなく、腸で感じ取る。

 

 その違和感から「今のは、本来のあなたじゃないんじゃないの?」と指摘したいところですが、「欠点を指摘された自分が都合の良い言い訳をしているのでは?」「相手をコントロールしたいという気持ちの現われでは?」というためらいを感じてしまい、その場で突っ込めなくなってしまいます。内省的な人、良心的な人ほどそれができなくなる。
 

 また、「相手がこちらのいうことを信じず反論され、泥仕合のような言い合いになったら嫌だ」という気持ちもあるでしょう。

 

 そうした結果、言葉を飲み込んでしまい、ローカルルール人格を延命させてしまうことになります。

 

 

 治療の現場でもこうしたことはあります。

 医師やカウンセラーへの否定的な言葉やクレームを理不尽につけられて、あれ?と思っても、それを「ローカルルール人格のせいですよ」とはその場で言えなかったりします。

 特に、ドロップ(治療を中断)しそうになっている人に対しては「ローカルルール人格の邪魔によるものですね」というのは、何やら都合よく引き止めているように思われて、躊躇してしまうことはしばしばあります。

 

 本当は勇気を持って、ローカルルール人格の邪魔によるものだ、ということは伝える必要があります。それがクライアントさんを護ることにつながるからです。クライアントさんの中にある本来の自分は文句を言いたいわけでも、治療をやめたいわけでもないのですから。
 

 

 

 ローカルルール人格の違和感というのは、経験を積んでくると直感でわかります。ローカルルール人格に接すると何やら違和感を感じたり、怒りが湧いてきたりします。心に聞ける場合は、最後に心に聞いて裏付けを行います。

(参考)→「「心に聞く」を身につける手順とコツ~悩み解決への無意識の活用方法

 

 治療者ではない、普通の方でも、違和感はちゃんと感じています。ただ、上に挙げたような様々な雑念から違和感を否定してしまって、わからなくなっているだけです。

 

 

 

 実は、目の前の人に文句を言いたくなる、ということ自体が常識から考えるとおかしいことなのです。普通の感覚ではありません。自他の別を越えて、相手の存在に因縁をつける、という権利は誰にもありません。

目の前の人に文句を言いたくなる、というのは、最近ニュースになるあおり運転と実は変わりません。全く同じメカニズムによるものです。本来の自分の感情ではないのです。

 ローカルルール人格にスイッチした、あるいは、本来の自分が影響して、因縁をつけている、ということです。

 

 「それ、ローカルルール人格じゃん」と気が付く必要があります。

 

 ローカルルールがなぜ、目の前の人に陰性感情をもたせようとしているか、といえば、それはその人を孤独に陥れて、自分自身を延命させようとしているから。沢山の人と交流されては、ローカルルールが嘘だとバレてしまって効力を失ってしまうからです。
 だから、できるだけ人との関わりは少なくさせたい。とりわけ、治療者は治療するために関わってきますから、より遠ざけたいという力が働きます。

 

 

 人間が人格に分かれている、というのは以前からも指摘されていましたが、あらためて注目する必要があります。ローカルルール人格が様々な問題を生み出しているということも常識になることも必要です。
(従来のように投影とか無意識の働きとか、妄想という解釈では、どうしてもその方自身の問題と感じられて抵抗を生じさせてしまいますが、人格の影響による、ということがわかれば、そうしたこともなくなってきます。本来の自分は問題がなく、むしろ被害を受けて苦しんでいるわけですから)
 

 

 例えば、これまでだったら「境界性パーソナリティ障害」だとされるようなキレてしまう人や、治療が中断してしまう人たちもケアすることができます。
 本来の自分の意に反してとった行動が”人格”によるものだとわかれば、自分が責められることもないですし、その呪縛からも逃れることができるからです。

(参考)→「境界性パーソナリティ障害の原因とチェック、治療、接し方で大切な14のこと

 

 私たちたちは、よくありそうで、もっともだけど、なにかおかしいということに振り回されてきました。陰性感情(否定的な感情)を持つ側も、それをぶつけられる側も、もう真に受けることはやめていくことです。

(治療者やスーパーバイザーなどはなおのこと真に受けてはいけない。真に受けると、クライアントさんがローカルルールの呪縛から抜けられなくなってしまいます。)

 

 

 目の前の家族や職場の人、治療者などへの否定的な感情(陰性感情)が湧いてきたら、「これって、本来の自分の感情ではなく、ローカルルール人格のよるものなんじゃないの?」と検証してみる。

 

 反対に、相手から理由なく否定的な感情(陰性感情)をぶつけられたら「それって、ローカルルール人格によるものなんじゃない?(本来のあなたではないのではないの?)」とツッコミを入れていくことが大切です。

 

 真に受けることでローカルルールは延命されていきますので、ツッコまれたり、違和感を表現すると徐々に力が落ちていきます。

 

 

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 

 

●よろしければ、こちらもご覧ください。

ブリーフセラピー・カウンセリング・センター公式ホームページ

お悩みの原因や解決方法について