他者に仮託して自分の感情を発散しようとする

 

 他人を主語にして何かを語ったり、相手の嫌なところを投影するというのは、主体性がないものの典型です。

 例えば、自分にとって嫌いな親族(父や母、親戚のおじさんなど)と子どもを結びつけて、悪く言ったり、テレビを見ながら、芸能人の悪口を言ったり、こんなものは、すべて主体性のない発言そのものです。

 

 なぜなら、自分を主語にしていないからです。

 「あなたは、~~さんにそっくり」「この芸能人は~」という文から明らかですが、自分は背後に隠して、二人称、三人称で事実を姑息に騙っているだけのものです。

 

 

 人の汚言を聞くこと自体もなかなかしんどいものですが、主体性のない発言というものもお化けのように、他人に取り付いてくるような感覚があります。

 

 主体性がないために、子どもや他者を巻き込んで、自分の不全感を解消しようとしてしまうのです。

  
 そして、発している当人にとっても主体性の無さが継続することで、実はダメージになっている。

 
 本来であれば、すべて一人称で「私は~~が嫌い」「私は~~が好き」といえばいい。

 

 そうしていれば、その発言は自分の中に閉じてあり、そんなに世の中に対して悪く言うことは少ないことにも気がつきくようにもなります。

 さっぱり健康的な営みに変わります。

 他人を主語にしたり、他人を巻き込まなければ完結しない状態にある、というのは、主体性を喪失した状態と言えるのです。

 そして、そのことは子や家族に大きなダメージとなります。
 

 

 

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

機能不全な家庭では、自分も家族も大事にしない≒主体がない

 

 主体を持つというのは、自分自身に対しては自分を大事にすることであり、親であれば子どもを大事にするということです。 

 

 人間は社会的な動物として、社会から得た価値観を自分の文脈に翻訳して判断を行っていく。それが自分の文脈を持つ、ということです。
 自分の文脈を持つ、とは、自分を大事にすることとイコールです。

 反対に主体性がない、ということは、世間体とか他人の価値判断を“直訳”して判断しているということです。

 

 親が自分の文脈を持たなければ、親として機能できないし、機能しなければ、家族を大事にすることもできません。

 機能不全な親の場合は、その大切にするということがいまいち機能していない。

 他人の文脈に依存しているために、別のロジックでが優先になってしまっているのです。

 

 

 大切にしている、といっても、結局親の不全感を満たすため、不安や恐怖を癒やすため、世間体など別の理屈のために子どもを支配しているだけだったりする。

 ほんとうの意味で自分というものを見られていない。
ただ、別の姿を投影してみている。

 「本当の私を見てくれている?」という感じ。

 そのことは子どもには薄々伝わっていますので、その欺瞞や違和感というのは積み重なっていきます。

 

 

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

機能不全で、主体性のない親の価値判断の影響は重い

 

 家族の機能不全で何が問題になるかというと、その大きなものの一つが、親が自分の判断に主体性を持っていない、ということです。

 自分の都合や気まぐれで判断や言う事がブレる。

 昨日白だったものが、今日は黒になる。
 その理由もその都度都合よく作り出して、子どものせいにする。
 

 

 外でなにかトラブルがあると、「あなたにも悪いところがあったんじゃないの?」とか、「相手の気持を考えてないからではないか」といったように、何にも当てはまるような、曖昧な、喧嘩両成敗的な発言しかしない。

(参考)→「「喧嘩両成敗」というローカルルール

 

 真に自分の主体から判断するのではなく、世間を忖度したものや、宗教などの外的な基準といったニセの客観性に基づく判断をする。

 一見もっともに見えて、自分の頭で何も判断していない。
 自分の頭で判断することへのおそれが親の中には強くあります。

 

 親からは自分の考えではなく、不全感からであったり、外側の価値観からしか判断されませんので、目の前にあるものがリンゴでもみかんである、と言われたりする。

 正しいものが、素直に正しいと表明されない環境にある。
 

 

 よく会社とか、学校とか別の組織、グループに例えますが、ルールが恣意的に適用される環境というのは、思いの外ダメージとなります。

 原因と結果の間の時空が歪んで、何でも自分のせいにされるような環境というのは、物理的なものへの信頼感も失わせてしまう。

 なにか魔術的なプロセスで、自分が全て悪いかのようにさせられてしまう。

 自信というのは環境からもたらされますが、そんな環境では、自分が失われて当然といえます。

 

 結果、特に成人してから自分というものがよくわからなくなる。

 ほんとうの意味で、自分主体で判断するということがわからなくなります。

 何が好きなのか?何がしたいのか?がわからなくなり、自分がボーっとして、薄くぼんやりするようになるのです。

 

 

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

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主体が定まらない、発散されない怒り、恨み

 

 

 機能不全家庭に育った方について、これはケースによりますが、自分がないけど、親への恨みや怒りだけがあるような状態になることがあります。

 通常恨みや怒りというのは、自分という主体があって、その主体から感情が発散されますが、機能不全家庭に育った方の場合は、自分という一人称から発せられているものか、といえば怪しく、自分がないために恨みだけが無限に出るような感じになる。

(参考)→「家族の機能不全の影響はとても大きい。

 

 健全な人格が形成されていれば、感情は自分が主体で発揮され、有限に循環します。ある程度発散すれば、形が変化して、最後には昇華されていきます。

 しかし、自分がない状態で発せられる感情というのは、相手主体で終わりがない。

 それもそのはず、相手は変わりませんから、終わりがありません。

 恨みの主体が自分ではなく、親や家族主体になっている。

 

 

 機能不全な親側からすると、「やることはやっているのになんで自分が責められるのかがまったくわからない」となる。

 「この子は、なんでも他責的で人のせいにして、おかしい」となったりする。

 子からすると、機能不全というのは、致命的なダメージをもたらすもので、それによる恨み怒りというのはもっともなものだったりします。

 

 しかし、自分が失われているために、怒りの足場も家族を主語にしか発することができないという歪な状態になります。

 そして、出しても出しても発散されない。

 

 

 「機能不全」などという、言語化しにくい、伝わりにくい問題も手伝って、泥沼のようになっていってしまうのです。

 さらに、自分の問題害解消されると親が喜ぶから、問題が解消されるのが嫌だ、というような、“超”ねじれたような状態も起こりえます。

  主体性が失われて、怒りの足場も親にしか置けない状態になると、人間はこのようなねじれたメンタリティにもなり得るのです。

 

 

 こうなると、治療者なり、他者が介入して丁寧にほぐしていかなければなかなか自然には解消が難しい状況になります。

 

 

 

 親に向かう他責型ではなく、社会に向かう他責、自分に向かう自責タイプもあります。

 社会に向かう他責の場合は、自分の中の理屈でもって、社会を恨み、恐れ、怒りをぶつけます。

 ただ、この場合は、自分の理屈や理想があるために、表面的には自分の考えで動いているように見えて、実際には、その理屈や理想は、親のそれを内面化しているだけだったりする。

 あるいは、本来は親に向けるべき怒りなのに、それを見ないようにしてしまっている。

 親が内向きで、閉鎖的なことの影響も受けて「内(家)を守らされ、外に怒りを向ける」という状態になっている。

 これも主体性のない怒り、恨みということと言えます。

 

 

 最後に、自分に向かう自責タイプというのも、上記のような構造と同様ですが、向かう対象が自分に向かう、「自分は究極的におかしい」だから、こんな理不尽なことも起きた、それは自分のせいだ、このループは絶対に変わらないのだ、という理屈に陥ってしまっている。
 さらにそのループを見ないようにする強迫的な頑張り、努力も加わり、その理屈に沿わない他人に対して怒りをぶつけることもあります。

 
  

 いずれのタイプも主体性が奪われているために、感情を発散し、次に進むという自然なプロセスが失われています。

 そして、いつまで経っても自分が持てず人生が始まらない中で悪い成果ばかりが重なっていくような悪循環に陥ってしまうのです。

 

 

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

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