幸せイメージ、こうあるべき、という幻想のチキンレースは、主婦、会社員、学校でも氾濫しています。
クライアントで主婦をされている方が悩むのは、
「主婦としてこうあるべき」「妻としてこうあるべき」「母としてこうあるべき」という圧力。
「ほかの奥さんたちはテキパキうまくやっているのに」
「私は(子どもは愛情をもって接しないといけないのに)子供にイライラしてしまう」
「私は子育てがうまくできない」
といったことで苦しんでいます。
実はこれも、試験勉強で勉強をしているのにしていると正直に言わない同級生と同じで、ほかの奥さんたちもそれぞれにできておらず、それぞれに不器用なのです。
でも本当のことは誰も教えてくれません。
(お客さんには冷蔵庫の中身は隠すものだし、散らかった部屋はカーテンをするものです。ありのままには見せてくれません。)
最近は芸能人ママ、カリスマ主婦がTVに出たり、本を出したりして、そのファッショナブルなイメージと比べて、自分はうまくできていない、と感じています。
自然体で、肩の凝らないママ像、主婦像も広まってきて、それ自体は良いことなのですが、今度は、自然体ではない自分と理想とを比較して、苦しむ人が出てきます。
実は、芸能人ママも、カリスマ主婦も当然ながら、見せたい部分だけを見せる演出が入っています。彼女らは、そうしたイメージを商品として世に出ているタレント達ですから、どれだけ自然体に見えてもリアルな姿ではありません。
それはフィクションであり幻想なのですが、真面目な人、悩んでいる人ほど真に受けてしまいます。
幻想は家族からももたらされます。
あるクライアントさんは、仕事と家事を両立できない、ということで悩んでいました。
すべてを完璧にしようとしてうまくいかず、ストレスから夫に暴言を吐くようになって、離婚寸前までいっていました。
カウンセラーは、両立なんて無理ですよ、といいますが、どうしてもその忠告は頭に入りません。
母親が完璧な主婦だったからで、そのイメージを忠実に内面化しているため、どうしてもそこから撤退することはできないのです。
「パーフェクトマザー」という極端な幻想は最近はなくなってきましたが、いまでも現代的な形で形を変えて幻想は続き、自分ができていないことは隠し、我慢しあうチキンレースは続いています。
職場でも同様です。
「デキる人」「デキるビジネスマン」という幻想はあります。
これも実はビジネス書であったり、社内の見栄で作られた幻想にすぎません。
人間の能力はそれほど差があるわけではありません。
単に見せ方がうまかったり、装飾されていることも多いのです。
少し前までは、残業してバリバリ働くことが善だったわけですが、最近急速に、それは「ブラック」とされるようになりました。
「時代のせいだ」というかもしれませんが、生物学的には同じ人間ですから、今と昔で何が違うのでしょうか?
今でも過労死するのであれば、昔も同じくしんどかったはずです。
結局、皆無理をしあう苦しいチキンレースをしていただけかもしれません。
かつて、中国の毛沢東の時代に、
「農業は大寨に学べ、工業は大慶に学べ」といって、共産主義社会の成功例をされていた地域がありました。
当時は日本など海外で共産主義を信じる人たちも、成功例として信じていました。
実はのちにわかったことは、それは役人が出世のために作ったヤラセで、本当は宣伝されていたようにはうまくいっていませんでした。
しかし、成功例があると知らされると、疑問を感じていても、自分たちはできていないだけと感じて、無理をして頑張ろうとしてしまいます。
結果、中国では無理な政策によって大飢饉が起きたり、多くの人が餓死したりといったことが起きてしまいました。
宗教の世界でもこうしたことはあります。
モデル、成功例を出して、「あの人はうまくいっている(デキていないあなたたちは足りていない)」として、信者をコントロールしようとします。
でも、実際はそのモデルの信者はただふりをしているだけで、実際はうまくいっていなかった、ということがあります。
オウム真理教でも解脱したとされる幹部たちは、「解脱したふりをするワーク」をしていたそうです。
機能不全家庭では、兄弟がいた場合にある子を「良い子」としてモデルにして、他の子どもをコントロールしようとします。
疑問を持った子供は「素直じゃない(だから愛されないんだ)」といって押さえこまれてしまうのです。
ビジネス本、自己啓発やスピリチュアル本の世界でもこうしたことはあります。
華々しく成功した、~~の方法で一週間で億を稼いだ、~~を引き寄せて幸せになった、といった内容の本があります。
その内実はどうだったか?を伺ったことがあります。
実は本を売るために事実が装飾されていたり、継続できない一時的なものであったり、本当はもうかっていなかったり、カリスマといわれながら社内や家庭内はボロボロだったり、のちに不正などで摘発されたり、疑問を持った読者を追い出したり、などなど
本に書いてあることはまったくの嘘ではないかもしれませんが、ありのままではありません。
セミナーで登壇するカリスマは、演者としてカリスマを演じているのです。
でも、トラウマを負った人、真面目な人は実際のことはわからないまま、真に受けてさせられてしまっています。
成功例のようにうまくいかない自分を責めて、悩んでしまうのです。
(さらに、「成功を引き寄せるためには、素直になりなさい。ポジティブな部分だけを見なさい」といわれていますから、余計に疑問は持ちづらいです。)
これも、一階部分(裏ルール)を知らないまま、二階部分だけで生きることを余儀なくされているからかもしれません。
環境(クラウド)からもたらされる幻想はあちらこちらにあって、解決手段であるはずのものや助けてくれる人の中にも幻想は埋め込まれています。
(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」
●よろしければ、こちらもご覧ください。
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