私たちが、風邪をひいたとき、とても気がめいります。
やる気は下がり、思考を要する事柄について家族から話しかけられると、「あとにしてくれる?」と言いたくなります。
風邪は身体の病気ですが、明らかに気分や意識にも影響が出ています。
これと同様にうつ病も、脳の失調などが原因とされますが、身体が鉛のように重くなり、死にたい気持ちになるなど、経験しないとわからないほどに本当につらい状態になります。
ここで立ち止まって考えると「何か変だな?」と思うことがあります。
なぜ、風邪もうつ病も同様に気分に影響が出るのにもかかわらず、うつ病については「心の病」とされているんだろうか? ということです。
うつ病は、食欲や運動機能など身体にも影響が出ます。うつ病になると、布団が体に張り付いたように動けなくなります。
下手にカウンセリングを受けるよりは、生活習慣の改善、散歩や運動などのエクササイズをしたほうがすっきりすることも多いです。
事実、うつ病の回復期では散歩などは必須ともいえます。
それなら、「うつ病も身体の病気」でよいのではないでしょうか?
もともと、古代ギリシャでヒポクラテスが体液の乱れで陰気な気質になることをメランコリと言っていた症状が今でいう「うつ病」のことではないかと言われています。これもすなわち心の病気ということではありません。
実際に、個人の意識が強調されるようになる近代になるまでは「うつ病」という概念は長く姿を消します。
実は、うつ病をはじめとする心の病、とされているものの多く(ほとんど?)は身体の病であるといえるのです。
この点については、例えば、山下格「精神医学ハンドブック(第7版)」においても、「気分障害や統合失調でも、このような意味で高血圧などと同じ「普通のからだの病気」である。」「あくまで「普通のからだの病気」であることを、医療・福祉関係者はもちろん、患者本人および家族も明記することが望まれる」としています。
私たちは、なにかと「心の病」とする考え方に慣れ、それが好きなようです。
「でも、心の病でも、身体の病でもどちらでもいいんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。
それが、どちらでもよくないのです。なぜなら、解決に向けての取り組みが全く異なってきます。
例えば、うつ病については「身体の病」としたほうが、実際にその病にかかる患者やご家族にとっても、どれほど気が楽でしょうか?精神科に行く際の引け目や抵抗感を考えれば、「身体の病」とされることの気楽さはお分かりではないかと思います。
「身体の病で、症状だから仕方がない」と思えますし、薬を飲むことにも、休養することに抵抗もありません。
さらに、内因の病ですから、その方の責任でもありません。ただ、生活習慣病という側面がありますから、生き方は変えないといけなくなります。生活習慣を変えることについても、「心の病」とされればアイデンティティにもかかわりなかなか受け入れがたいですが、身体の病であれば、その理屈は納得ができます。
逆に、「心の病」とされることでどれほど患者が自分を責め、それが果てに自殺につながっているでしょうか?
うつ病に限らず、他の心の悩みでも「心の問題」ではないということは当てはまります。そうとらえると、実はもっと早く、もっと楽になれるように思えます。悩みはその方の責任では全くありません。
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