このような混乱は何からきているかといえば、一つにはアメリカの精神医学会の診断マニュアル(DSMと呼ばれます)が1980年代に日本に入ってきたことや、また、精神病理学が衰退し、病気のメカニズムや生育歴などの背景ではなく、表面的な症状だけで診断するようなことが広まってしまったことに起因します。
表面的な症状が「うつ」であれば、何でもかんでも「うつ病」と診断されるために、わけがわからなくなり、「新型うつ」だとカテゴリを持ち出さないことには収まりがつかなくなってきているようなのです。
さらにもう一つには、近年、製薬会社が「うつ病は心の風邪」といってキャンペーンを張り、従来よりも副作用の少ないSSRIなどの抗うつ剤の使用を宣伝したことがあります。
従来は、抗うつ剤も副作用が強く、慎重に投与していたものが、「風邪薬のように」気軽に処方されるようになったことが背景にあります。
薬を処方するためには根拠として診断名が必要になりますから「うつ病」ということが簡単につくようになりました。
こうして「うつ病は本来どのような病気か?」専門家でさえも訳が分からなくなってしまう状況になってしまったようなのです。
問題意識を持った医師などが、「本来のうつ病の概念に立ち返るように(「内因性のうつ」のみをうつ病とするように)」訴えています。
私たちもこうしたことをある程度知って自衛しておかなければ、自分や家族が「うつ状態」になったときに回復が遅くなってしまいかねません。
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