自他の区別がつかない。

 

 人間は、発達の過程で、自己イメージや他者イメージが徐々に適正なものへと変化し、自他の区別が明確になっていきます。

 

 赤ちゃんの頃は、自分は何でもできる。親は神様のような存在ですが、そうしたことは修正されて行きます。他人と自分とは違うものだ、ということがわかるようになってきます。

 

 思春期に入り、心の中で「親を殺す(価値観から離れる)」、反抗期を経ることで、自他の区別は明確になっていきます。

この過程を健全に達成している人は、実は思っている以上に少ないのです。

 

 そして、何らかの形で、自己イメージや、他者イメージにゆがみが生じます。
どこか誇大化して、尊大であったり、自分のルールを押し付けたりします。

 

 自他の区別というのが、あまりつかなくなっている人が多いのです。

 

 自他のイメージがつかないとどうなるかと言えば、自分の物差しで相手を判断したり、相手の物差しで自分を下に置いてしまったり。
さらに言えば、力関係で相手から支配されることもあります。

ちょっとしたことで傷ついたり、人に執着したりするようになります。

 

 さらに言えば、自他の区別がつかないということは、相手と距離が近いので、お互いの思考がぶつかりあって、脳がショート(てんかんやヒステリーのような症状)しやすくなります。

 

 「自他の区別」は、いわゆる悩みというものの根本原因の一つではないかと最近、気づくようになりました。

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

 

 

悩みは、心理の外にある。

 

 現代の人間観というのは、基本的に、理性のある個人が自分で考えて行動する、というようにできています。

 

 そのため、悩みもその個人の責任、その人が選んだもの、努力で変えていくもの、という考えでできています。


 この考え方は脳科学など、最近の知見とは相いれないことがわかっています。
そして、実は、この考え方はいろいろと危険なものでもあります。結局、自分のものではないものまで、自分の責任とさせられて、挙句の果てには、カウンセラーからも、「あなたのせいだ」と責められ、傷つく要因にもなっています。


 悩みというのは、基本的には、自分の「心」の外側からもたらされます。

外的環境と、内的環境からです。

 外的環境とは、社会、会社、学校、家族などから
 内的環境とは、ホルモンや、遺伝子、体内細菌、影響物質、脳内伝達物質などから

 

 たとえば、最近どんどんと明らかになってきていますが、育児でお母さんがイライラするのは、昔はお母さんのお母さん業の未熟さや人格のせいとさせられたり、本人もそう思っていたかもしれませんが、誰にでも起きるホルモンの変化のせいだ、ということがわかっています。

 そのイライラは、心の問題でしょうか?

 

 なんでも心の問題に還元することを「心理主義」といいます。カウンセラーをしていて思うのは、「心理」が問題であることは、実は思っている以上に少ない。少ないというよりも、ほとんどないのではないかと思います。

 

 〝心理”カウンセラーと言いながら、問題のすべて(とあえて言い切りますが)は、心理にはなく、「心」の外側にあります。

 

 では、カウンセラーは何をしているのか?

認知行動療法と言って認知を扱う療法もあって、効果が出ているじゃないか?
といわれるかもしれませんが、実は、リフレーミング(枠組み転換)や、外部化、というメカニズムで説明されているように、「悩みは自分のせいではないんだな」と気づくお手伝いをしています。

 

 事実、悩みが解消されるときには、悩みの意味づけが変わり(そうか、これは自分にとって役に立つものなんだ!)、悩みは心の外側に追いやられて行きます(気にならなくなりました!)。

 悩みは、心理の外にある。

では、心理とは何か? といえば、せいぜいタッチパネルくらいの役割と言えます。

 

 

●昔から、悩みは心の外にあるものでした。

 

 実は、精神医学では、昔から心の病は「心理」の外にあるとしてきました。

 

例えば、心の悩みの原因として、以下の3つの分類があります。

「心因」:心が原因であるもの(ストレスや考え方など)

「外因」:その疾患以外に原因があるもの(脳の損傷や、他の臓器の影響など)

「内因」:その疾患そのものに原因があるもの心の病の王様である統合失調症やうつ病、双極性障害 はどこに分類されるかと言えば、「内因」になります。※ストレスが原因であれば、うつ状態ではありますがうつ病ではありません。

 

 つまり、心の病は、本来「心理」が原因ではないものとされてきたのです。

 

 「心理」の外にあって、了解できないままに症状が発症して薬の力を借りながら治すもの、なのです。心因でさえ、原因とされるのはストレス(外からくるもの)ですし、さらに、考え方も、実は、外的要因を内面化した束であることがわかってきていますから、心理のテリトリーは、どこにもないことがわかります。

 

「あなたの悩みの原因は、すべてあなたが選んだものだ」

 

なんて言っていたら、大笑いされてしまいます。

 悩みは選んだのではなくて、心の中にもなく、外側から否応なく、影響されてしまうもの、なのです。

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

 

 

 

これは私のものではない

 

 例えば、
ブログの記事を書こうとすると、
妙に頭が重く、もやがかかったようになります。

 

 「支配者」という概念から説明すれば、支配者の邪魔が入っているといえますし、

 

 「遺伝子」から説明すれば、何かマイナスに働く遺伝子が影響しているということになります。

 

 

 ためしに、いくつかの言葉を唱えてみます。

 

 すると、最初は、上手く反応しないのですが、
 しばらくすると、頭が重いのがなくなってくるのがわかります。

 

 皆さんも、上手くやる気が起きないことってないでしょうか?

 その時は、ご自分のせいではなく、外からの邪魔でそうなっていることが多いのです。

 ご自分を責めたり、やる気を高めるような努力をすると、余計にその罠にはまってしまうことになります。

 

 もしそうなったら、

「これは私のものではない」

 と何度か唱えます。

 

 すると、ササッと、重さが取れていきます。

 

 

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ニセ成熟は「感情」が苦手

 

 ニセ成熟の状態の人は、「感情」というものをとても嫌います。

 

 感情的な人は苦手です。「あんな自分勝手に感情を表に出すような人には絶対になりたくない」と思っています。

 軽蔑して、嫌悪しています。

 

 しかし、感情を強く怖れてもいます。肝が冷えるというのは、このことか、と思うくらいに恐怖を感じます。

 

 

 感情的に迫られると、頭が解離(ボーっとして)してしまって、対処することができません。

 そして、状況が去ってから、怒りがわいてきたり、恐れから相手を頭の中でコテンパンにこき下ろしてしまいます。

 

 あんな人になりたくない、が原動力ですから、自分の感情も殺そうとします。

 人へのネガティブな意識はなくそうと研さんに励みます。でもうまくいきません。自然な感情なのですから、当然と言えば当然です。

 

 あんな人になりたくない、というモデルは多くの場合親です。理不尽な父、感情的な母になりたくない、と思います。

 

 

ただ、感情を嫌悪して、殺した結果どうなるか?

我を出す人、感情を出す人にやられっぱなしになります。

場合によっては、モラハラをされて、とことん評価を下げられてしまいます。

 

 

 実は、感情というのは、自我(エゴ)を成立させる武器でもあるからです。そのため、ニセ成熟の人は、エゴが十分に育ってしないことがあります。自分が何をしたいのかがわかりません。

 感情というのは、さながら、免疫(警察や軍隊)のような存在です。

 

 

 感情は3つの大きな働きをします。一つは、記憶の処理。経験した出来事を意味づけして、処理していくこと。

二つ目は、環境からのストレスを中和すること。

三つ目は、相手とのチューニング(信頼関係を結ぶ)をすること。

 

 

 感情が十分に社会化して扱いやすくなっていることで、扁桃体がストレスフルな記憶でも処理をしてくれるようになります。しかし、感情を殺していると、それがうまく働かなくて、人よりもトラウマを受けやすくなります。

 

 具体的には、嫌な出来事がいつまでも頭に残り続けて、一人反省会(もっと、~~しておけばよかった。私のバカ!)、一人復讐(あんな失礼なことを言ってきて、あの人は頭がおかしいに違いない、あんな人を世の中にのさばらせてはいけない!)、一人予行演習(次に失礼なことを言われたら~~しよう)を繰り返します。

 

 急に嫌な記憶がよみがえってきて、「いや~!」といてもたってもいられなくなります。

 

 感情が正しく使えていると、嫌な出来事など環境からのストレスを感じても、その感情や嫌な感じを正しく感じて、意味づけし、中和して処理することができます。そのため、ストレスにも強く、自分から距離を離して守ることができます。

 

 感情が正しく使えていると、特に感情的な相手ともチューニング(信頼関係)が取れるようになります。

 

 感情的な相手には、こちらも意識-無意識的に感情的に関わる必要があります。感情的な相手に冷静に対応すると、相手は「自分が尊重されていない」「バカにされている」と思って、余計に感情的になります。

 

 自分は相手とは適切な距離を取りつつも、感情を発揮して、相手の感情を受け止めて中和することで「分かってもらえている」と感じさせることができます。

 

 

 以上は、理屈ですが、しかし、ニセ成熟の人たちは、多くはトラウマを負っているために、感情的なものに触れると、恐れがわいてきて、解離してしまうのです。頭で分かっていても、対処できなくなってしまいます。

 

 そして、能面のようになり、頭では「冷静に対応している」つもりですが、相手からは馬鹿にされていると思われて、さらに攻撃されやり込められてしまいます。

 

 通常の発達(成熟)ルートであれば、感情について理解し、学ぶための機会を経験しています。

 

 

 例えば、学校での友達付き合い、部活での上限関係など。

(この「学校」というのも曲者で、かなり問題が多いものです。詳しくは「いじめとは何か?大人、会社、学校など、いじめの本当の原因」をどうぞ)

 

 ただ、それらをうまく経験できずに、いじめ、夫婦喧嘩の目撃など間違った人間関係の波にもまれてしまうと、それをクリアできず、仕方なく迂回ルートとして感情を嫌悪するニセ成熟を取らざるを得ないのです。

 

 

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