カウンセリングやセラピーにおいては、しばしば関係を切って孤独にあるときに変化が起きる、とする考えが唱えられてきました。
家族療法という手法も存在するように、関係は人間を拘束し、支配する。そこから自由にならないといけない。
そのためには、呪縛にきずき、そこから解き放たれ、本当は立派な人間であることに気が付かないといけない。
そのような考えはよく耳にします。
確かに魅力的な考えで、説得力もあります。ただし、実際に実践してみると苦しくなってくる。すぐに限界がやってきてしまうのです。結局は、もともとそれができる人にとっての「強者の論理」であることがわかってきます。
一方、関係が人を癒す、という考えもあります。人の中でこそ人は癒されていく、という考えです。
いずれが正しいのか、理屈で論じてみても神学論争になってしまいがちです。
最近は、スマートウォッチ、活動量計と呼ばれるものを用いて、簡単に心身の状況を自分でモニタすることができる便利な時代になっています。歩いた歩数や睡眠の状況はもちろんですが、最新のものでは、脈拍数、血圧などもわかります。自分がリラックスしている状況か、そうではないかも確認することができます。
あるクライアントさんが、活動量計を購入し、身につけていました。そして、面白いことを発見したと報告してくださいました。
その方も、対人関係などで大変な悩みを抱えていらっしゃいます。他人といるといろいろな気を使ってしまいますから、一人でいるほうが楽だと思っていました。
しかし、その方が活動量計をつけて状態をモニタすると意外な結果が出ました。
それは、連休などで一人でいるときは血圧や脈拍も高く緊張している。逆に、人と一緒にいるときのほうがリラックスしている、というものでした。
本人も想像していたこととは逆の結果が出たのです。
やはり、一人の時よりも、他人といたほうが実は人はリラックスをしている。でも、本人は逆に感じていたりもするのです。
もちろん大規模な量的調査ではありません。ただ、数値で確認できたことは大きな気づきをもたらせてくれました。
解釈できることとしてはおそらく、
一人でいるときはたしかに気を遣わずに気楽ですが、自分を悩ませてきた親や過去とつながってしまって、ストレス応答系のシステムは乱れる。そのために交感神経が優位になる。
一方、気楽な他人といると、気は使うかもしれないけれども、でも、利害関係のない人たちとつながって、同調することで、ストレス応答系は整う。副交感神経が優位になる。結果、脈拍、血圧などは落ち着く。
統合失調症などでも、一人でいるよりは、社会の中で役割を持ったほうが回復は早いことが知られています。依存症では自助グループの活動が知られています。
前回の記事でも書きましたが、心理療法など大げさなものではなくても、町で出会った気楽な人たちとの触れ合いが、とても大きな安心感をもたらせてくれる経験を私たちはします。
これらのことは、人との一体感を回復して生きづらさから抜け出す方法を知るためには何が必要なのか?
私たちに多くの示唆を与えてくれます。
(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服」
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