ニセ成熟の状態の人は、「感情」というものをとても嫌います。
感情的な人は苦手です。「あんな自分勝手に感情を表に出すような人には絶対になりたくない」と思っています。
軽蔑して、嫌悪しています。
しかし、感情を強く怖れてもいます。肝が冷えるというのは、このことか、と思うくらいに恐怖を感じます。
感情的に迫られると、頭が解離(ボーっとして)してしまって、対処することができません。
そして、状況が去ってから、怒りがわいてきたり、恐れから相手を頭の中でコテンパンにこき下ろしてしまいます。
あんな人になりたくない、が原動力ですから、自分の感情も殺そうとします。
人へのネガティブな意識はなくそうと研さんに励みます。でもうまくいきません。自然な感情なのですから、当然と言えば当然です。
あんな人になりたくない、というモデルは多くの場合親です。理不尽な父、感情的な母になりたくない、と思います。
ただ、感情を嫌悪して、殺した結果どうなるか?
我を出す人、感情を出す人にやられっぱなしになります。
場合によっては、モラハラをされて、とことん評価を下げられてしまいます。
実は、感情というのは、自我(エゴ)を成立させる武器でもあるからです。そのため、ニセ成熟の人は、エゴが十分に育ってしないことがあります。自分が何をしたいのかがわかりません。
感情というのは、さながら、免疫(警察や軍隊)のような存在です。
感情は3つの大きな働きをします。一つは、記憶の処理。経験した出来事を意味づけして、処理していくこと。
二つ目は、環境からのストレスを中和すること。
三つ目は、相手とのチューニング(信頼関係を結ぶ)をすること。
感情が十分に社会化して扱いやすくなっていることで、扁桃体がストレスフルな記憶でも処理をしてくれるようになります。しかし、感情を殺していると、それがうまく働かなくて、人よりもトラウマを受けやすくなります。
具体的には、嫌な出来事がいつまでも頭に残り続けて、一人反省会(もっと、~~しておけばよかった。私のバカ!)、一人復讐(あんな失礼なことを言ってきて、あの人は頭がおかしいに違いない、あんな人を世の中にのさばらせてはいけない!)、一人予行演習(次に失礼なことを言われたら~~しよう)を繰り返します。
急に嫌な記憶がよみがえってきて、「いや~!」といてもたってもいられなくなります。
感情が正しく使えていると、嫌な出来事など環境からのストレスを感じても、その感情や嫌な感じを正しく感じて、意味づけし、中和して処理することができます。そのため、ストレスにも強く、自分から距離を離して守ることができます。
感情が正しく使えていると、特に感情的な相手ともチューニング(信頼関係)が取れるようになります。
感情的な相手には、こちらも意識-無意識的に感情的に関わる必要があります。感情的な相手に冷静に対応すると、相手は「自分が尊重されていない」「バカにされている」と思って、余計に感情的になります。
自分は相手とは適切な距離を取りつつも、感情を発揮して、相手の感情を受け止めて中和することで「分かってもらえている」と感じさせることができます。
以上は、理屈ですが、しかし、ニセ成熟の人たちは、多くはトラウマを負っているために、感情的なものに触れると、恐れがわいてきて、解離してしまうのです。頭で分かっていても、対処できなくなってしまいます。
そして、能面のようになり、頭では「冷静に対応している」つもりですが、相手からは馬鹿にされていると思われて、さらに攻撃されやり込められてしまいます。
通常の発達(成熟)ルートであれば、感情について理解し、学ぶための機会を経験しています。
例えば、学校での友達付き合い、部活での上限関係など。
(この「学校」というのも曲者で、かなり問題が多いものです。詳しくは「いじめとは何か?大人、会社、学校など、いじめの本当の原因」をどうぞ)
ただ、それらをうまく経験できずに、いじめ、夫婦喧嘩の目撃など間違った人間関係の波にもまれてしまうと、それをクリアできず、仕方なく迂回ルートとして感情を嫌悪するニセ成熟を取らざるを得ないのです。
●よろしければ、こちらもご覧ください。
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