ストレス応答のリズムが一体感と平和を生む

 

 

 クレーム処理の現場では、まず第一声は、相手のテンションに合わせる必要があるそうです。

 

 怒っている相手に冷静に「どうされましたか?」と返すと、怒りでテンションが上がっている相手からするとバカにされたように感じてしまう。

 「どうされましたか!!」と少し口調のテンポを上げて対応すると、相手はわかってくれた、共感されたと感じます。実は「冷静な態度で対応しようとすること」が多くの問題を生んでいることがあります。

 

 職場で、感情的な上司がいたりします。今でいえばモラハラやパワハラということに抵触しそうな存在ですが、そうした人に対して、冷静な態度で接すると相手は、話を聞いていない、態度が悪い、と反感を持たれてしまいます。
 クレーム処理と同様に、相手のテンポに合わせる必要があります。

 

 

 筆者も、職場でそうした経験があります。おそらく心理臨床でいえば、強迫性パーソナリティ障害(発達障害傾向)に該当するような先輩がいて、その人が自分の基準で行動して、周りを振り回していました。

 

 そうした人への反発や恐怖もあって、冷静に対応しようとしていましたが、まったくうまくいきませんでした。

 

 筆者は、冷静に対応して、相手にしないようにしてスルーしようとしたのです。
自分の心の中ではアナグマのようにこもってストレスから身を守ろうとしていました。

 

 これが相手からするとバカにされたと感じられ、かえってエスカレートして、悪いうわさを流されたり、大変なことになったことがあります。

 人当たりの良い人は、その辺が上手です。

 相手のテンションにうまく合わしてテンションを上げて、ストレスはキャンセルして、流していきます。

 

 

 「相手に合わせると、なんだか自分が汚染されるような、巻き込まれるみたいで嫌なんです」とおっしゃるクライアントさんも多いです。

 

 しかし、体内の免疫や、国に例えれば国境警備隊(軍隊)や警察などもそうですが、ストレスがあった場合に、それを処理する方法はその場を離れるか、その場にいるなら中和(キャンセル)しかありません。

 外部からのストレスと同じ力まで内部のテンションを上げて、ストレスをキャンセリングするのです。そうすると、相手との境目でキャンセルされて、中身は平静でいられます。

 

 逆に相手とテンポを合わせないと、かえって、やられっぱなしになってしまう。テンポを合わせるからこそ、相手のストレスをキャンセルできる。

 

 

 これが、安定型の人であれば、身体のストレス処理系が自動的に行ってくれます。

 実はキャンセリングは、された側も心地が良いもので、一体感を感じます。ちょうどダンスを踊っているようなリズムを互いに刻みあうのです。

 

 さながら、ボクサーや格闘家が試合中に恍惚や一体感を感じるみたいに。どれだけ強いストレスであっても拮抗している間は一体感として感じられるのです。

 

 ただ、ストレスホルモンのリズムが遅れて、ガードが遅れると、パンチを食らって、恐怖で心臓がバクバクして、「もう二度と人と接したくない」とも感じてしまいます。紙一重です。

 

 「ビビる」とは何かといえば、それは性格の問題でも、意志の弱さでもありません。ストレス処理系のリズムが悪い、反応が遅い、ただそれだけです。反応が遅れると、外部からのストレスが勝って、まともにパンチを食らってしまうのです。相手に勝つ必要はありません。ただ、相手と同じリズムを刻めばいいのです。そうすれば、嫌な相手にもビビることなく、逆に一体感を感じることができます。
(昔の人たちが、「胆力」といったことはまさにこうしたことです。)

 

 通常、愛着が安定していて、ストレス応答系のリズムのハーモニーが整っていれば、紙一重の難しい機能も自動的に行ってくれますから、人とも一体感を感じられて、生きづらさを跳ね返し、平和でいられます。


 この自律神経のストレス応答のリズムの中にトラウマを負った人たちが生きづらさから本当に抜け出すヒントが隠されています。

 
(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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