子を愛せない親の”意外な理由”

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 前回の記事でも書きましたが、ご両親に愛情をもって接してきてもらえなかった、そして、現在も苦しんでいる、という方はとても多いです。

「いや、親子の対立をあおるようなことはすべきではない。」
「親はやっぱり子を愛している。そうではないのは余裕がなかったからだ」

といった価値観を持つ支援者もいます。

 


 家族研究や、最近の臨床の知見からすれば、それは正しいとらえ方とは言えません。家族は自然と成立するものではなく、社会的機能であり、条件が欠けて機能が満たされないことのほうが多いですし、他の生物でも育児放棄がみられることから、人間の家族も理想通りにはいかなくて当たり前だ、という前提に立つべきなのです。

 

 臨床をしていて感じるのは、残念ながら、いろいろな理由から、親とは言え愛情を持てない人たちは確実にいらっしゃる、ということです。そうした環境の渦中にいる方が知っていただきたいのは、大きく2つです。

 

まず一つには、
 「愛されないのは自分のせいではない」

ということです。


 ご両親がいくら、「あんたは憎たらしい」とか、「かわいげがない(だから私は愛さないのだ)」と言っていたとしてもです。それは、相手を攻撃するための言葉です。攻撃することが目的だから傷つくのであって、発言内容は真実ではありません。そして、その言葉は下記に記す問題からくることも多いのです。

 

 その問題とは、障害・疾病の可能性です。

 

 愛情を持てない方の中には、今でいう発達障害(≒愛着障害、パーソナリティ障害、トラウマ)を持つ人が多くいらっしゃる、ということです

→「大人の発達障害の本当の原因と特徴~様々な悩みの背景となるもの

→「「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと

→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 アスペルガー障害が正式に取り上げられたのは、1980年代でごく最近のことです。 乳幼児健診でスクリーニングされるようになるのも昭和40年以降のことです。
(乳幼児健診では、軽度の発達障害は見逃されることも多いです)

年配のご両親だと、そのスクリーニングがないまま、現在に至っていると考えられます。

 

 ご両親が発達障害であることに気が付かないまま、ご両親と言い合いになったり、愛情を求めて通じずに傷つく。デリカシーの無い言動を繰り返されて、ボロボロになる、といったことがあります。

 

 現在は発達障害の知見も積みあがってきているため、あらためて医師やカウンセラーが見ると、発達障害の疑いが濃厚であるというケースは多いのです。

 


 あと、別のケースでは、ある女性のクライアントが父親からずーっと虐待(暴力)を受けていて、そのことを問いただしても父親はそのことを全く覚えていない、ということがありました。そのケースでは、クライアントの主治医曰く、「お父様はてんかんかもしれないね」ということもあります。
※てんかんと発達障害とは併発することも多いです。

 

 また、別のケースでは、これも女性ですが、年配の親の暴言、汚言が止まらず、いつも些細なことでいざこざになって悩んでいた、ということがありました。病院で、検査をしてみたら、認知症によって前頭葉の機能が低下していた、といったことがありました。

 

 さらに別のケースでは、実は、チック(トゥレット症候群)であったということもあります。

 

 こうしたことも知らぬままに、同じ土俵で向き合っても何も生み出さず、疲弊するだけ、となってしまいます。しかし、実は発達障害やその他の疾病が関連していたんだ、と知ったとたんに、「スーッと楽になった」「親に執着しなくなった」「あまり関わらなくなった」というクライアントさんはとても多いです。

 

 こうしたことは、まだあまり知られていません。その理由の一つは、臨床心理、心理療法の過度な”心理偏重”があります。「悩みは、心の外にある」という前提に立てば、見えなかったことがいろいろと見えてきます。

 

 親との関係に悩んでいらっしゃる場合は、いきなり親子関係の問題としてとらえずに少し立ち止まって上記の可能性を考えてみてください。”適切な反抗”によって、自他の区別を確立することにも役に立ちます。

 

 そして繰り返しになりますが、お悩みの方ご自身は何も悪くありません。自分に問題があるから愛情が得られない、といったことはありませんから、ぜひご安心いただければと思います。

 

 ※発達障害だから必然的に愛情を持てないわけではありません。発達障害とは、とても広範な症状です。とても愛情深い方、その人なりにとても周りに気を遣う方、定型発達では考えられないくらいの人格者もいらっしゃいます。俗に言われるような発達障害=人の気持ちがわからない、ということではないこともぜひお知りいただければ幸いです。

 

 

 

●よろしければ、こちらもご覧ください。

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