「自他の区別」をつける、タイミングはいろいろありますが、最も大きなタイミングは「反抗期」です。
反抗期の効用は、親の価値観から離れる(「(心の中で)親を殺す」と言われる)こと、そしてそれまでの一元的な視点から、多元的な視点を身に着けることです。
トラウマを負った人の多くは、反抗期が無かったり、あるにはあったけど中途半端だったりします。
トラウマを負うと、「ニセ成熟」となり、精神的には妙にマセてしまったり、感情を回避したりということが起きています。
普通であれば、大人と戦って、乗り越えていく、ということですが、それをせずに、最初から頭の中で成熟してしまっていて、反抗期を回避してしまうことがあります。
すると、本人の中では「反抗期はあった(と思う)」となっていますが、本当の意味での反抗期とはなっておらず、親の価値観から離れているようで離れていない、「自他の区別」が付けられない、ということが起きてしまいます。
本人が反抗期と思っていたことは、親の価値観を早期に内面化して、頭の中で親を超えてしまっているだけだ、ということです。
さらに、家族が機能不全を起こしていれば、なお、それは強くなります。父親や母親は親としての機能を果たすことができずに、子どもから「見下され」たりします。
そうすると、反抗して乗り越える、というよりは、見下されて、「自分のほうがちゃんとしている」として、内実は、単に親の価値観を再編成しただけの中途半端な“反抗”になってしまうのです。
トラウマを負っているために、妙な理想主義となり、一元的なままになって、自分の価値観に合う者とはいいですが、合わない者とは折り合えない。
何か真実を知っていそうな雰囲気の人に支配されてしまったり、妙にした手に出てしまったり、不安になってしまったりするようになります。
成人になり、悩みを持つ方には、つらい養育環境で育った方も多いですが、 辛さの根底には、「親の価値観を相対化できない」ことがあります。それによって、自他の区別がつけれず、多元的にスイッチできない。
多元的とは、「自分は自分のままでいい」と思えることでもあります。親の価値観と離れないままだと、それが上手くいかないことが多いのです。
そうした方に、親と仲が悪いのだから「親との和解(親を肯定的に評価しましょう)」を提案するカウンセリングもありますが、このように考えるとおかしなことだということがわかります。
むしろ、反抗期を中途半端にし続けて、傷がぐずぐず膿み続けるような状態を続けることにもなりかねません。いったん、そうしたことには決着をつける、ということは大切なことなのです。
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