本当の”休養”とはなにか?~うつ病など心身の失調における休養の取り方

 

 今年は10連休という大型連休がありました。
 休みを楽しむ人がいる一方で、かなりの割合の人は「休みが憂鬱」というアンケートもあり、大変興味深いことだなと思いました。

 

 実は、「休む」ということはけっこうむずかしい。
 本当の休み方を知っている、という人は少ないのかもしれません。

 筆者も、昔学生時代に、長期で旅行していたことがありますが、
 本当であれば楽しいはずの旅行なのに、だんだんと、旅行が仕事のようになって来たりして、「旅行っていったい何だろう?」と思ったことがあります。

 以前、TV番組で、放送作家の小山薫堂さんが、長期の休暇を取るという場面がありましたが、「休みが義務みたい」「休みが早く終わってくれないか」とおっしゃっていました。

 

 「休暇」とか「休養」というのは思っているよりも奥が深い。

 

 

 ベッドやソファで寝ていても、なんかおちつかなくなったり、
 「リラックス」といってもどうしていいかわからなくなったり、
 「休みなさい」といわれると持て余したりしてしまいます。

 休日も、何か焦りみたいなものを感じて、しばらくしたらもう午後だ、夕方だ、となってしまう。

 休むということはなかなか大変な作業です。

 

 

 うつ病など心身の失調の場合の「休む」「休養」ということも実はかなり難しい。

 私たちは「休む」というと、布団・ベッドでただ寝ていることだ、とイメージします。
 
 病気の重さに比例して、その時間が長くなるものだとして、うつ病だと何か月も寝ていないといけない、と考えてしまう。

 

 これは実は本当の「休養」ではありません。

 

 実際に臨床の現場では、長く床に臥せていることで逆に症状が回復しにくくなったり、社会に復帰することができなくなってしまうことが知られています。
 

 

 例えば、重いうつ病であっても、半年、一年とずっと寝ていたりするものではない。
 お薬の力、医師も借りながらしっかりと睡眠をとり、栄養を補給して、体がある程度回復してきたら、ウォーキングするなどして運動などに取り組んでいく。

(参考)→「「安心安全」は、身体の安定から始まる

 そして、2、3か月もしたら、復帰のプログラムで職場に戻っていく。
 もちろん、様子を見てもう少し休養が必要なら、1か月単位で伸ばしていきます。
  

 軽度から中度のうつ病であれば、基本休職はしない。
 仕事は続けながら、睡眠や栄養を整えて、ストレスから体を回復させていきます。 
 

 「2,3か月とは、かなり早いな」と感じるかと思いますが、専門の医師に言わせるとこのほうが良いそうです。
 早く仕事に復帰すべき、といったスパルタ的な価値観からくるものではなく、
 身体にとってはそれが一番よいからそうなっています。
 (参考:井原裕「うつの8割に薬は無意味」など)

 

 人間は、ブランクが短いほど戻るときの抵抗感も少なくなります。
 長いと、誰でも社会や仕事が怖く感じたりするようになります。
 クラウド的な存在である人間にとっては、社会から切り離されると調子はむしろ悪くなる。つながっているほうがよい。

 家がそのままで休養の場、回復の場だと考えるのは幻想だといえます。

(参考)→「家では「安心安全」は得られない。~家も機能が限定された場所の一つである。

 

 

 実際に、うつなどの精神障害、あるいは社会的ひきこもりで長く家にいる方は、家にいて安らぎを感じているわけではなく、強い焦りや居心地の悪さを抱えていたりします。
 家にいることで回復しているわけではありません。休養の取り方を誤ってしまい、足場を失い、かえって社会に戻るきっかけを失ったり、社会への恐怖が増したりといったことが起きています。
 機能不全な家庭であれば、時間を費やしても機能は自然には回復しません。巻き込まれてさらに足場を失い、自分も抜け出せなくなってしまいます。

 身体の回復のためには、寝ているだけではだめで、意図的に睡眠や食事をコントロールしてしっかり取り、有酸素運動を行って、身体のストレス応答系を戻していく必要があります。
 (その間、社会とのつながりは切らさず、タイミングを見て社会に戻っていく) 
  ※機能不全家庭で足場を失っている場合は、社会的な支援を求める必要があります。

 

 心身の失調における「休養」とはそうした行為になります。
 寝ているだけ、家にいるだけ、時間を過ごしているだけでは良くはなっていきません。
 

 このように本来、「休養」とは受動的な行為ではなく、能動的な行為です。

 

 

 

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