真の客観とは何か?

 先日も書きましたが、
 トラウマを負っている人は、過剰な客観性、を持っていることがあります。

(参考)「過剰な客観性」

 

 他人の意見はすべて客観的事実だとして真に受けて、どこまでも、自分を反省して、どこまでも自分を改善していかなければならない、とする姿勢です。

 しかし、やればやるほど、自分の改善すべきポイントは増えていき、決してなくなることはありません。

 改善するために自分の足場の土も掘り崩していくため、知らない間に、自分の自信は失われていき、最後にはエネルギー切れを起こして、調子を崩してしまうようになります。

 

 
 当人にしてみたら、
 「そんなことを言うけど、自分の主観と客観(人の意見)とを比べた時に、自分の主観を採用したら独りよがりになってしまう。独りぼっちになってしまう。できるかぎり、人の意見を採用して、自分を客観的により良くすることしかないじゃないか」
 と感じてしまいます。

 

 この考えには、生育歴の中で内面化された刷り込み(ニセの公的領域)があります。

 それは、「他人の意見を客観だ」としていること。
 

 

これが、その当人を苦しめている。

  これはどこからくるか、といえば、例えば、親や周囲の人たちが自分のエゴ、支配欲のために、自分の私的情動を「正しい客観だ」として強弁してきたことについてまじめさから真に受けさせられてきたことから。

 

 機能不全な親というのはとても多いのですが、その親の気まぐれや、わがままにすぎないものが、「あなたのためだ」など理由をつけられてで、正当化されている場合がある。

 

 「これはしつけだ、教育だ」「私の言うことは正しい、だから従いなさい(≒あなたはダメだ)」といったような形で内面化を強いられる。

 

 これは、ある種のハラスメント(ニセの公的領域)にすぎないのですが、ハラスメントにすぎないがゆえに、自分の考えを「客観的である」強く主張しなくてはならず、さらにそれを維持するために、「あなたはおかしい(You are NOT OK)」ということが強調される必要が発生する。

 (参考)→「ニセの公的領域は敵(You are NOT OK)を必要とする。

 

 そうして、「他人の意見が客観である」と、すり替えられてしまうのです。

 

 

 これはホンモノの客観ではありません。

 人間の社会は、あらかじめ客観があるのではなく、主観の集まりにすぎません。そして、その主観はとても多元、多様です。
 

 もっと言えば、人間というお猿さんが、嫉妬や支配欲から、互いをけん制し合っているような状態が、それが社会のすがた。
 もちろんそれではだめなので、信頼などを醸成して、社会を築いていくわけですが、お猿さん同士の主観のぶつかり合いであることには変わりがない。

 それなのに、過剰な客観性があると、猿の鳴き声の集まりを「客観」だとしてありがたがって、自分を否定するようなことが起きてしまう。

 

 

 では、真の客観性とは何でしょうか?

 

 それは、他者の主観を真に受けることではありません。

 

 真の客観とは、安心安全を土台にして、「自分の主観」から出発すること
 (安心安全がない時、主観は歪み、関係念慮(妄想)に落ちていきます。)
 

 次に、身体を支えにして、ノイズをキャンセルしていくことです。
 
 
 すると、腑に落ちる(ガットフィーリングに合う)感覚を得ることができます。

 それが、真に客観的なことです。

 

 

 「自分の主観からスタートしたら、独善的になるのでは?」という不安があるかもしれませんが、安心安全を土台にしていて、身体が健康なときの主観というのは社会のネットワーク(社会通念、常識)とつながっていますので、多元的でバランスが取れていて、基本的におおむね誤ることがありません。

 

 人間というのはクラウド的な生き物、個人であると同時に、社会の表象でもある。だから、社会とつながる一人の芸術家が時代を代表する芸術を創造することができたり、 作家や哲学者が時代精神をカタチにすることができたりする。凡人でも、アンケート調査、統計などを通じて、輿論が明らかになったりする。

 

 

 一方、意固地、独善的、妄想的になってしまうのはどういったときかというと
安心安全の支えがない時や、身体が健康ではないとき。その際は、社会的なネットワークとつながることができず、原家族やハラスメントを負った過去とつながってしまい、独善や疑心暗鬼、関係念慮(妄想)におちいったりする。
 意固地な人を見ると、その人は明らかに、別の何かと戦って、自分を必死で守っていることが外から見てもわかります。

 

 主観からスタートするためには、「安心安全」がキーポイント。

(参考)→「「安心安全」と「関係」

 

 そのためには、心身を健康にしている必要が勿論あります。

 

 過去の記憶によって、「安心安全」を感じることができない場合は、カウンセリングの出番となりますが、その前に、食事、運動、睡眠、というのはとても大切だったりします。

(参考)→「結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切

 

 

 「安心安全」(愛着と健康)を土台に自分の主観を出発点として社会のネットワークとつながり、真の客観を捉えることができるようになるのです。

 

 

 

 

 

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赤ちゃんもノイズをキャンセルしているのかな?

 

赤ちゃんをお世話したことのあるかたは経験があるかもしれませんが、赤ちゃんは、お腹がすいた、眠い、オムツを変えてほしい、など
要望を伝えるためかよく泣きます。

普通は、その要望が満たされると泣き止みます。

 
ただ、しばしば、大人ではよくわからない理由で泣くことがあります。

なにをしてもだめ、多くの場合、母乳を与えて何とかしのぐ、ということも多いのではないでしょうか?

 
それ以外に、ビニール袋をクシャクシャして音を出したり、鈴を鳴らすと泣き病むことがあります。

お腹の中で聞こえる音に似ているから落ち着くのではないか?と言われています。

 
ただ、ふと思うのは、赤ちゃんもノイズを受けていて、
それで泣いていることもあるのかも?ということです。

音(ノイズ)を聞かせると、そのノイズでノイズをキャンセルさせているのかもしれない、と感じることがあります。

 
著者の親せきの子どもも、1、2歳のころに、ちょっとボールを落としただけで、「ああ」と自分を激しく責めるそぶりを見せていた時期がありました。
そんな幼いころに、自己否定や、自分を責めるような高度な心理的な在り方を外から学ぶ、ということはできないでしょうからは、とても違和感がありました。
その子はとても繊細な子だったので、もしかしたら、外からのノイズ(支配とか)の影響を受けていたのかもしれません。

 
私たち大人も、ふとよぎる思いにどうしようもなくなる時があります。ストレスで苦しい時ほど、通勤中はウォークマンなどで、音楽をずっと聴き続けたい衝動に駆られるときがあります。

 

 

通常は、たんに音楽で気分を盛り上げて、ということだと解釈していますが、もしかしたらそれもノイズをキャンセルしようとしているのかもしれません。

 

 

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ノイズをキャンセルする言葉

 

関係念慮(妄想)をキャンセルする方法はあるのでしょうか?

自分でできる方法が一つあります。

 

それは、

「ノイズのキャンセリング」という言葉を、目を開けて頭の中で繰り返し唱えるというものです(1セットは7~8回)。

 

これまでは頭の中で声が聞こえたり、酷い状態であった人でも徐々に収まって、凪になっていきます。

 

 

人の考えが気になる、とか、頭がグルグル回る、といった場合にもよろしければ、お試しください。

 

 

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「関係妄想、念慮」の構造

 

さらに、先日の記事で書いた「関係念慮(妄想)」の場合は、拾った「ノイズ」を、さらに「算数障害」で読み違えてしまって、もうわけがわからない、解釈をしてしまう、ということが起きます。

周りから見たら、「考えすぎ」「さすがにそれは妄想だ」というとらえ方をしてしまうことがあります。

 

 

例えば、職場の人が、(本当は他のことが原因で)眉をしかめたら、「私のことを嫌っているに違いない」というようなことです。普通であれば、「眉をしかめた」という「ノイズ」はキャンセリングされて、目には入りませんが、それをキャッチしてしまいます。そこまではいいのですが、さらに「算数障害」によって「私のことを嫌っている証拠」と解釈してしまって、もうわけがわからなくなってしまうのです。

 関係念慮(妄想) = ノイズをキャッチする敏感さ × 算数障害(解釈の狂い)

という図式になるかもしれません。

 

 

普通は、「ノイズのキャッチ」だけで 「算数障害」の程度は低いといったようにどちらかの程度は軽いのですが、
虐待を受けてきた重度のケースになると「ノイズのキャッチ」も「算数障害」も、共に重いことがあります。

すると、対人関係のあらゆるものを疑うようになり、本来であれば頼るべき知人や治療者との信頼関係もうまく築くことができない、ということが生じることがあるのです。

 

 

 

 

 

「妄想(ノイズ)」は“事実”である

念慮や妄想というのは、、周囲や治療者が理解してくれないとクライアントさんとのラポールが切れてしまう、ということがあります。

 

しかし、頭では分かっていても、周囲はなかなかその考えについていくことはできません。
そして、本人はどうして妄想が事実であるととらえているのでしょうか?
この二つをつなぐ方法についてまとめてみました。
前回の記事でも書きましたが、
妄想というのは、実は特殊なことではなくて誰にでも起きているものです。「もしかしたら、理想的なパートナーが現れるかも?」といったことや「将来、何か偶然があってお金持ちになれるかも?」といったこと。

人間というのは想像をする生き物だからです。「妄想」とは私たちの日常にあるものです。

人間には邪念や妄念がつきもので、世の中を飛び交っています。それを私たちは知らず知らずのうちにキャッチしています。

無線や音の世界でいう「ノイズ」のようなものです。

 

 

ただ、健康な状態であれば、私たちの脳はそのノイズをキャンセリングして、必要なことだけを意識に上らせる工夫をしてくれています。
それができなくさせるのが、統合失調症や発達障害や、トラウマといった精神的な問題や、あるいは身体的な不良です。
社会的(周囲の支持)、心理的、身体的に健康ではないとノイズをキャンセルすることはできないのです。

 

「UFOに狙われている」「私は天皇の隠し子だ」といった妄想でさえ、実はその世の中に流通している考え以上のものは出てこないとされます。
「妄想とは社会的に作られているもの」です。

 

 

つまり、どんなに世迷言に見えても妄想は事実あるものです。
ただ、世の中では、ある閾値以下のものはキャンセルされ、意識に残ったものだけが事実とされるので、相手にされないだけです。

見えている人にとっては事実であり、周囲はそれをキャッチできないだけです。

 妄想とは、内側から湧いてくるのではなくて、「外から」やってくるものなのです。

 

 

「あの人(Aさん)が私を嫌っている」という関係妄想があったとして本当はそんなことを言っていなくても、 このメカニズムを知っている医師やカウンセラーは、「でも、もしかしたら、あの人(Aさん)の頭には否定的な考えがよぎっていて、それをこの人はキャッチしたのかも」ととらえて理解、共感することができます。
※Aさんに尋ねても、Aさん本人も一瞬よぎっただけですから気が付かず、Aさんは「そんなこと考えてません」と否定するでしょうけれども。嘘をついているわけではなく、本人にとっても閾値に達していないことは自覚(記憶)できないからです。

 

 

 

例えば、視線恐怖や対人恐怖の方が、
「道で歩いていると変だと思われているような気がする」といって、一般的には「そんなことないよ」と慰めますが、当人は腑に落ちません。でも、事実だととらえてみたらどうでしょうか?

私たちも、道を歩きながら、すれ違う人を見て、「派手な服だな」とか、「なんだよ!とろとろ歩くなよ」といった雑念、邪念は常に渦巻いているものです。
ある種の敏感な人は、それをキャッチしているとしたらどうでしょうか?

「そうかもね。それをキャッチしてたらつらいでしょう!」を共感することができます。
クライアントさんも、「そうなんです!」と安心することができます。

 

 

統合失調症の方の、例えば、「UFOに狙われている」という妄想も、「世の中ではそういう想像が流通していて、それをキャッチしているのかも」と理解することができます。

昔から、そうしたことに通じたベテランの医師などは、
「私には見えないけど、そうなんだね~」と理解を示されます。

 

 

クライアントさんの言うことをあたかも中立な裁判官のように事実かどうかを判定する治療者がいますが、そうしたことは百害あって一利なしです。

 

 

「二重の見当識」といって、クライアントも、実はノイズとそうではないものを薄々区別している「自分」がいたりします。
しかし、ノイズがあまりにうるさくてのぞけないことに苦しんでいるのです。
それを、「おかしい人」扱いされれば、「(私はおかしくないんです)ノイズはあるんですよ!」と訴えたくも(執着したくも)なります。

 

その方がおかしいのではなくて、まったく”正常”です。たとえ統合失調症でも、正常な人格がその奥にはあります。ただ、「ノイズという外から来たものに悩まされている状態なのです(「悩みは、心の外にある」)」。

→「統合失調症の症状や原因、治療のために大切なポイント

 

 

クライアントさんの訴えは、事実として受け止めてみると、カウンセラー側も見えないものが見えてきます。
ノイズのメカニズムを理解、説明したうえで、「敏感すぎたらしんどいですから、そうしたことをキャッチしないようにコンディションを整えましょうか」といって治療、カウンセリングに入っていくことができます。

 

さらに、これまでの知見にはない、難しい悩みのメカニズムについて新しい仮説が浮かんできたり、といった“おまけ”もついてきます。

 

 

トラウマを負った方や、愛着障害(不安定型愛着)でお悩みの方は「関係念慮」を持ちやすいですが、具体的に言えば、

「人の言動が気になって引きずりやすい、傷つきやすい」

「「あの人なんであんなこと言うんやろう?」と思うことがよくある」

「人に嫌われていないかどうかが気になる」

といった方は、本記事での「ノイズ」のメカニズムをまずは理解していただくとよいかと思います。そのうえで、そのノイズをキャンセリングする方法に取り組んでみると、周りに左右されにくくなってきます。

 

 

 

 

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「関係念慮(被害関係念慮、妄想)」

 

トラウマを負った人の特徴としては、「関係念慮(被害関係念慮、妄想)」があります。

 

「関係念慮」とは、本来自分に関係のないことが関係あると思えたり、することです。特に、対人関係で生じることが多く、だれかが、自分のことを悪く言っている、貶めようとしている、ととらえてしまうことです。程度が重くなれば、「妄想」となります。
実は、「関係念慮(妄想)」は特殊なことではなく、日常の中で誰でも経験しています。
芸人のネタではありませんが、「もしかしてあの人は、私のこと好きで誘っているんじゃないの??」といったことから、「この仕事で成功したら、役員に目をかけてもらえるかも?」といったことまで、いろいろな想像を普段からしているものです。

 

 

人間の意識は同心円でグラデーションのようになっていって、現実-想像-妄想 と距離が遠くなると、怪しくなっていくものです。

 

さらに、人間の頭には邪念というものが渦巻いています。Wifiのように、そうした意識が飛び交っているのが対人関係の場、です。

相手考えている、様々な邪念や意識を、人間は薄々キャッチして感じ取ることがあります。これは、「ノイズ」と言えるものです。

 

 

普段、健康な状態にある人、安定型愛着の人は、その「ノイズ」をキャンセリングすることができます。例えば、仕事やプライベートで「もしかしたら、あの人に嫌われたのかも?」と思っても、それを打ち消すことができます。
脳のコンディションも影響しますし、愛着(頭の中で、家族や知人が自分を支えてくれている絆)も影響します。
「そんなことはない」と思えるわけです。

 

しかし、トラウマによって、脳がダメージを受けてコンディションが下がっていて、さらに、愛着も不安定な状態の場合、そうした「ノイズ」を打ち消すことができません。

 

さらに、「自他未分」で自他の区別がついていないことも手伝って、「ノイズ」が自分のものではない、とは思えずに、自分のものと真に受けてしまいます。
そのため、環境から受け取る「ノイズ」をそのまま受けるようになり、それが「関係念慮(被害妄想)」となってしまうのです。

 

ちょっとした振る舞いで相手から馬鹿にされたと勘違いしたり、相手をこき下ろして、自分を守ろうとします。

場合によっては、「視線恐怖」や「自己臭恐怖」「身体醜形恐怖」のような状態になることもあります。

 

 

医師やカウンセラーに対しても、同様に疑ったり、ちょっとした振る舞いを悪意と受け取って、クレームをつけたりして、治療関係を悪化させてしまいます。

 

 

俗に、“境界性パーソナリティ障害”とは、まさにこのような状態で、「ノイズ」をキャンセルできないために、ちょっとしたことで混乱してしまうのです。
「あの人は、いつも私を貶めようとしている」
「あの先生はひどいことをした」

といったことは、実は“症状”なのです。
(でも、当人にとっては事実です。)

→「境界性パーソナリティ障害の原因とチェック、治療、接し方で大切な14のこと

 

 

 

こうした状態を避けるためには、まずは「関係念慮」というものがある、ということを知ること、頭に浮かぶ雑念、疑念は、すべて環境からもたらされるもの(≒自分のものではない。外側から来たもの)だと知ることが大切です。

そのうえで、自分だけではどうしようもないので、ちゃんとしたセラピーを受けることも必要になってきます。

 

→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

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