新たな療法の治療ポイントは「呼吸」(代謝):新しいトラウマケアのアウトライン

 

 先日の記事では、運動や睡眠、食事など環境の大切さを書かせていただきました。
(参考)→「結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切

 

 カウンセリングやセラピーもいいけども、結局のところはそうしたものが大事だということです。

実際に、運動や睡眠、食事の改善に取り組むことは必要です。

 

 ただ、カウンセラーとしてはそれだけでは面白くない、ということで、運動など大切なものに共通の要素をセラピーの内部に取り込めないか、という野心を持ちます。

 当センターのクライアントさんはすでに体験されていらっしゃるかと思いますが、実は、昨年秋頃から、トラウマケアの中にそれらを取り込むことをし、新しい療法を作る試みを始めています。

 今回は、発見した新しいトラウマケアのアウトラインについてです。

 

 

 セラピーやカウンセリングよりも効果がある、運動や食事、睡眠などの環境要素に共通するものは何か、というと「代謝」です。人間は代謝をしなければならない。代謝が止まることが病を生む。

※以前、記事の中でも触れました。
(参考)→「更新されない記憶と時間感覚

 

 

 代謝がなく、ストレスや記憶などを更新できない状態のことをトラウマ、といいますし、人間関係でもなんでも、代謝のない呪縛をモラルハラスメントというわけです。

 悩みを解決するためには代謝機能を回復する必要があります。

 

 では、そのためのキーポイントは何か?

 

 

 従来提供していたトラウマケアの療法では、例えば、ホルモンや遺伝子を言葉で操作することをしていました。 ただ、提供する際はとても面倒で、もちろん効果はありますが、喧伝されるほどには簡単ではありませんでした。

 

 例えば、その療法の研修会で、講師をされていた、右腕ともいうべきベテランのカウンセラーの先生が、「(2年たって)初めて治療の効果を感じました」と笑っていっていたのがとても印象的だったことを覚えています。意外だった半面、共感したのを覚えています。

 ※その意は何かというと、ある遺伝子コードが見つかったときに初めて効果らしい効果を感じた、という意味で、20年近くそのトラウマケアに携わってきたそのベテランの先生でさえ、ホルモンや遺伝子を言葉で操作する方法は、提供していても手ごたえが薄かったようなのです。

 

 これはおそらく、人間というのは巨大なシステムになっているためだと思います。ホルモンや遺伝子を言葉を介して一つずつ症状を変えようとする行為は、例えていうなら森や海といった生態系を、人間が意図的に変えようとするようなものです。

 

 ある植物を植え替えよう、ある動物を棲み替えよう、というようなもので、人為的には思うようにはいきません。
 効果が出ても、生態系全体の恒常性維持のメカニズムに打ち消されたり、といったことも起こりえます。

 

 確かにこれまで難しいケースが動くなど効果はありますが、半面、ベテランの先生も感じるような難しさもありました。

(コードを唱える方法自体は素晴らしいものであり、革新的な手法です。)

 

 

 では、その難しさや煩雑さを超えるために何が必要か?
従来の方法ではない、新たなアプローチがあり得るのではないか?

 

 

 その根底に筆者が再確認したことの一つは、トラウマとは「ストレスの障害である」という視点です。

 

 従来のトラウマケアは、トラウマをどちらかというと「記憶の失調」ととらえていました。冷凍保存された記憶を解消するように働きかけることで改善させようということです。

 しかし、それでは肝心なことが見えなくなる。記憶や認知の問題にとどまらず、トラウマの影響は身体全体に及ぶからです。大きくとらえる視点が必要で、古典的なようで新しい「ストレスの障害」という視点はとても役に立ちます。

 

 ハンス・セリエなどが有名ですが、
ストレスについての研究は、トラウマ研究とは別の系統で長年なされてきました。
「ストレスによる機能障害とは何か?」をしっかりととらえ、再度トラウマを見返してみると、実は、私たちの心身の不調の根底あるものは、「ストレス応答系の失調」ではないか?ということが見えてきます。

 

ストレス応答系とは、自律神経系、内分泌系、免疫系の3系ことを指します。

(参考)→「”ストレス応答系の失調”としての心の悩み

 

 

 本来、人間(動物)にはストレスを処理するシステムが備わっています。それは、主に「副腎」などから出されるコルチゾールなどのホルモンが対処をします。しかし、長期のストレスにさらされるとコルチゾール中毒のようになり、さまざまな不調をきたします。

 

 ストレスを中和し、身体の恒常性維持を支える機能(「アロスタシス」といいます)が低下する。そのために、他人とはリズムが合わなくなり、他者との一体感が損なわれて、孤独感を感じるようになるし、人が怖くなったりし、緊張しすぎて失敗したり、社会ではうまく生きていけなくなるのです。

 

 常にストレスを警戒するようなモードになり、平常なモードに戻れないのです。コルチゾール過多になると免疫も下がるので体調も悪くなります。

 

 

 本当であれば、ストレスがあったときだけ、ストレスホルモン(コルチゾール)が上昇して、「やめなさい!」「なんでやねん!」と漫才の突込みのように反応できればよいのですが、それができなくなります。

 逆に、それができるようになれば、少々のストレスは平気になります。さっと動けるようになるし、漫才のコンビのように一体感をもって会話をキャッチボールできるようになります。
(当意即妙のやり取りを「漫才みたいやな」とよく言いますが)

 

 昔の人は、ストレスに強い人のことを「胆力がある」(≒副腎)といいましたが、まさにそれです。ストレス応答系が健全に働いていることを「胆力が強い」と呼んだのではないかと思います。

 

 ストレスの研究からトラウマを見返すと、ストレス応答系を元に戻すことができれば、私たちの抱える悩み、生きづらさを解消することができるのでは?ということが見えてきます。

 

 

 では、どのようにすればストレス応答系を元に戻すことができるのか?

上記に書きましたように、暗示の言葉を使う方法も効果があって良いけれども、なかなか難しい面もある。

 

何か方法がないか?と試行錯誤をしていた時に、昔の経験を思い出すことがありました。

 

 10年ほど前になりますが、筆者は、ある先生からボディワークを学んでいました。ボディワークとは身体からアプローチするセラピーのことです。

月一度、毎回異なるテーマで行っていて、筆者は結局、2年ほど学びました。

センタリング、リバランシングなど様々なテーマを教えていただくのですが、一番、効果を感じたのは何か?というと「Breathing(ブリージング:呼吸)」の回でした。

 

 身体の中心(センター)を感じながら呼吸をしたり、
横隔膜などのブロックを開放したり、わざと過呼吸のような状態を作り出したり(行うと、手足がしびれてきます)さまざまなワークを行います。

 

 それまではボディワークを受けてもあまり変化を感じることがなかったのですが、ブリージングの後は顕著な変化があり、受けた後、人見知りみたいな感覚(人との壁)が一切なくなったのです。

 

 直後にある会合に参加したのですが、苦手なタイプの人とも気さくに話ができたり、驚くような感覚でした。
ただ、その時は、1週間くらいすると徐々に元に戻ってしまいました。

 

 おそらく、呼吸の習慣が元の状態に戻っていったからだと今にすると思います。ただ、当時は、「良いと思ったのに、戻ってしまったか」といった程度の認識でした。

 

 その後、FAPなどいろいろな方法を試してもそれぞれ生きづらさがよくなり素晴らしいのですが、実は、ブリージング(呼吸)のときに感じた効果を上回るものはありませんでした。

 

ふと、なぜか、そのブリージングの効果を思い出したのです。

 

なぜ、あれだけの効果を感じたのだろうか?

治療が難しい人見知りが劇的によくなったのはなぜか?

 

 自分の無意識(心)にも尋ねながら、考えていると、筆者の頭に浮かんできたのは、「呼吸」というキーワードでした。

 

「ストレス応答系の失調」・・「呼吸」・・・

なるほど!

その時に、いろいろな経験や知識がつながったような感覚がありました。

なぜ、有酸素運動は効果があるのか?

なぜ、ヨーガや仏教などでも呼吸が重んじられるのか?

なぜ、マインドフルネスは効果があると注目されるのか?

 あと、「お手玉やティシュペーパー呼吸法」でうつ、パニックなどの治療に効果を上げている医師のことも浮かびました。

(参考)→「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと

 

 

 そして、ボディワークでの自分の経験も・・・
一体感が回復したのは「呼吸」によってであったことの理由もわかったような気がしました。

 

 

「呼吸」は意識でコントロールできるし、
「呼吸」を変えることで、ストレス応答系にアプローチできる可能性は高い。

 また、これまでの療法ように言葉で一つ一つホルモンや遺伝子にアプローチしようという人為的な難しさをも超えて、「呼吸」ならば、全体の調和を保ちながら、システムの改善にアプローチができる。

 

 人為的でも作為的でもなく、心身の調和に沿っていて、自然で、難しさもない。その人の本来のところまで自然と戻っていくことができる。

なるほど、と思いました。

 

 正直に言えば、「呼吸」が重要であることは昔から言われていることで、当たり前で陳腐なことだし、それまでは、「いまさら、呼吸法もないだろう」とどこか興味がなかったのです。

 

 しかし、あらためてまわりまわってみると「呼吸」こそクリティカルなポイント(治療点)の一つだ、ということが見えてきました。

 

これが去年のことです。

 

 

さて、ここから具体的な手法に落とすことにひと手間かかります。

 

 

 クライアントさんに呼吸法を行ってもらうのか?
それも、難しそうです。
(もちろん、それでも良いとは思いますが、面倒な印象があります。あまり好きではない。)

 

 やはり、あくまで心理療法の枠組みで、科学的で、簡便で、拡張性、発展性がある方法はないか?ということを検討してみました。

 

ここは心理療法らしく、無意識の力を借りてみることを思いつきます。

 

 無意識を介して、カウンセラーからクライアントの呼吸中枢などに働きかけてストレス応答系の失調を回復しようと試みます。

 

そして、呼吸のメカニズムをもとにしてセラピーの手順を組み立てていきます。

 

 具体的な方法は伏せますが、
実際のセッションでは、呼吸法をすることもありませんし、難しい作業もありません。ただ、クライアントさんは、いくつかのことを頭で思い浮かべてもらうだけで、ただリラックスしてもらいます。そして、カウンセラーも基本的に途中は無言です。

 

 

 面白いことは、メカニズムや「呼吸」のことはカウンセラーはひとことも言いませんが、クライアントさんはしばしば、途中「呼吸がしやすくなった」「急に、鼻が通るようになった!」とフィードバックをいただくことです。

 

 ためしに、他所で、従来のトラウマケアを10回以上受けられた方に違いをどう感じるのかを聞いてみると、手ごたえはなかなか良いご様子。

 

 他のパニック障害でご相談のクライアントさんも、セッション中に身体症状が明らかに軽快するなど、これまでにはない効果が見られました。

 

 まだまだ改善の余地はありますが、今のところ、この新しい方法(ストレス応答系へのアプローチ)は可能性を感じます。
(ブログやクライアント様の感想などで、また都度、お伝えさせていただきます。(参考)→「クライアント様の感想」)

 

 呼吸がどのようにストレス応答系の失調を回復させ、私たちの悩み、不調を改善していくのかについてはまた書かせていただきます。

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

 

「無限」は要注意!~無限の恩や、愛、義務などは存在しない。

 

 機能不全にある家族、夫婦、恋愛に関することでしばしば起こることとして、「恩」とか「愛」とか、「義務」が無限に続くように思わされてしまうことです。

 

 どうしようもない親やパートナーなのはわかっているのに、離れられない。離れようとすると罪悪感を強く感じてしまう。どこまでも面倒を見ないといけない、どこまでも義務を果たさないといけない、と思わされて、離れたほうがいいとわかりながらも関係を続けさせられてしまうのです。

 こうしたケースはとても多いです。

 

 これは、無限の愛は美しい、他の関係と異なり、家族(恋愛)だから当然だ、といったことではありません。

 

 実は、「無限」という感覚は要注意で、ストレス障害(トラウマ)で、報酬系、算数機能が失調して生じる症状の一つです。「恩」とか「愛」とか、「義務」に対する見積もりが狂っているために起こるのです。

(参考)→「トラウマの世界観は”無限”、普通の世界観は”有限”

 

 

 

 無限の「恩」「愛」などは、少なくとも人間には存在しません。

 人間にとってものごとは常に有限であって、適切に見積りされて、「貸し-借り」がまわりまわってバランスされるものです。

 

 もちろん、家族はほかの関係とは違って、貸し借りの総量は大きいわけですが、たとえ家族の同士であっても、目に見えない「貸し-借り」で本来やり取りしています。
(それは2者間だけではなく、世代間で申し送りのようになっているとも考えられます。今、子どもの面倒を見るのは、それを前の世代がしてくれていたりしていたものを次の世代返している、というところがあります。しかし、それも「無限」ではありません。)

 

 もし、無限のものが存在してしまうと危険なことです。
人間には代謝、更新が必要ですが、無限なものは代謝がなく、常に縛られてしまいます。

 

 トラウマによって起こる症状の一つがパーソナリティ障害です。自己愛性パーソナリティ障害の特徴に「限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想へのとらわれ」といったことがあるように、トラウマを負うと、「無限(限りない)のもの」を求めるようになってしまいます。

(参考)→「パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント

 

 

 トラウマによっておこる別の症状に依存症があります。
ご存じのように、依存症には限りがなく、アルコールや薬物、ギャンブルを身が破綻するまで「無限に」行います。

(参考)→「依存症(アルコール等)とは何か?真の原因と克服に必要な6つのこと

 

 

 もう一つ、摂食障害も同様です。
必要を越えてどこまでも(無限に)痩せようとしたり、飽くことなく(無限に)食べ続けたりしてしまいます。

(参考)→「摂食障害とは何か?拒食、過食の原因と治療に大切な7つのこと

 

 

 このように、「無限」というのは生物にとっては異常なことです。

 

 家族(やパートナー関係)の「機能」も有限であり、常に更新、変化し続けるものです。そして、機能不全な状態が長く続けば、貸し借りのバランスが崩れて、最後は「愛想が尽き」て当然です。そうすることで、支配を避け、別の環境を選択できるようになります。

 

 最近話題になっている、介護問題などは、有限な貸し借りのバランスが大きく崩れたところに起きる問題といえます。(あまりにも負担が大きく、家族だけではその収支を背負えないので、外部のサービスを活用する)

 

 無限の「恩」「愛」「義務」などはありませんし、罪悪感を持つ必要もありません。親しい関係ほど、距離を取ったほうが関係は続くものであったりもします。

 

 無限とは、ニセ成熟の感覚で、本来の成熟とは有限を知ることにあります。

 

 もし、ご自身の中に「無限(と思わされているもの)」があるならば要注意。それは不自然なものではないか?見積もりが狂っていないか?とチェックしてみるとよいかもしれません。何かそこに歪なものが隠れています。

(参考)→「更新されない人間関係

 

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

夫婦、恋愛の悩みも「機能」として捉えれば、役に立つ

 

 

 前回は、親などの家族について取り上げました。

 家族にはいろいろなしがらみ、幻想が付きまといますし、各々の価値観はさまざまですが、「機能」(≒機能を果たしている存在こそが家族である)としてとらえると問題を解決する際には役に立つ、ということを書きました。

(参考)→「親、家族についての悩みは厄介だが、「機能」としてとらえ、本質を知れば、役に立つ~家族との悩みを解決するポイント

 

 

 これは、いわゆる夫婦、恋愛の問題でも同様になります。

 

 結婚、恋愛も、幻想も多く、盲目にもなりやすい、
モラハラ、パワハラ、DVなども問題もしばしば起こります。それぞれの価値観も多様ですから、なかなか一様には片づけることはできません。

(参考)→「恋愛依存症の本当の原因と治し方~6つのポイント

(参考)→「家庭内暴力、DV(ドメスティックバイオレンス)とは何か?本当の原因と対策

 

 

 しかし、配偶者や恋人も「機能」としてとらえると、悩みの解決に役に立ちます。

夫婦が夫婦として、恋人が恋人であり得るのは、それぞれが「機能」をはたしているからです。
(子どもが生まれれば「父親」「母親」としての機能も)

 

 

 問題を生む多くの場合は、いずれかが未熟で「機能」が満たされておらず、「機能」が満たされていないことを「恋」「愛」というフィルタで見えなくなっていたり、
共依存関係になっていたり、「相手がかわいそうだから」といって決断ができなくなっていたり、

 「個別性」(自分たちの関係は特別だから常識は当てはまらないんだ)の名のもとにごまかしていたり、といったことが起こっています。

 

 確かに、夫婦の形、恋人の形は様々です。そのことを誰も口をはさむことはできません。「機能」をはたしている限りは、スタイルは自由です。

 ただ、夫や妻が、彼氏、彼女が、その社会で求められる「機能」が果たされておらず(機能不全)、もしそれでどちらかが苦しんでいるなら、関係を続けることは不自然なことです。

 

 

 別のたとえで表現すると、
野球におけるピッチャーには、さまざまなタイプがいます。個性的な投げ方選手もいます。オーバースロー、サイドスロー、アンダースロー、二段階モーションなどなど。どんな投げ方でも構いません。ただ、ピッチャーに求められる「機能」(バッターを抑えたり、試合を作ったり、敗戦処理など)が果たされていなければ、ピッチャーを続けることはできません。配偶者、パートナーでも同様です。

 

 

 「機能」とは、愛情といった感情の問題ではなく、経済的な責任や、相手と信頼関係を守る責任、相手を思いやり、尊重する姿勢などのことを指します。
機能には、Being(存在の尊重、安全基地など)-Doing(行動、行為、ふるまいなど)-Having(成果、収入など) の3つをバランスよく満たしている必要があります。

 

 そして、その「機能」の具体的な中身は、理想主義や個人の価値観などで決まるものではなく、時代錯誤を排したその時の“社会通念”で決まります。
(現在であれば、従来のように、性別で決めつけてはいけないし、特に女性の地位、権利は十分に尊重されないといけない)

 

 ハラスメントを行う人は、ゴールポストを自分に都合よく動かして、相手を支配しようとします。そんな時、社会通念に基づく「機能」という視点は、私たち守ってくれる道具にもなります。

 

 

 もし、夫が働かずに妻に寄生するような状態で、家事や子供の面倒も見ず、妻が困っているのに、「俺たちの関係は特別なんだ」「愛しているからいいだろう」といっても通用しません。明らかに機能不全。夫婦であれば、それぞれ(場合によってはいずれかが)が経済的な責任も負い、相手を尊重し、協力していくことがなければなりません。

 

 また、いくらパートナー同士でも、パートナー同士だからこそ、相手を傷つける言動は許されず、社会で必要とされるマナー、敬意は当然守られなければなりません。

 

 もし、夫婦、恋人同士において、いずれかが相手に暴言を吐いたり、あるいは相手をコントロールするような場合、「私は、あなたを教育するためにあえて厳しく注意しているんだ」といっても、それはダメです。これも機能不全。
自分にとっての要望を相手に伝えることはもちろんOKですが、パートナー同士の機能には「相手を教育する」といったことは、含まれないからです。

 

 本来、機能にないことを許容すると、結局、どちらかが片方を支配、コントロールする歪な関係になってしまうのです。

 

 

 「機能」は、状況とともに変化してい行く必要があります。恋人同士の時と、結婚後は異なりますし、子どもが生まれてからも変化し、子の成長ともにさらに変わっていきます。互いの年齢や仕事、家庭の状況に合わせてどんどんと変わっていく必要があります。

 

 特に、男性はこの変化を自覚して合わせることが苦手な傾向があります。よく男性は「結婚すると女性は変わる」と戸惑いを口にすることがありますが、「機能」の視点からは当たり前のこと。

 

 男女問わず、自分の信念にこだわり、変化を拒むことはトラブルのもとになります。常に、求められる「機能」は何かを自覚し、学習し、絶えず変化をしていかなければなりません。

 

 

 ご自身が、配偶者、恋愛の問題で悩んでいる場合、「機能」とそれは変化する、という視点でとらえてみると、何が問題かが明確になり、相手にも要望を伝えやすくなったりし、問題の理解、解決がスムーズになります。

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

親、家族についての悩みは厄介だが、「機能」としてとらえ、本質を知れば、役に立つ~家族との悩みを解決するポイント

 

 前回の記事でも書きましたが、
悩みの解決では、環境からアプローチすることはとても大事です。

(参考)→「結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切

 

 

 うつ病でも、本当に治すためには生き方(働き方、暮らし方)の変更が必須といわれます。

(参考)→「うつ病の真実~原因、症状を正しく理解するための10のこと

 

 生き方がそのままでいては、いくら薬やカウンセリングでよくしても、また再発したりして戻ってしまうようです。

 

 

 

 私たちが直面する中でもなかなか厄介な問題である「家族との関係」の問題をどうするか?ということについても、環境を変える工夫が必要になってきます。

 

 ただ、やはりネックになるのは、経済的な問題です。
特に女性にとって、日本はとても暮らしにくい社会です。平均年収は男性の半分程度。ある調査ではシングルマザーの8割以上が生活が苦しいと回答しています。軽々には自立しては?とは言い難いところがあります。それぞれの価値観も多様ですから、治療者が「こうしなさい」と押し付けることもできません。

 

 そのため、医師や、カウンセラーも、なんとか現況のままで打開策を探ろうとしますが、それでも症状が変わらず環境が明らかに原因であるならば、自立への一歩を勇気をもって進む、ということも必要になってきます。

 

 

 「家族」というものは、どんな方にとっても、厄介なものです。実の家族だから(実の家族だからこそ)、ややこしい。

 

 家族だからといって、愛してくれるとは限りません。
家族だからといって、味方をしてくれるとも限りません。
家族だからといって、自分を認めてくれるとは限らないのです。

 

 でも、私たちはいつのまにか、「家族」に対して幻想を抱かされてしまっていて、「(他の家庭は仲がいいのに)仲が悪い、私はおかしいに違いない」と思い悩んだり、「世話をしなければならない」「見捨ててはならない」といった「~~ねばならない」のとりこになってしまいます。

 

 また、セラピストが書いた本にあるような美談、宣伝にも影響されて、「解決出来ていない自分に問題がある」というに思われている方もいらっしゃるかもしれません。本に書いてあるようにはなかなかうまくいかないものです。

 

 

 他の悩みでも同様ですが、
「家族」というものを考える際は、歴史や、常識(古典)を知ることはとても役に立ちます。
 多様な価値観の元に、判断を迫られる問題については、軸となる知識を持っておくことは大切です。

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

 まず第一に知らなければならないのは、
家族、特に「生みの親」とこれほどまでに密着した関係を持つようになったのは、現代に特有のことであり、かならずしも、皆さんが直面している家族のスタイルは歴史的に見て普遍的なものとは言えない、ということです。

 

 過去の時代では、生みの親は自分の子どもを産んでもさほど関心を示さない社会もありました。

 

 また、生みの親を離れて奉公に出て、そこでの親方と疑似的な親子の関係になる、ということも普通のことでした。やくざの世界では、親子、兄弟の契りを交わして、ということですが、あのような感覚です。


 やくざほど極端でなくても、現代でも、例えば部活とか、会社などで、ある種疑似的な親子の機能をそれぞれが果たしていたり、といったことはあります。監督、上司のあだ名が「親父」「~~の母」だなんて、ということを耳にしたことはないでしょうか。

 

 簡単に言えば、「親」「家族」とは、機能であって、実の家族かどうかとはイコールではない、ということです。ですから、生みの親、実の家族とうまくいっていないことについて罪悪感を持つ必要もありませんし、こだわって問題を解決しようとする必要もありません。

 

 生みの親、実の家族が必ずしも親、家族の機能をはたしている「良い親、良い家族」とも限りません。どうしてもわかってくれない、家族の機能を果たせない人たちもいます。その場合は、家をの外で、社会の中で少しずつ親の機能の代替を得ていくものです。

 

 人間には生理的に、反抗期が存在する、ということも見逃せません。私たちは、反抗期に、“精神的に親を殺して”自立を果たすとされます。社会的には、経済的にも独立をしていき、空間的にも離れて一人前になっていきます。
親子仲良く、べったりということは普通とは言えない。

 

 今の社会は、親元にずっとい続ける、ということも多くなったために、自立の境目があいまいになってしまっていて、それも問題を生む原因になっているようです。

 

 普通の人でも、家族とはややこしいものです。皆、それぞれ問題を抱えています。

 

 筆者が子どものころ、ドラマやアニメでは、親子の葛藤(葛藤する親子)というの珍しくなかったように思います。父親というのは決まって頑固で、雷を落とす、というのが定番でした。

 わからず屋の親に反発して家を出て、ということも陳腐すぎるくらいによくある題材でした。
(そういえば、マンガ「美味しんぼ」も父子の葛藤が物語の軸でした。)

 

 逆に、物分かりのいい親、というのはとても珍しかった。筆者が、1988年公開の「となりのトトロ」を見たときに一番印象的だったのは、糸井重里が声を演じていた、優しい友達みたいなお父さんでした。父親というの親父で頑固で、ということがお決まりだった中で、画期的で驚いたのを覚えています。

 

 本来、家族、親とは「機能」ですから、機能がどうしても満たされない場合、本人が家を飛び出して自立する。社会(特に仕事)に出た中で出会う人たちとのやり取り中で 代わりに少しずつ親、家族からもらえるはずの機能が満たされていく。そして、自分が自立に成功した暁に、生みの親、家族にも“遠くから恩を返す”というものだったのではないか?

 

 

 国や会社でも他社(他国)に経済的な実権(株など)を持たれたり、借金をしたりすると、依存している分だけ口を挟まれます。これは資本の論理です。同様に、経済的に親を頼るということは、精神的にも束縛される(口を出される)ということを意味します。経済的な依存関係にある場合、親子が問題を抱える、共依存関係になる、ということは構造的には当たり前とも言えます。

 

 家族の問題とは、心理主義の風潮の中で勘違いされているような「心理」の問題ではなく、本来は「機能」の問題であり、「経済的」問題でもあるのです。ケースによっては、経済的にも独立して、対等な関係を築いて初めて関係が良くなることもあります。

また、時間が立ち、互いの成熟を待たないと解決しない問題だってある。

 

 

 逆に、「愛着」だとか「支配」といった理屈を根拠に、機能不全の家族が経済的、空間的にも一緒のままで、「親、家族に変わってほしい」とこだわり続けることは果たして生きやすさにつながるのか?冷静に検討してみる必要があります。結局、カウンセリングを受けてみても、親は変わることなく、生きづらさは解消されないまま時間とお金だけがかかることになりかねません。

 

 さながら、うつ病の人が、生き方を変えないまま、薬やカウンセリングだけで症状を回復させようとして、結局再発を繰り返すような状況です。

 

 ※「愛着」理論は大変便利な仮説ですが、ただ、生みの親との関係をあまりにも強調しすぎる、という短所もあるように思います。本来は、生みの親に限らず「社会的なネットワークが絆を作る」と広く捉えられるものです。

(参考)→「「愛着障害」とは何か?その症状・特徴と治療、克服のために必要なこと」  

 

 

 

 人類の中で、精神的な文化に大きく寄与したゴーダマ・シッダールタ(仏陀)、とキリストも、ともに故郷や家族を捨てて悟りや教えを啓きました。

 

 彼らほどの人物であれば、家族のもとにいたままで悟りを開いてはどうか?と思うのですが、どうしてもそれはできなかったようです。

 

 

 特に、キリストについて、指摘されている、とても面白い有名な事柄があります。

 キリストは弟子を連れて各地で奇跡を起こしていますが、唯一、故郷に戻った時には、奇跡は起こせていないそうです。つまり、しがらみのある家族のもとではキリストでも本来の力を発揮することはできなかった、というのです。

 

 彼らほどの天才でも、親元、家族の元にいては精神的に自立を果しえなかったのですから、凡人の私たちにおいては、なおさら、その難しさは自覚する必要がありそうです。

 

 

 

 当然ですが、何でもかんでも、自立が解決策とは言えません。それぞれの価値観、経済的な事柄にも慎重な配慮が必要です。冒頭にも書きましたが、特に女性は経済的にも生きづらい社会ですし、発達障害傾向や体質的に家から出れない、という深刻な問題を抱えている人も少なくありません。

 

 ケースによっては家族のもとにいたままでカウンセリングなどを通じて解決を目指さざるをえないものもあります。

 

 ただ、どのケースにおいても、環境にはあらがえないという人間の限界を踏まえて、「家族」については、機能的、構造的にとらえる必要があります。

 

 

 

 「家族」との悩み解決を考える際のポイントを簡単にまとめるてみます。

 

1.機能をはたしている存在こそが「親」「家族」である、ということ踏まえる。

2.そのため、機能不全に陥っていたら、まず、機能を満たすように働きかける。

3.それがかなわなければ、機能を外に求めてその家族の元を離れる、ということになります。

 

 仮にカウンセラーに役割があるとしたら、1~3それぞれのパートを支える、ということになろうかと思います。

 特に、家族に対しては幻想や罪悪感を持たされやすく、一人では行動が制限されてしまいますから、「機能(環境)」という判断材料を軸に、クライアントがより良い機能(環境)を得られるように側面から支援するということになるのではないか?と思います。

 憎しみやわだかまりについてはトラウマケアなどで解消していくことになります。

 

 

 こうしたことを自分で判断するためにも、「家族」というものを相対化する目をもっておく。そのために、家族の歴史や機能などについての知識を持っておくことはとても役に立ちます。
(知識があると、カウンセリングを受けても、解決は早くなります。)

 

(参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切

 

 筆者も昔、トラウマからくる生きづらさに悩んでいたころ、例えば、食事とか、睡眠とか、運動とか、そんなことは解決の方法として、全く小バカにしていたように思います。

 「そんな道徳的なことはいいから、もっとすごいセラピーで解決する方法がないのか」と。

 チマチマした感じがしましたし、ほかに手段がないから仕方がなく行うようなもの、ととらえていたように思います。

 

 筆者が、生きづらさで悩んでいた時の生活は、
 朝8時過ぎから夜中0時まで仕事して、お酒を飲んで、4,5時間寝てまた出勤する、というような感じでした。

 

 そんな状態でも生きづらさがなくなりパワフルに働けるようになることが、「治る」ということであり、それを目指して、いろいろなセラピーを学んだり、受けたりしていました。

 

 

 食事とか運動とかを軽視するのは、何も筆者だけではないようで先輩のカウンセラーに話を伺うと、「私も昔は、食事や睡眠なんてバカにしていた」とのことです。

 

 心理療法家の意地としては、そんなことは抜きにして治療したい、というところもあるでしょうし、あと、もう終焉に近づいた(と筆者はみていますが)カウンセリングブームと心理主義の影響もあると思います。

 

 心理主義とは、なんでも「本人の心の問題だ」とする立場のことで、似非科学的で非合理と批判されます。

 

 

 20年ほどカウンセリングに携わってきて、何周もまわっていろいろなことを経験すると、結局、環境からアプローチしたほうが、うまくいく(しないと結局うまくいかない)ことが見えてきます。

 

 私たち人間というのは、環境に左右される生き物です。
環境にはほとんどあらがえない。

 

 例えば、個人の実力の結果とされる「学歴」「スポーツでの実績」といったものでさえ、環境に影響されます。

 

 実際、東大に進学する学生は、世帯収入が高い富裕層が多いそうですし、原動力となる勉強の「やる気」も親戚や周囲に高学歴の人がいたり、教育に関係するモノがあるかどうかなど、環境にかなり影響されます。


 昔から政治家や芸能人には二世、三世が多いですが、それも環境によるものです。

 

 環境の影響を知るために、頭の中で銀河系をイメージしてみます。

 その中の一部に太陽系があって、その中の小さな星が地球です。

 さらに、そこにほこりのように表面にくっついて住んでいるのが私たち人間です。

 そんなちっぽけな人間ですから、当然、気圧から、重力から、気温からも影響を受けています。実際に、季節性のうつや、気圧からの頭痛、体調不良で悩む人もいるわけです。

 

 

 社会、文化、職場、家庭からも影響を受けます。
 業績悪化で職場の雰囲気が悪くなりうつ状態になったことの背景には、グローバル化で海外の経済事情が遠くから影響していることだってあります。

 

 「私は環境なんか跳ね返せる、影響なんて受けていない」という感覚をもし持っている人がいれば、それは、自己愛的な自己誇大化の産物といえます。大変、恥ずかしながら、筆者も若いころは生きづらさへの反発からそう思っていたところがあります。

 

 (「すべては自分の選択だ」という考えも自己啓発やポップ心理学の世界でよく耳にしますが、科学的な心理学の力を借りるまでもなく、常識的に考えればウソだということに気が付くようになりました。)

 

 

 悔しいことですが、やはり、環境にはあらがうことができない。社会心理学者のパリ大学の小坂井敏晶教授は、人間は「外来要素の沈殿物」といっています。  

 でも、環境にあらがえない、という人間の在り方がありのままにわかると、本当の解決策が見えてきたりもします。

 

 

 では、本来、悩みの治療の順番とは何かというと、

 ・(外的な)環境調整(生き方の転換、休職、転職、転校、転勤、離婚・別居、など)
   ↓
 ・(内的な)環境調整
   睡眠、食事、休養
   ↓
   運動
   ↓
 ・精神療法、薬物療法

 と、このようになります。

 

 

 見識を持つ、お医者様(やカウンセラー)ほど、一番上から取り組みます。

 

 

 まず、環境調整、食事や睡眠の改善を指導し、抗うつ剤などのお薬を出すのは一番最後、お薬を出しても沈まないための“浮き輪”として、といったように。
 実際に、うつ病でも薬のみでいきなり治療をしても、2割程度にしか効きません。

 

 お薬が必須である統合失調症の治療でも、社会の中で仕事や役割(環境)があることが解決には重要であるとされます。歴史に残る名医たちは、クライアントが住む環境を含めて理解をし、取り組んでこられました。

 

 うつ病では、上で書きましたが、薬のみでの改善率は2割ですが、運動を行った場合は9割の改善が見られたというエビデンスがあります。それほどまでに効果があるそうです。

 ※カウンセリングも薬物療法とほぼ同じくらいの効果ですが、カウンセリングで治療すると再発が少ないとされます。おそらく物事の捉え方や生き方などの変化を促すからだと思われます。ただ、それでも実はカウンセリングも運動の効果には及ばないのです。

 

 

 統合失調症の治療などで有名な中井久夫氏が、患者から、元に戻してほしい、といわれた際に「(また再発するような)元に戻すことはできません」といった有名なエピソードがあります。

 環境を変えるような取り組みでなければ、結局元に戻ってしまって、それでは意味がないということです。

 

 

 しかし、近年は、セラピー、カウンセリングが流行した結果、
 「(環境はそのままで)悩みを解決して、環境からの影響にびくともしない自分にしてください」
 といった信じられない依頼に対して、魔法のような効果を宣伝するものが増えてしまったような印象があります。
 昔の筆者も、環境はそのままで何とかしようとしていました。

 

 でも、環境に抗えない人間の本質を考えれば、残念ながら、あり得ないことです。
 実際に派手な宣伝のセラピーを受けてみても、宣伝文句のようにはうまくいきません。結局、検証できない見立てを理由に、延々とカウンセリングを受け続けさせられたりしてしまいます。  

 

 

 自分自身の生きづらさへの反発や、心理主義的なカウンセリングブームの熱から距離を置いて、少し頭を冷やして常識で考えればわかります。

 例えば、いじめにあった子供がいれば、その子にカウンセリングを受けさせていじめに対抗できる強い子にしよう、というのはどう考えても変なことです。普通は、いじめっ子への指導、クラス替え、転校という環境への働きかけを行う対処になります。

 

 

 ブラック会社でも同様です。会社への行政等の是正の指導か、転勤、転職が対応策であり、問題は環境側にある。  

 働いている誰かがうつになったり、不幸にも自殺したりしたら、まずは「不況のせいかな」とか、「仕事が大変なのかな」「職場の雰囲気に問題があるのかな」と思うのが本来の常識です。
 最初から「心理的なビリーフのせいだ」とか「本人が抱えるトラウマのせいだ」といきなり解釈してしまうのは、どこか変なのです。

 

 

 昔の筆者もそうでしたが、セラピーに魔術、奇跡を期待してしまいがちです。しかし、様々なことを経験すると問題解決には正しい手順というものがあることが見えてきます。(正しい手順をたどるから“奇跡”も起こる。)

 

 

 技術職の方などはお馴染みかもしれませんが、問題が発生したら「切り分け」といって、まずは簡単なことから疑っていく。

 例えばパソコンがインターネットにつながらないのであれば、手前の環境から疑っていく。ケーブルが抜けていないか?WiFiが切れていないか?といったこと。

 

 いきなり「オペレーションシステムのバグではないか?」とは考えません。
 実際に、問題の9割以上は、ケーブルが抜けていた、Wifiが切れていた、といった単純な問題です。

 

 しかし、私たちは精神的な悩みを解決する際に、いきなり「心理の問題だ(オペレーションシステムのバグだ!)」と手順を無視して解決しようとしてしまいます。笑い話ではなく、カウンセリングの現場でもそうしたことは多くみられます。これは非合理な心理主義的な態度です。

 

 

 人間は環境の生き物ですから、環境から調整することが王道です。
 職場があまりにもストレスフルなら異動、転職を検討する、家庭がひどいならやはりそこから離れることです。
 それぞれ経済的な問題もありますから大変ですけど、やはりそれが一番。

 

 

 「環境調整」の次に大切なのは、「睡眠、食事、休養」、「運動」です。
 早く寝て、定期的に運動しているほうが体内で成長ホルモンが働いて、脳内伝達物質など体内環境が修復されていきます。

 睡眠がとれないケースでしたら、一時、お薬の力を借りてでもしっかりと睡眠をとったほうが良い。

 

 

 長年、ブリーフセラピー、トラウマケアにも関わっていますが、モラハラ環境に居続けたまま、睡眠リズムが乱れたままであれば、例えば、効果が高いとされる心理療法をもってしてさえ、改善はスムーズにはいきません。

 ホルモンの言葉や遺伝子コードを唱えることも大事ですが、睡眠、食事をちゃんととって運動したほうが言葉から間接的にではなく、身体が直接、内部でホルモンや遺伝子を整えてくれますから当然治りは早いです。

 (そういえば、有名なカウンセラーもブログを見ると、意識されてかされずか、ジョギングやサーフィンなどの運動をされていますよね)

 

 

 ※遺伝子のオンオフは環境に強く影響されます。内因性(遺伝性)の病である統合失調症でさえ環境の影響は大きく、工業化や近代化といった環境の影響を明らかに受けていることが分かっています。実際に近代化以前はあまり問題にされていませんでした。現代でも発展途上国では治りが早いそうです。

 

 

 筆者も思えば、自身も心理療法を受けてきました。もちろん、よくなるのですが、最後のほうのピースがハマらない(ラストワンマイル)、なかなかよくなりきらない時期がありました。

 

 でもある時期から、徐々に考え方などが変わっていったり、生きづらさがなくなったり、ということを経験しました。振り返ってみれば、同じ時期に、ジョギングやテニスなどスポーツを始めたり、職場を変えたり、睡眠時間が長くなったり、といったことがありました。

 

 それぞれはトラウマを治そうとして行ったわけではなくたまたまです。当時は、運動なんて、と小バカにしていましたので、その関連には気が付いていませんでしたが、明らかに関係していると言わざるを得ません。

 

 

 筆者も治療者の一人として、さらに効果的なセラピーを開発しようと臨床の中でも工夫や試みを重ねていますし、「どんな人でも治せるような方法があるのでは」という理想は胸にあります。実はFAP以外にいろいろな新しい可能性が見えてもきています。

 

 

 ただそれでも、環境の力は認めざるを得ないし、環境を味方につけて活用したほうが絶対に改善は速いです。
 (むしろ、新時代のセラピーとは心理主義(心に原因を求める考え)を脱し、環境の活用を前提としたものではないか、と感じます

 

 

 安定型の人は、おかしいとみるやサッと職場を変えたり、支配的な人から距離を取ったりします。環境をしっかり活用しています。
 トラウマを負っていると問題は自分の責任だとして一つの環境に執着させられたり、他人と一体になれず、環境から疎外された感覚に陥る。
 トラウマとは環境を味方につけられなくなる病、ということかもしれません。

 

 

 睡眠、食事、運動などを通じて環境を味方につけることはトラウマを解消し、生きづらさを改善するためにはとても大切です。

 

 

 補足として、具体的な方法についてです。

 運動は、有酸素運動を週に3回20分。軽くウォーキングするだけでもよいですから、続けてください。
 (これはうつ病の研究で9割の改善が見られたとされたときに設定されたメニューと同条件です。ウォーキング以外でも、自分なりのやり方で大丈夫です。ヨガなどもよいでしょう。)

 

 ひきこもり、パニック、発達障害などで運動したくても家から出るのが怖い、といったお悩みを持つ方もいらっしゃいます。その場合は、下記の記事でも紹介させていただいております。医師が考案したお手玉や、ティッシュペーパーを用いる呼吸法もあり、効果的です。
 (参考)→「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと

 

 

 食事は、一般的に言われるように3食をバランスよく採ることは必要です。ただ、それでも鉄分・ミネラル、ビタミンB群、たんぱく質などは不足しがちなので、意識して増やすかサプリメントなどで補う必要があります。特に女性は鉄分が不足しやすいとされます。

 

 グルテン(小麦粉)、カゼイン(乳製品)も腸に負担がかかり(腸は第二の脳)、脳にはモルヒネのような作用があり、できれば取らないほうが良いとされます。定型の方もそうですが、特に発達障害傾向がある方はてきめんに効果があるようです。

 

 もっと細かくとらないほうが良いものはありますが、とりあえず大物はこの二点です。グルテンは米などで、乳製品は豆乳等で代替します。アレルギーではないので、しょうゆなどに入っているくらいなら大丈夫です。最近はグルテンフリーの食品やお店も増えてきています。

 パニック発作などの症状のある方はコーヒーは禁忌です。

 

 

 あと、精神科医の神田橋(條治)先生も勧めていますが、サプリメントで、GABA、エビオス錠を服用してみてください。不安などの精神活動が収まってきます。上記にも書きましたが、鉄分(亜鉛なども)、ビタミンB群についてもサプリメントで補うとよいでしょう。

 

 睡眠はやはり、22時~2時までの間にはできるだけ床についておきたい。その4時間は成長ホルモンが出るゴールデンタイムです。


 そして、最近は睡眠負債という言葉が注目されているように、仕事の時間などを削ってでも、自分に必要な睡眠時間(7~8時間)は確保したいです。
 睡眠時間が短いままでは、悩み解決はおぼつきません。

 

 睡眠障害などで睡眠がとれないのでしたら、医師に相談して、症状が重い場合は恐れず積極的に睡眠薬の力を借りてみてください。精神科や心療内科ではなく、専門の睡眠外来を利用するのも良いかもしれません。


 睡眠に関する書籍や情報を得るなどすることもよいでしょう。入眠時間や睡眠へのルーティンを見直してみてるだけでも違います。

 (参考)→「心の健康に影響する不眠症・睡眠障害~原因とチェック、克服のための10のポイント

 

 私共のクライアントさんでも、実践されている方の治りは圧倒的に早いです。

 

 

 

●よろしければ、こちらもご覧ください。

ブリーフセラピー・カウンセリング・センター公式ホームページ

お悩みの原因や解決方法について