フラッシュバックは常にある

 

 以前担当した、ある少年のクライアントですが、フラッシュバックが起きて、自分を殴ったり、学校に行けなくなったり、という症状でお困りでした。

 

 まさに出番!ということでトラウマケアを行うことで解消されていきましたが、面白いことを言っていました。

それは、「フラッシュバックは常にあるんですよ」ということ。

 

 フラッシュバックというと、急激な過去の記憶が沸き起こるイメージがあります。しかし、その少年が言うには、群発する小さなフラッシュバックは常に頭の中にある、ということ。

 

 さながら、ずーっとマグマだまりがあるようなもの。
抑えきれない大噴火のみが「目に見えるフラッシュバック」として意識されているだけだったようです。
 私たちも、過去の嫌なことが浮かんできたり、不安になったり、将来のことが心配されたり、ということも、常にあるフラッシュバックのようなものかもしれません。
別に言い換えれば、環境の影響を受けて脳がノイズ(ノイズ)を起こしているような状態。

 

 そのように考えると、私たちにとっても、フラッシュバックはごく日常にある、身近なものかもしれません。

 ただ、健康な脳だと、そのノイズを打ち消す(キャンセル)力がある。しかし、トラウマや、発達障害や、ある種の精神疾患、ホルモンの不全などがあると、それが上手くいかなくなる。
 すると、ノイズがキャンセルしきれずに、フラッシュバックや妄想といったものとして現れる。

 

 ノイズのキャンセルと自他の区別もとても関連する問題です。
「これは自分の考えとしてタグをつける。これはノイズ(自分じゃないもの)としてキャンセルする」
ということを行えるか、行えないか、ですから。

 

 自他の区別をつける、とは概念的な問題だけではなく、脳が電気的にノイズをキャンセルする力も含まれるのかもしれません。

 

 

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「人格障害(パーソナリティ障害)」も実は存在しない?

 

 人格というと、「人格障害(パーソナリティ障害)」ということも気になります。

「いわゆる人格がない」というのであれば、「では、パーソナリティ障害っていうのはどうなの?」と疑問に思います。

 

 パーソナリティ障害とは、もともと「境界例」と呼ばれた既存の分類に当てはまらない、神経症と精神疾患との間にあるようなケースをとらえるために便宜的にできたものです。

 科学的な実験からスタートしたわけではありません。
そもそも、「パーソナリティ」というのが脳のどの部位にあるのかもよくわからないのですから、「パーソナリティ障害」というのは、何が障害されているのかもよくはわかりません。

 

 そのため、最近では、「パーソナリティ障害」ということ自体に異議を唱える医師も少なくありません。

→「パーソナリティ障害の特徴とチェック、治療と接し方の7つのポイント

 

 

 確かに、当初は使い勝手がよかったのですが、よくよく突き詰めてみると、肝心のことが見えなくなる。また、「パーソナリティ障害」と診断しても、それほどの解決策にならず、場合によっては単なるスティグマとなり、解決の妨げにもなりえる。

 

 それよりも「甲状腺などの身体疾患」「発達障害」「愛着障害」「双極性障害」「家族関係」といった切り口でとらえたほうが、問題の実態に迫れるのでは、とされます。

 

 どうやら、「パーソナリティ」とは問題の原因ではなくて、様々な問題の影響の結果、私たちが素朴に「パーソナリティ」と感じるものがゆがめられてしまう、ということのようです。

 

 例えば、養育環境の影響。とてもひどい親族に囲まれている人は少なくありませんが、その結果、イライラしたり、人を信頼できずに不安定になったり、ということはあります。

 環境が変われば、その方は穏やかになり、人にも優しくなっていきます。

 

 しかし、これはパーソナリティが障害されているのでしょうか?

それよりも、養育環境の影響、ととらえたほうがよほど正しい。このようにみても、パーソナリティとはとてもあいまいなものであることがわかります。

 

 パーソナリティととらえられるものは、環境の影響でいかほどにも変わってしまう。

自他の区別はとてもあいまいなのです。

 

 

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”人格”、”性格”というものも実は存在しない

 

 それぞれの人間には、人格や性格というものがあると考えられています。

人格や性格が無ければ、のっぺらぼうな白紙の人間になってしまいます。普段の生活でも、「あの人は~~だ」と性格を話題にすることがあります。

 

 しかし、実は、人格や性格というものの正体はよくわかっていません。脳の中のどこに人格や性格があるのかも未解明です。

 

 私たちが普段使う意味での”性格”、”人格”というものは、専門的な心理学では出てきません。シチュエーションが限定された「態度」などということでは扱われます。

「私ってこんな性格」といいますが、性格というものは固定されているわけではありません。接する人や環境に応じて性格は変化していくものです。
(「モード性格論」として社会心理学者が本を書いています。)

 

 

 例えば、「おとなしい性格」という人がいても、別の場面や接する人の前では、「積極的な性格」だったりします。

よくTV番組で、芸能人のルーツをたどる、という番組がありますが、その中で、親についてのエピソードを聞くと、意外な一面を見ることが珍しくありません。

つまり、家族であっても、その人のすべての面を知ることはできず。ある一面を見て、「この人はこういう性格だ」と思い込んでいるだけだということです。

 

 職場では仕事ができない、と評価される人が、趣味の釣りやプラモデル制作、スポーツ、手芸などで驚くべき腕前やしっかりとした見識を持つ人がいて「すごいなあ」と驚くことがあります。

 ある会社で評価の低い課長がいましたが、その人は実は投資に熱心で、一生困らないだけの資産体制を築いていた、ということがあります。
まじめに働いていて評価の高い人と、どちらが「稼げる/できる人」かわかりません。

 

状況によって驚くほど人は変わるのです。

 

 ただ、本人も「自分の性格はこうだ」と思いこまされていることがあります。
それが暗示です。別の言葉でいえば、家族といったしがらみの強い人たちの評価の内面化です。

 

 「お前はどこに行っても通用しない」といったことは最たるもので、まさに呪いの言葉です。この言葉によって、呪縛されて、どこに行ってもダメな人間であるかのように錯覚されてしまうのです。

 ピグマリオン効果などもまさにそのことを示しています。ピグマリオン効果とは、同じレベルの2クラスの生徒たちに対して、教師が「こちらのクラスは優秀」「こちらは劣等生」と聞かされて接すると、本当にそうなってしまう、というものです。

 

 いじめについての専門研究でも、前提としていじめられやすい人というのは実はいません。「誰でも、たまたま標的になりえる」ということです。ローカルルールの中で善悪が付けられて標的になってしまえば、自信を無くしてしまい、本当に周りが決めつけるような人間になってしまいます。
「やっぱり、あのタイプはいじめられても仕方がない」となるのです。

 

 人格というのも、実は周囲からの影響を内面化した束であり、そのあらわれ方も環境に依存しているものです。

 そのために、自他の区別はつきにくく、狂わされやすいのです。自他の境目の明確ではなく、その自覚もないために、自分が何を欲しているのかさえ分からなくなってしまうのです。

 

 

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自他の区別がつかない。

 

 人間は、発達の過程で、自己イメージや他者イメージが徐々に適正なものへと変化し、自他の区別が明確になっていきます。

 

 赤ちゃんの頃は、自分は何でもできる。親は神様のような存在ですが、そうしたことは修正されて行きます。他人と自分とは違うものだ、ということがわかるようになってきます。

 

 思春期に入り、心の中で「親を殺す(価値観から離れる)」、反抗期を経ることで、自他の区別は明確になっていきます。

この過程を健全に達成している人は、実は思っている以上に少ないのです。

 

 そして、何らかの形で、自己イメージや、他者イメージにゆがみが生じます。
どこか誇大化して、尊大であったり、自分のルールを押し付けたりします。

 

 自他の区別というのが、あまりつかなくなっている人が多いのです。

 

 自他のイメージがつかないとどうなるかと言えば、自分の物差しで相手を判断したり、相手の物差しで自分を下に置いてしまったり。
さらに言えば、力関係で相手から支配されることもあります。

ちょっとしたことで傷ついたり、人に執着したりするようになります。

 

 さらに言えば、自他の区別がつかないということは、相手と距離が近いので、お互いの思考がぶつかりあって、脳がショート(てんかんやヒステリーのような症状)しやすくなります。

 

 「自他の区別」は、いわゆる悩みというものの根本原因の一つではないかと最近、気づくようになりました。

 

 

 

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