人との「壁」がない人たち~発達障害、トラウマ

 

 「他者との壁がない人たち」の代表例は、意外かもしれませんが、実は発達障害の人たちです。

 

 発達障害というと、他者と関係を持つことや維持すること、理解することが難しい、とされますが、
実は、その背景にあるメカニズム、特徴は何か?というと、「内的言語の失調」ということです。

(参考)→「大人の発達障害の本当の原因と特徴~様々な悩みの背景となるもの

 

 私たち人間は、言葉によって世界に区切りを入れて、世の中を理解する生き物です。言語は人間の大きな特徴の一つです。

 

 そのため、内的言語がダメージを受けているとどうなるかといえば、世界と自分との区別が、他者と自分との区別がうまくつかなくなります。

 自分と他人との区別がつかない状態のことを「自他未分」といいます。

(参考)→「「自他未分」

 

 まさに世界や他者との壁がない状態。

 壁がないため、いつも不安(「アプリオリな不安」)です。壁がないため、他者を理解できず、空気も読めなくなり、人とうまく交われなくなります。

 壁がないため、関係を結ぶ、ということがよく理解できません。

 

 例えていうなら、「国」とか「会社」という概念がないために、交易や取引ということがうまく理解できない子供のような感じです。

 

 社会人一年生(新人会社員)がしばしば、会社内の部署の区分け、しくみなどがよく理解できず、無邪気に他の部署の協力をお願いしたら、手続きを踏んでいないと断られて戸惑ったり、怒られたりすることがあります。まさにあのような感じを、発達障害の方たちは感じているということです。
(では、部署がなければよいかといえば、仕事は混乱してしまいます。部署や区分けがあるから協力し合える)

 

 発達障害の方たちは、子どものころにいじめられたり、仲間外れにされたり、ということを経験します。

そのうち、その痛みで人がこわくなったり、嫌いになったりするようになるのです。

 

 

 私たちも、家でもそうですが、境があり、その内側は安全だから、ボーっとしながらでも生活ができます。
 もし、家のドアや壁がなければ、安心して生活はできません。逆に、外との境を意識していしまうようになるでしょう。

 

 壁がないというのは、常に不安で、外とうまく付き合えなくなるものです。

 

 実は、後天的にも同じようになることがあります。それがトラウマの影響です。
トラウマの影響を受けると、同じように「自他未分」のような状態になり、他者とうまく壁が作れなくなるのです。

 

 人間は、壁(ストレス応答系の働き)があるから、人と調和、ラポール、リズムが作れる。国と国とも国境があるから、友好な交流もできる(国際)。

 

 例えば、TVに出ている人たち、
笑福亭鶴瓶さん、といった、人見知りなく、人と接しているような人でさえ、実はちゃんと境があって、自他の区別がある。境目がちゃんと機能しているから、自動的にラポールを取って、チェックして、国境のゲートを開けて、人と交わっている。

 

 人とうまく関係が築ける人とそうではない人の違いは
ただ、「壁」がうまく機能しているか、機能していないか、の差でしかないのかもしれません。

 

 私たちの生きづらさを越えるヒントは、こうしたメカニズムを理解することにもありそうです。

 

 

→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

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人とは一体感を感じるには、「壁」が必要

 

 「人と壁を感じてしまう」「壁を感じずに人とコミュニケーションを取りたい」という悩みを持つ方は多いと思います。

 

 壁をなくすために、邪魔になっている信念をのぞいたり、フランクに付き合おうと意識したり。

 でも、それでうまくいったというのは、耳にしたことがありません。

 

 なぜなら、社会では相手とのコミュニケーションが食い違ったり、場合によっては、失礼なことを言われたり、といったストレスも多いです。壁がなく、あけっぴろげ、というわけにはいきません。
 

 もし、本当に壁がない人がいたら、その方は逆におかしい。

 他者と壁がない人について精神医学では、「脱抑制型対人交流障害」という病名がちゃんとあります。

 私たちは、他者とはしっかりと「壁」があって、それで接するのが当たり前です。
 人見知りしない、気さくな人でも、実は「壁」をちゃんと持っています。

 

 「でも、私には壁があって、それで苦しんでいる」という方は、実は、「壁」がうまく作れずに他人からやられっぱなしで、それが原因で心に痛みを感じていて、それが「壁」と感じられているのかもしれません。

 

 「壁」だと思っていたのは実はそれは「壁」ではなく「痛み」だった、というわけです。

 

 本来の人間は、自他の区別があって、壁があって、国境のようにそこには税関があって、チェックして安全だと思った人を通す仕組みになっている。それが自動的に働いてくれているので、ストレスなく〝交流”ができています。
 でも、もし、国境やそれを守る警備隊がなければ、不法侵入され、他者というのは痛みをもたらす侵略者として感じられてしまうことでしょう。

 

 壁があることは悪いことではなく、ないといけない、壁があるから、安心して、人と交流ができる。

 

 その壁を作るのが「ストレス応答系」です。
 ストレスホルモンなどが壁の役割をしていて、人との壁を作ると同時に一体感を作り、交流も行ってくれています。

 

 ストレスが来たときには、ストレスホルモンが上昇して、ストレスを中和すると同時に、ストレスホルモンの波形そのものが、人とのラポール、ペーシングを担っていて、一体感の源にもなっている。

 

 上にも書きましたが、壁をなくそうとする努力は、国境や警備隊をなくそうとするようなもので、かえって他者と交流が持てなくなってしまいます。

 

 「トラウマ」とは、国境や警備隊がぐちゃぐちゃになって、実は本当の「壁」がなくて、「痛み」を壁だと感じている状態のことかもしれせん。

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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「待つ」ことができない~世の中のありのままが感じられなくなる

 今年は、明治維新150年の年だそうです。江戸時代のころから、今のようにスマホを駆使したり、仮想通貨やドローンや、IPS細胞などといった技術や高い水準の生活になるのに、わずか150年でここまで来たことになります。

 

 ちなみに、何かの広告で目にしましたが、きんさん、ぎんさんの娘さんたちも今年で100歳だそうです。きんさん、ぎんさんが生きていれば126歳だそうですから、一人の人間の一生分の時間の中でも様々なことが起きることが分かります。

 

 日本でも、日清戦争、日露戦争、一次大戦、関東大震災に、第二次世界大戦があり、占領後の復興後があり、また震災などがあり。静かに何もなく過ごすことが難しいくらいです。

 たった150年くらいの間に、これだけのことが詰まっているのはなぜか不思議な感覚があります。

 

 実はこれは、時間の感覚に対する「錯誤」といいます。
 錯誤とは、例えば、計画や予定などで、時間の感覚を読み違えたりすることです。
 思ったよりも早く仕事が終わったり、思ったよりも時間がかかったりということはしばしば体験することです。
 「時間」というのは不思議なもので、それだけで哲学や心理学、脳科学などの研究となるものです。

 

 私たちは主観的で、時間をかなりゆがめてみてしまいます。

 

 特にトラウマを負ったり、うつ状態などになると、「時間」はかなり歪んでしまう。
 人生がお先真っ暗に見えてしまい、世の中がつまらなく思えるようになります。もう楽しいことは何も起こらないように思えます。
 (“精神的焦燥”は、気分障害、不安障害などでしばしば見られる症状です。)

 

 でも、実際は、それは歪み(錯誤)でしかなく、恐れているようなかたちで平凡で生きることのほうが難しいかもしれません。

 

 心理学者の河合隼雄が、作家・村上春樹との対談の中で
 村上春樹が、読者から小説のような都合の良い偶然は起きない、と言われたということに対して河合隼雄が、世の中には面白い偶然がいっぱいあるのに、それを書くと、小説みたいな都合の良い偶然はそうそう起きない、といわれてしまう。
 皆が「現実はこうあるべきだ(偶然など起こらない)」と信じてしまっている、と嘆きます。
 そして、悩みを直すためには「偶然を待つ力」が必要なのに、何か必然的な方法で治そうとしてみんな失敗する、とおっしゃっています。

 

 「偶然を待つ」というのは、哲学的な美談や、道徳的な心構えではありません。私たちが生きる上で実際的なことではないかと思います。

 

 事実、明治維新後、150年でこれだけ社会は変わるし、世の中も二転三転する。きんさん、ぎんさんの人生分の時間の間に、全体主義や社会主義国は隆盛して、衰退してしまうほどです。信じられないような偶然というのも珍しいものではありません。

 

 

 偶然を待てない、というのはトラウマを負ったり、精神的に不調にある時に特徴的な症状です。漠然と将来が不安になり、なんとか未来を確定させたいとして、繰り返し占いを受けたり、引き寄せの法則にはまったり、といったことが起こる。

 

 面白い逆説ですが、
 引き寄せなど、スピリチュアルなものは「反近代」「癒し」のような顔をしながら、とても「近代的(現代的)」で「トラウマティック」なのです。
 
 なぜかと言えば、偶然を待てず、とてもせっかちで、実は将来が不安で、未来を確定させようと躍起だからです。
 そして、多様性がなく、最後はすべては個人の責任だ、となってしまうのですから。
 (スピード重視(≒何かしていないと落ち着かない)、成長パラノイア(≒今の自分ではだめ)、個人主義(≒自責)など近代、そしてトラウマの特徴そのままです)

 

 河合隼雄が指摘するように、必然的な方法でなんとかしようとして、結局、失敗してしまっています。

 

 偶然を待てなくなる状態の究極が「依存症」です。
 報酬系が狂ってしまうために、今が生きづらすぎて、未来に来るはずの結果を待てない。
 実は、依存症の方たちは、我慢強い人たちで、自分で何とかしようとしすぎて、必然的な方法(お酒や薬物とか)に頼ってしまう。
 偶然を待ちましょう、というアドバイスはどうにも不確かで、他力本願過ぎるように感じてしまうのです。

 

 思えば、仕事でも趣味でもなんでも、人生は待っている時間のほうが多いのですが、世の中では、何かをしなさい、速くしなさい、という人や本はたくさんありますが、
 待ち方、を教えてくれることはほとんどありません。 

 

 むしろ現代では、待っていてはいけない(急げ)、という主張が圧倒的ですし、未来はつまらない、と負の暗示を家族や周囲の人がいれてくることも多いです。
 意識してそれらを外すことをしなければいけないのかもしれません。

 

 

 偶然を待つ、というのは世の中の裏ルール(2階建ての1階部分)の一つではないかと思います。心身が健康な状態であれば、直観的にも感じ取れるものでもあります。何となく世の中で身に着けていくものです。
 トラウマが取れていくと自然と肌で分かってくる感じがあります。

 

 

 「待つ」といっても、つまらないものではなく、明治維新150年でこれだけになったように、“環境”には「偶然」が満ち満ちている。私たちの残り何十年の人生でも、様々なことはたくさん起こってくる。つまらないなんて言っていられないくらいに。

 

 
 おそらくですが、ありのままの世の中は、トラウマに苛まれている時に見るような不安な姿ではないし、つまらないものでもないし、かといって、スピリチュアルとか自己啓発、ポップ心理学の主催者たちが主張するような姿ともまったく異なる。

 

 ありのままの世の中とは、トラウマの影響がなく、健全で成熟した状態にあるときに肌で感じるような、それは当然、個人に属しているのではなく、“環境に”広がっているもの。ありのままに見ようとすれば、あちらこちらにあると感じ取れる。

 

 なかなか言葉にしにくく、言葉にすると「偶然を待つ」といったようなもの、不安になって、必然を求めて個人に引き寄せ確定させようとすると陳腐に歪んでしまう、
 そんなものではないかと感じます。

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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新たな療法の治療ポイントは「呼吸」(代謝):新しいトラウマケアのアウトライン

 

 先日の記事では、運動や睡眠、食事など環境の大切さを書かせていただきました。
(参考)→「結局のところ、セラピー、カウンセリングもいいけど、睡眠、食事、運動、環境が“とても”大切

 

 カウンセリングやセラピーもいいけども、結局のところはそうしたものが大事だということです。

実際に、運動や睡眠、食事の改善に取り組むことは必要です。

 

 ただ、カウンセラーとしてはそれだけでは面白くない、ということで、運動など大切なものに共通の要素をセラピーの内部に取り込めないか、という野心を持ちます。

 当センターのクライアントさんはすでに体験されていらっしゃるかと思いますが、実は、昨年秋頃から、トラウマケアの中にそれらを取り込むことをし、新しい療法を作る試みを始めています。

 今回は、発見した新しいトラウマケアのアウトラインについてです。

 

 

 セラピーやカウンセリングよりも効果がある、運動や食事、睡眠などの環境要素に共通するものは何か、というと「代謝」です。人間は代謝をしなければならない。代謝が止まることが病を生む。

※以前、記事の中でも触れました。
(参考)→「更新されない記憶と時間感覚

 

 

 代謝がなく、ストレスや記憶などを更新できない状態のことをトラウマ、といいますし、人間関係でもなんでも、代謝のない呪縛をモラルハラスメントというわけです。

 悩みを解決するためには代謝機能を回復する必要があります。

 

 では、そのためのキーポイントは何か?

 

 

 従来提供していたトラウマケアの療法では、例えば、ホルモンや遺伝子を言葉で操作することをしていました。 ただ、提供する際はとても面倒で、もちろん効果はありますが、喧伝されるほどには簡単ではありませんでした。

 

 例えば、その療法の研修会で、講師をされていた、右腕ともいうべきベテランのカウンセラーの先生が、「(2年たって)初めて治療の効果を感じました」と笑っていっていたのがとても印象的だったことを覚えています。意外だった半面、共感したのを覚えています。

 ※その意は何かというと、ある遺伝子コードが見つかったときに初めて効果らしい効果を感じた、という意味で、20年近くそのトラウマケアに携わってきたそのベテランの先生でさえ、ホルモンや遺伝子を言葉で操作する方法は、提供していても手ごたえが薄かったようなのです。

 

 これはおそらく、人間というのは巨大なシステムになっているためだと思います。ホルモンや遺伝子を言葉を介して一つずつ症状を変えようとする行為は、例えていうなら森や海といった生態系を、人間が意図的に変えようとするようなものです。

 

 ある植物を植え替えよう、ある動物を棲み替えよう、というようなもので、人為的には思うようにはいきません。
 効果が出ても、生態系全体の恒常性維持のメカニズムに打ち消されたり、といったことも起こりえます。

 

 確かにこれまで難しいケースが動くなど効果はありますが、半面、ベテランの先生も感じるような難しさもありました。

(コードを唱える方法自体は素晴らしいものであり、革新的な手法です。)

 

 

 では、その難しさや煩雑さを超えるために何が必要か?
従来の方法ではない、新たなアプローチがあり得るのではないか?

 

 

 その根底に筆者が再確認したことの一つは、トラウマとは「ストレスの障害である」という視点です。

 

 従来のトラウマケアは、トラウマをどちらかというと「記憶の失調」ととらえていました。冷凍保存された記憶を解消するように働きかけることで改善させようということです。

 しかし、それでは肝心なことが見えなくなる。記憶や認知の問題にとどまらず、トラウマの影響は身体全体に及ぶからです。大きくとらえる視点が必要で、古典的なようで新しい「ストレスの障害」という視点はとても役に立ちます。

 

 ハンス・セリエなどが有名ですが、
ストレスについての研究は、トラウマ研究とは別の系統で長年なされてきました。
「ストレスによる機能障害とは何か?」をしっかりととらえ、再度トラウマを見返してみると、実は、私たちの心身の不調の根底あるものは、「ストレス応答系の失調」ではないか?ということが見えてきます。

 

ストレス応答系とは、自律神経系、内分泌系、免疫系の3系ことを指します。

(参考)→「”ストレス応答系の失調”としての心の悩み

 

 

 本来、人間(動物)にはストレスを処理するシステムが備わっています。それは、主に「副腎」などから出されるコルチゾールなどのホルモンが対処をします。しかし、長期のストレスにさらされるとコルチゾール中毒のようになり、さまざまな不調をきたします。

 

 ストレスを中和し、身体の恒常性維持を支える機能(「アロスタシス」といいます)が低下する。そのために、他人とはリズムが合わなくなり、他者との一体感が損なわれて、孤独感を感じるようになるし、人が怖くなったりし、緊張しすぎて失敗したり、社会ではうまく生きていけなくなるのです。

 

 常にストレスを警戒するようなモードになり、平常なモードに戻れないのです。コルチゾール過多になると免疫も下がるので体調も悪くなります。

 

 

 本当であれば、ストレスがあったときだけ、ストレスホルモン(コルチゾール)が上昇して、「やめなさい!」「なんでやねん!」と漫才の突込みのように反応できればよいのですが、それができなくなります。

 逆に、それができるようになれば、少々のストレスは平気になります。さっと動けるようになるし、漫才のコンビのように一体感をもって会話をキャッチボールできるようになります。
(当意即妙のやり取りを「漫才みたいやな」とよく言いますが)

 

 昔の人は、ストレスに強い人のことを「胆力がある」(≒副腎)といいましたが、まさにそれです。ストレス応答系が健全に働いていることを「胆力が強い」と呼んだのではないかと思います。

 

 ストレスの研究からトラウマを見返すと、ストレス応答系を元に戻すことができれば、私たちの抱える悩み、生きづらさを解消することができるのでは?ということが見えてきます。

 

 

 では、どのようにすればストレス応答系を元に戻すことができるのか?

上記に書きましたように、暗示の言葉を使う方法も効果があって良いけれども、なかなか難しい面もある。

 

何か方法がないか?と試行錯誤をしていた時に、昔の経験を思い出すことがありました。

 

 10年ほど前になりますが、筆者は、ある先生からボディワークを学んでいました。ボディワークとは身体からアプローチするセラピーのことです。

月一度、毎回異なるテーマで行っていて、筆者は結局、2年ほど学びました。

センタリング、リバランシングなど様々なテーマを教えていただくのですが、一番、効果を感じたのは何か?というと「Breathing(ブリージング:呼吸)」の回でした。

 

 身体の中心(センター)を感じながら呼吸をしたり、
横隔膜などのブロックを開放したり、わざと過呼吸のような状態を作り出したり(行うと、手足がしびれてきます)さまざまなワークを行います。

 

 それまではボディワークを受けてもあまり変化を感じることがなかったのですが、ブリージングの後は顕著な変化があり、受けた後、人見知りみたいな感覚(人との壁)が一切なくなったのです。

 

 直後にある会合に参加したのですが、苦手なタイプの人とも気さくに話ができたり、驚くような感覚でした。
ただ、その時は、1週間くらいすると徐々に元に戻ってしまいました。

 

 おそらく、呼吸の習慣が元の状態に戻っていったからだと今にすると思います。ただ、当時は、「良いと思ったのに、戻ってしまったか」といった程度の認識でした。

 

 その後、FAPなどいろいろな方法を試してもそれぞれ生きづらさがよくなり素晴らしいのですが、実は、ブリージング(呼吸)のときに感じた効果を上回るものはありませんでした。

 

ふと、なぜか、そのブリージングの効果を思い出したのです。

 

なぜ、あれだけの効果を感じたのだろうか?

治療が難しい人見知りが劇的によくなったのはなぜか?

 

 自分の無意識(心)にも尋ねながら、考えていると、筆者の頭に浮かんできたのは、「呼吸」というキーワードでした。

 

「ストレス応答系の失調」・・「呼吸」・・・

なるほど!

その時に、いろいろな経験や知識がつながったような感覚がありました。

なぜ、有酸素運動は効果があるのか?

なぜ、ヨーガや仏教などでも呼吸が重んじられるのか?

なぜ、マインドフルネスは効果があると注目されるのか?

 あと、「お手玉やティシュペーパー呼吸法」でうつ、パニックなどの治療に効果を上げている医師のことも浮かびました。

(参考)→「パニック障害とは何か?本当の原因と克服に必要な5つのこと

 

 

 そして、ボディワークでの自分の経験も・・・
一体感が回復したのは「呼吸」によってであったことの理由もわかったような気がしました。

 

 

「呼吸」は意識でコントロールできるし、
「呼吸」を変えることで、ストレス応答系にアプローチできる可能性は高い。

 また、これまでの療法ように言葉で一つ一つホルモンや遺伝子にアプローチしようという人為的な難しさをも超えて、「呼吸」ならば、全体の調和を保ちながら、システムの改善にアプローチができる。

 

 人為的でも作為的でもなく、心身の調和に沿っていて、自然で、難しさもない。その人の本来のところまで自然と戻っていくことができる。

なるほど、と思いました。

 

 正直に言えば、「呼吸」が重要であることは昔から言われていることで、当たり前で陳腐なことだし、それまでは、「いまさら、呼吸法もないだろう」とどこか興味がなかったのです。

 

 しかし、あらためてまわりまわってみると「呼吸」こそクリティカルなポイント(治療点)の一つだ、ということが見えてきました。

 

これが去年のことです。

 

 

さて、ここから具体的な手法に落とすことにひと手間かかります。

 

 

 クライアントさんに呼吸法を行ってもらうのか?
それも、難しそうです。
(もちろん、それでも良いとは思いますが、面倒な印象があります。あまり好きではない。)

 

 やはり、あくまで心理療法の枠組みで、科学的で、簡便で、拡張性、発展性がある方法はないか?ということを検討してみました。

 

ここは心理療法らしく、無意識の力を借りてみることを思いつきます。

 

 無意識を介して、カウンセラーからクライアントの呼吸中枢などに働きかけてストレス応答系の失調を回復しようと試みます。

 

そして、呼吸のメカニズムをもとにしてセラピーの手順を組み立てていきます。

 

 具体的な方法は伏せますが、
実際のセッションでは、呼吸法をすることもありませんし、難しい作業もありません。ただ、クライアントさんは、いくつかのことを頭で思い浮かべてもらうだけで、ただリラックスしてもらいます。そして、カウンセラーも基本的に途中は無言です。

 

 

 面白いことは、メカニズムや「呼吸」のことはカウンセラーはひとことも言いませんが、クライアントさんはしばしば、途中「呼吸がしやすくなった」「急に、鼻が通るようになった!」とフィードバックをいただくことです。

 

 ためしに、他所で、従来のトラウマケアを10回以上受けられた方に違いをどう感じるのかを聞いてみると、手ごたえはなかなか良いご様子。

 

 他のパニック障害でご相談のクライアントさんも、セッション中に身体症状が明らかに軽快するなど、これまでにはない効果が見られました。

 

 まだまだ改善の余地はありますが、今のところ、この新しい方法(ストレス応答系へのアプローチ)は可能性を感じます。
(ブログやクライアント様の感想などで、また都度、お伝えさせていただきます。(参考)→「クライアント様の感想」)

 

 呼吸がどのようにストレス応答系の失調を回復させ、私たちの悩み、不調を改善していくのかについてはまた書かせていただきます。

 

 

 

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