ニセモノのうつ病、ホンモノのうつ病

 

 トラウマを負った方に多い症状に「うつ状態」があります。比較的若いにもかかわらずうつに陥り、何度も再発することがあります。

 

 よく聞いてみると、職場のストレスが原因で、病院にもかかっていて、うつ病と診断されているといったことをおっしゃられます。

 

 そうしたクライアントさんを見ていて違和感を感じるのは、「あれ?うつ病って、そういう病気なんだっけ?」ということです。なぜなら、うつ病とは、ストレスが原因でなるものでもなければ、若い人がなるものでもないからです。

 

 そもそもは中年以降に脳がくたびれて“原因なく”陥る病気です。
 比較的若年で、何度も再発して、ストレスが原因で、といったことであれば、それはうつ病ではない、と考えるのが普通なのです。

 

 しかし、いろいろと調べてみると、どうも医師や専門家の間でも混乱があるようで、
日本うつ病学会理事長だった、野村総一郎教授も
「皮肉なことにうつ病への関心の高まりと比例して、それが大衆化し、それに応じて誤解も広がり、その弊害も大きくなっているように思える」
「うつ病を研究している専門家の間ですら、うつ病概念への安直な理解、もっとはっきり言えば誤解が蔓延しつつある」
と著書の中で述べています。

 

 

 うつ病は、精神疾患のレギュラー選手と言っても良いくらいポピュラーでありながら、簡単な入門書を一冊読んだくらいでは実像がつかめないくらい、とっつきにくい(理解しにくい)ものになってしまっています。

 

 

そのため、いつのまにか、ホンモノのうつ病と、間違って診断されるニセモノのうつ病とが混在して広まっているようなのです。

 

 

 

●ホンモノのうつ病とは何か? そのメカニズム

 

 ホンモノのうつ病とは何か?わかりやすくまとめてみると、

 

 まずうつ病とは、多くの人にとって意外かもしれませんが、ストレスが原因で生じる病気ではありません。

 

 本来うつ病は、「内因性の病」されます。内因性とは、「遺伝的体質的素因」のことです。つまり、その方の体質によるものです。体質によるものですから、うつ病は、明らかな原因がないもの(了解不能)です。

 

 もし、ストレスといった事が原因で気分が落ち込んでいる、といたように原因が明らか(了解可能)であれば、それは本来のうつ病ではありません。単なる「うつ状態(抑うつ)」です。昔でいえばノイローゼです。

 

 テレビなどの電化製品に例えてみてもわかりやすいです。

 

 長年使用していて、ある日テレビが突然故障してつかなくなる。これが「本来のうつ病」です。

 一方、操作の仕方が悪かったり、モノがぶつかって壊れたらそれは「抑うつ」であって、「うつ病」ではありません。

 

 「うつ病」とは時間とともに脳がくたびれて(理由なく)勝手に壊れるものなのです。

 

 

 原因がはっきりしている場合は、うつ病ではない他の不調とみる必要があります。どうしてこの区別が必要かといえば、それぞれに対処法が全く異なるからです。


 対処法が異なるというのは、「本来のうつ病」ではなければ、例えばうつ病のお薬を出しても上手く功を奏さないということです。

 

 ストレスが原因で鬱になったのでしたら、それは「うつ病」ではないですし、基本的にはお薬で解決するものではありません。ストレスを解消する必要があります。

 

 もう少しメカニズムから説明すると、

 本来のうつ病は、脳内伝達物質の乱れなどが原因とされます。年を取るにつれて、脳内伝達物質がうまくリサイクルされずに足りなくなってしまうのです。※諸説あります。本来のうつ病には、脳内伝達物質に働きかける抗うつ剤がよく効きます。

 

 しかし、ストレスに反応した抑うつや、トラウマが原因といった抑うつは、そもそも脳内伝達物質などが原因ではありませんから、いくらお薬を飲んでもよくなりません。メカニズムを考えれば当然の結果です。

 

 

 野村教授も述べているように医師でもこの違いをはっきりさせないままただお薬を出すだけ、といったことも多いようです。(医師でもそうなのですから、カウンセラーはさらに怪しいかもしれません)


 うつ病の簡単な入門書やリーフレットを見ても、こうしたことはほとんど説明してくれておらず、誤解を促す原因の一つとなっているようです。

 

 

 

関連する記事はこちらです

→「うつ(鬱)病とは何か~原因を正しく理解する9のポイント

→「うつ(鬱)病の治し方~公認心理師が解説する16のポイント

 

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赤ちゃんもノイズをキャンセルしているのかな?

 

 赤ちゃんをお世話したことのあるかたは経験があるかもしれませんが、赤ちゃんは、お腹がすいた、眠い、オムツを変えてほしい、など要望を伝えるためかよく泣きます。

 

 普通は、その要望が満たされると泣き止みます。

 

 

 ただ、しばしば、大人ではよくわからない理由で泣くことがあります。

なにをしてもだめ、多くの場合、母乳を与えて何とかしのぐ、ということも多いのではないでしょうか?

 
 それ以外に、ビニール袋をクシャクシャして音を出したり、鈴を鳴らすと泣き病むことがあります。

 お腹の中で聞こえる音に似ているから落ち着くのではないか?と言われています。

 


 ただ、ふと思うのは、赤ちゃんもノイズを受けていて、それで泣いていることもあるのかも?ということです。

 

 音(ノイズ)を聞かせると、そのノイズでノイズをキャンセルさせているのかもしれない、と感じることがあります。

 


 著者の親せきの子どもも、1、2歳のころに、ちょっとボールを落としただけで、「ああ」と自分を激しく責めるそぶりを見せていた時期がありました。

 そんな幼いころに、自己否定や、自分を責めるような高度な心理的な在り方を外から学ぶ、ということはできないでしょうからは、とても違和感がありました。

 その子はとても繊細な子だったので、もしかしたら、外からのノイズ(支配とか)の影響を受けていたのかもしれません。

 


 私たち大人も、ふとよぎる思いにどうしようもなくなる時があります。ストレスで苦しい時ほど、通勤中はウォークマンなどで、音楽をずっと聴き続けたい衝動に駆られるときがあります。

 

 

 通常は、たんに音楽で気分を盛り上げて、ということだと解釈していますが、もしかしたらそれもノイズをキャンセルしようとしているのかもしれません。

 

 

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ノイズをキャンセルする言葉

 

関係念慮(妄想)をキャンセルする方法はあるのでしょうか?

自分でできる方法が一つあります。

 

それは、

「ノイズのキャンセリング」という言葉を、目を開けて頭の中で繰り返し唱えるというものです(1セットは7~8回)。

 

これまでは頭の中で声が聞こえたり、酷い状態であった人でも徐々に収まって、凪になっていきます。

 

 

人の考えが気になる、とか、頭がグルグル回る、といった場合にもよろしければ、お試しください。

 

 

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「接する」のではなく「信じている」

 

 トラウマを負った人の特徴として、自分や他人、世界に対して、直接ありのままに「接する」のではなく、「信じている」ことがあります。

 
 理不尽な経験をしてきていて、世の中や人間というものは、安心安全ではない、と感じています。

 

 そのため、直接「接して」はあまりにも危ない、ためにありのままの他者、世界に、ではなく、いったん抽象化(ファンタジー)したものを「信じる」ように接しています。

 

 

 そのため、他者や世界について、見たくないものは回避しようとします。信じるかどうか?なので、抽象化したイメージにそぐわないととても腹が立ったり、こき下ろしたりするようになります。

 

 ありのままの他者や世界は、良いものも悪いものもほどほどに同居しているものですが、そうした真ん中がありません(二文法的認知)。

 

 例えば親に対しても、ありのままに見ればよいわけですが、抽象化したイメージとしての親(親´)と接し続けています。

 ですから、実態としては愛情が持てないご両親だったり、過去には理不尽なことを重ねてきていても、それがわかっていながら、イメージとしての親(本当は愛してくれるはず)をずっと追い続けて、イメージ通りに動いてくれない親に対して、腹が立って、小突いてみたり、口論になったりするのです。

 

 
 自分自身に対しても同様です。自信自身に対する時も、ありのままの自分と接するのではなくて、抽象化した自分(自分´)を信じています。

 スティグマ感を背負い、罪悪感があり、自分に自信がありませんが、それらは、周囲から背負わされた抽象化されたイメージです。

 

 ありのままの自分はとても汚れていると思いこまされているために、抽象化したイメージ(少しマシな自分)を信じるようにしているのです。

 

 そのイメージを信じてしまうので、いつまでも、自分に自信が持てないままになってしまいます。

 

 

 「自他の区別」がつかない原因の一つは、抽象化したイメージを通じて世界や自分と接しているからです。

 イメージだから、区別や距離が取れないのです。現実の自分や他者をありのままに見れれば、区別は距離は明らかにとることができるのです。

 

 

 

 このことに気づくだけでも、結構変化が生じます。
 ありのままの他者を見る、ありのままの世界を見る、ありのままの自分を見る、ということができると、生きづらさは、ぐっと良くなってきます。