秘密や恥、後悔がローカルルールを生き延びさせている。

 

 先日の記事でも書きましたが、秘密というのは、ローカルルールにとっては檻のような役割を果たします。檻は何重にも取り巻き、私たちを縛るようになります。

 この秘密というものは、なかなか厄介です。

 

 ローカルルールとは、公を騙った私的な情動のことです。

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 そのため、広く知られてしまって、「それ、おかしいんじゃないの」とか「違うよ」とツッコミが入ったり、疑問を呈されたりすると簡単に壊れてしまいます。ですから、それを他人に話さないように秘密にすることでローカルルールは延命できるようになります。

 

 ローカルルールそのものではなく、ローカルルールによって「悪」「恥」とされたものについて、他人に話せなくすることで、ローカルルールはもっともらしく生き残ろうとするのです。

 

 いじめでもそうで、多くの場合は、いじめられていることを家族に話せなかったりする。話せるような環境であれば解決に大きく前進するのですが、家族にもいじめの陰湿さが及んでしまうのではないか、ということでそれができなくなる。

参考)→「いじめとは何か?大人、会社、学校など、いじめの本当の原因

 

 レイプといった犯罪についてもそうで、それ自体もひどい出来事ですが、そうした犯罪を犯す側が持つローカルルールの呪縛(秘密の共有、自分が穢れた、など)を被り続けるという側面もあります。そして、人に話せないということがそのローカルルールを延命させてしまうのです。
 

 機能不全家族において観られる現象に、「ファミリー・シークレット」というものがあります。親が理不尽な振る舞いや、依存症、場合によっては虐待といった家族の中では外に出したくない秘密というものがあった際に、子どもがそれを自らの秘密として背負い続けてしまう、ということです。

参考)→「<家族>とは何か?家族の機能と機能不全

 

 家族の病気や死といったものを、子どもに言わずに隠す、という行為も、ファミリー・シークレットになる場合があります。

 秘密があることで、社会との関わりが限定されたり、断絶したりすることや、自分そのものも普通の人とは違う、という感覚を持つことで、ローカルルールに縛られ、生き生きとした生活を妨げられてしまう。
 

 さらに、親自身が、ローカルルールに縛られていて、なんでもないことでも秘密にしたったり、世間に情報が漏れることを極度に恐れたり、というケースは結構もよくあります。もちろん、個人情報保護が重んじられるから、ではありません。そうしたことを越えて、過剰に秘密にしたがったりする。
 

 親に影響されて、子どもも知らず知らずのうちに、なんでもないことを秘密とするような傾向を持たされるようになります

 親のローカルルールの延命を子が手伝わされたり、あるいは自分もその呪縛にかかったり、といったことが起きてしまいます。

 

 

 さらに、そうしたことを強化するトラップとしてあるのが「恥」という発作のような感覚です。恥とは、本来、共同体の規範から外れたときに生まれる感情を指します。
 
 規範からみておかしな行動をとったときに「恥」を感じる、というのは自然な感情です。

 しかし、「共同体の規範」というのもが、「本当の社会」ではなく「ローカルルール」がすり替わり、本来ならば「恥」とする必要のないものまで、「恥」として感じさせるようになります。

 例えば過去の失敗や、ちょっとした言動についても、後悔とともに、「恥」の感覚が湧いてくる。
 

 その恥の感覚というのは、感情というような生易しいものではなく、さながら発作のように強くわきおこってきて、その場から飛び跳ねたくなるような、
逃げたくなるような衝動に襲われます。ついつい、恥の発作をそらすために、独り言をつぶやいたりしてしまう。

 

 自分の過去の言動全てが恥であるように思えてきて、関わった人と再度関係を持つことをためらったり、億劫に感じたいさせられるようになります。

 

 実は、これは、ローカルルールに基づく「恥の発作」です。

 

 本当の恥ではありません。造られたものです。
造られたものなのですが、その恥の感覚が起きないように(寝た子を起こさないように)起きないように行動してしまう。
 自分の中にある恥の感覚を刺激されるようなものがあれば、それを避けてしまったり。

 

 
 もう一つ、ローカルルールを延命させる檻としてあるのが「後悔」です。

 「あのときもっとこうしておけばよかった」とか、「あんな行動を取らなければよかった」というような感情です。

 後悔についても、発作のように強く湧いてきて、目を閉じて頭を抱えたくなるような感覚に襲われます。

 これも恥と同じく、それを刺激するようなものは避けたくなります。

 刺激を避けることで結果として知らず知らずのうちに行動は大きく制約されるようになります。 

 

 繰り返しになりますが、ローカルルールとは、偽のルールです。本物の常識ではありません。ですから、その存在の根拠はかなりあやふやで、脆いものなのです。

 しかし、その周囲には、「秘密」というものであったり、「恥」「後悔」といった強い感情といった檻によっってぐるぐるに守られていて、簡単に壊れないような仕組みになっているのです。

 ただし、メカニズムが分かればアプローチしていくことが可能になります。

 
 ローカルルール(人格)の影響を壊して、自由になっていくためには、こうした「恥」「後悔」そして、「秘密」というのものも壊していく必要があるのです。

 

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 

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バレていない欠点があって、それを隠してコソコソ生きている感覚

 

 愛着が不安定な方、トラウマを負っている人によくあることとして、「自分には他人にはバレていない欠点がある」という感覚があり、「それがばれないように隠してコソコソ生きなければならない」という意識があります。

 
 実際に他人が聞いてみたら、なんてことはない話だったりします。

 しかし、当人の中では、それは致命的な欠点であるかのように思わされていて、ずっと秘密にしなければ、と考えているのです。

 

 これは、ローカルルール人格によってなされていることです。

 なんでもない出来事がさもその方にとって致命的であるというニセの常識を強いてきます。

 

 

 恥や後悔といった念が湧いてきます。この念は、本当の感情ではありません。ニセモノの感情ですが、とても強く、全身がしびれるようにめぐります。

 その恥や後悔から逃れるためには、ローカルルール人格の言うことに従って、世間の目から逃れなければならない、と感じさせられます。
(当人にとっては、自分の考え、常識だと感じられます。)

 その結果、ローカルルール人格が延命してしまい、バレていない欠点というのは永続することになるのです。 

 

 

 実際にセッションでも、かなり長く行っているにも関わらず、そうした秘密というものが出てくることがあります。ようやくローカルルール人格の呪縛が解け始めた頃に起こります。

「先生、実は・・・」ということで話を始めますが、一般の方が聞けば、「誰にでもあるから大丈夫ですよ」「あなたはなんにも悪くないじゃないの」と思う、なんてことはない話だったりするのです。

 でも、本人にとっては重大な秘密を暴露する、というような深刻さがあります。

 

 造られた欠点を他者に話す、ということはとても大事なことで、それを通じて、ローカルルール人格が生き延びる根拠(正統性と協力)が崩れていきます。

 しかし、ここに至るまでにはかんたんではありません。
 この秘密の暴露がなされるまでには、かなり厄介なトラップがあることもしばしばです。

 

 特にローカルルール人格の存在に気がついていない、あるいは、ローカルルール人格がまだまだ元気なときは、仮にその秘密の暴露がなされたとしても、ローカルルール人格の邪魔が入り、「誰にでもある話だなんて、ちゃんと話を受け止めてくれなかった」とか、「自分をおかしな人間を見るような目で見た」といったようにニセの文句を言わされたりすることがあります。

 それによって、「やっぱり、自分の欠点は世間の目からは侮蔑にさらされるのだ→秘密にしなければならない」ということにされてしまいます。

 

 ローカルルール人格というものの存在や影響に気づくことは大切ですし、その上で、自分の中にある、植え付けられたローカルルールとそれによって造られた秘密というものを白日にさらしていく、ということは悩み解決のためには大きな一歩になります。

 

 秘密というと大きなことのように見えますが、コンプレックスといったものなどもそれに当たります。

 「容姿のコンプレックス」
 「学歴コンプレックス」
 「過去に仕事でうまく行かなかったコンプレックス」
 「人間関係でうまく行かなかったコンプレックス」
 「いじめのコンプレックス」
 「恋愛のコンプレックス」
 「人生に失敗したというコンプレックス」
 などなど

 こうしたことは、実は事実ではなく、ローカルルールによって造られたものであるということです。

 

 ただ、当人にとっては、「事実なのだから、コンプレックスがあるのは当然だ」とおもっていて、見過ごされていますが、実はそれらは造られたもので、ローカルルール人格が延命する根拠にさせられています。
 
 
 もとを辿れば、ローカルルールとは外部から感染するものですが、あるときに人格単位でローカルルールに感染します。それから雪だるま式に、新しいコンプレックスを作り出していって、肥大化していく。
 

 気がつけば、「欠点を隠して、コソコソしている」感覚を持ちながら生きている、というようなことが起きているのです。

 

 

(参考)→「ローカルルールとは何か?」 

 

 

 

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