ニセ成熟(迂回ルート)としての”願望”

 

 (トラウマを負い)生きづらさを抱えている人は、大きな願望をもちます。そして、それをかなえた先に自分の人生があり、今ここには自分の人生はないように感じます。

 

 「引き寄せ」などの、スピリチュアルなものにもとても興味をもちます。興味を持ちながらも、科学的な目もちゃんと持っています。

 

 「目の前のことに集中しろ」といった助言には強い嫌悪感を覚えます。

 

 

いつも強い焦燥感を感じています。

「何かをしていなければならない」

「努力していなければならない」

「充実していなければならない」

「無駄に過ごしてはならない」

などなど。

 

 休日には、用もないのに繁華街に出たり。仕事が終わっては、夜の街に出てみたり。

 何も達成していなくても、何かをなしたような気がすることをしてみます。

 カフェや、ホテルのラウンジも好みます。何者かになった気、充実した気にさせてくれるからです。

 

 でも、そこを離れると、また焦燥感を覚えます。さながら、依存症患者のようです。

 

 世の中と真正面から取り組めばいいということはわかるのですが、なぜか回避してしまいます。

 ものすごく努力しているのですが、肝心な核心は回避してしまいます。そのため、努力しても達成することはできません。

 

 何をしても積み上がる感覚がありません。

 

 しかし、大きな願望があります。(逆に、未来を描けなくなる方もいます。)

 

 願望は大きければいいと、手帳に「金持ちになる」「社長になる」「理想の人と結婚する」といったことを書きますが、いつまでたっても叶う様子はありません。今年こそは!と意気込みますが、楽しいのは年末だけで、年が明けてみれば、なんのことはありません。

 

 新しい願望実現の本を買って試してみますが、ことごとく失敗します(儲かるのは著者だけ?)。

 

 成長しようという欲はとても高いです。しかし、積みあがる感覚はありません。なぜか、横へ横へとスライドしていくような感覚。そして、現実では結果がでず、いつの間にやら「ダメな人」扱いされるようになります。

 

 自分はもっとできるのに、という直感だけが頼りです。

 

 

 本当はできるのですが、認めてくれるものも人もいません。どこかに自分のことを認めてくれる人がいるに違いない、という感覚があります。

 

 とても高尚な人間になろうともします。

 

 とくに、「汚い大人」「感情的な人間」には絶対になりたくありません。「自分の親のようにはなりたくない」と思っています。

 

 汚い大人の弱点を、努力で越えようとします。セラピーを受けて、自分のネガティブな感情をすべて取り除きたくなります。「怒らない人間になりたい」「ストレスを受けても動じない人間になりたい」とおもいます。

 

 実は、これは、「ニセ成熟」という現象です。一般のルートで大人になることは生きづらくてできないために、それを回避して迂回ルートで成熟を果たそうとするのです。

 

 願望をもったり、高尚な人間になろうとするのも、実は、それが現実と付き合う方法なのです。真正面から向き合うことができないために、願望を通じて世の中とつながろうとするための行動です。実はその願望自体は、そもそも自分の本心が望んでいないことであることも多いのです。※決して逃げではなくて、努力であり、工夫なのです。

 

 しかし、ニセ成熟では、本当の意味で世の中とがっぷり四つで組めないために、様々な副作用をもたらします。

 

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心に聴くコツ

 「心に聴く」という方法については、「うまく聴けない」という方も多いかと思います。

 

 

 私たちの経験から、さらにコツを記してみました。

 まず、心に聴く、というのは、特別なことではありません。実は誰でも雑念(支配の邪魔)を交えてであれば、毎日行っていることです。

 

 例えば、「今日はご飯何しようかな?」とか、「この服買ってもいいかな?」と内言で心の中で自問自答することがありますが、まさにそのようなものです。

 荘厳なお告げが降りてくる、というイメージをされている方がいらっしゃるかもしれませんが、そういうものではありません。

 

 では、普通の自問自答と、「心に聴く」の違いは何かというと、(支配の)邪魔を排除するかどうか?ということです。

 

 最初は邪魔がたくさん入ると思いますが、「邪魔されていないか?」「心とつながっているか?」を繰り返し確認してみてください。

そして、何より気楽に聞くことです。

 

 ただ、最初は、邪魔されているかどうかもよくわからないまま、返ってきた答えに振り回されることがあります。

 心の答えには特徴があります。その特徴の雰囲気がわかると、邪魔による答えか、心の答えかを区別することはできます。

 

 例えば、邪魔による答えとは、

・俗である

・そもそもの問題設定を真に受けた答えである。

・(自分はダメだ、という前提の上で)具体的な行動を示す。

 

といったことがあります。

 

 一方、心の答えは、

・問題設定自体が正しいかどうかを示してくれる。

・自分を悪者という前提から始まらない。

・正しい、間違っているがない。

といったことが挙げられます。

 

 例えば、「仕事ができるようになるにはどうしたらいいですか?」と心に聴いた時に、

 「本を読みなさい」「研修に行きなさい」などと返ってきたとしたら、その答えは、邪魔によるものの可能性が高いのです。なぜなら、「私は仕事ができない」という前提を受け入れたものだからです。

 

 邪魔を排除した後に聞くと、

 「なにもしなくていい」と返ってきたりします。つまり、「あなたは仕事ができるよ。仕事ができない、というのは支配者がそう思わせているだけだよ」ということを教えてくれているのです。

 

 私たちが問題とすることの9割9分は、実は問題自体がないことがほとんどです。単なる暗示なのです。

 

 「心に聴けない」ということも、もしかしたら暗示の一つなのかもしれません。

 

 

●それは本当に自分の願いか?

 

 「お金持ちになるには、どうしたらいいか心に聴いてみてほしい」

 「仕事ができるようになるにはどうしたらいいか、確認したい」

とクライアントさんから依頼されることがあります。

 

 

 もちろん、心に聴いて、「~~したほうがいいですよ」とお伝えしてもいいですし、そうすることもあります。

 

 ただ、意外なことに多くの場合、心の答えは「何もしなくていい」という答えが返ってきます。どうしてか?確認していくと、「仕事ができない、というのは幻想だ」「お金がないというのは幻想だ」という理由が返ってきます。

 

 つまり、どうやら、そもそも、頭で思っているその願いは、自分の本心ではないようなのです。

 

 私たちは、よく「夜中のラーメン」と呼んでいます。

 「ああ、ラーメン食べたい!」と夜中に感じることってないでしょうか?そして、食べたら強烈な罪悪感に襲われます。「本当は食べないほうがよかったのに!」と。

 

 食欲がわかりやすいですが、本当の食欲ではないものを食欲としてとらわれてしまうことはしばしばあります。

 本当に食べたいものがよくわからない、ということもしばしばあります。なんでもいい、というよりわからない、といったほうがいい状態です。

 

 

 心に聴くときには、そもそも聞こうとしていること自体が本心か、を聞いてみることです。

 そして、多くの場合、本心ではないことがほとんどです。

 

 

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