トラウマの多くは、単発よりも長期間のストレスによってもたらされる

 

 トラウマを負った人が、その場で対処できない、理不尽さに「いいかげんにしなさい!」とつっこめないことの原因の一つは、ストレス応答系(ホルモン)の失調にあります。

 

 
 もともと動物のストレス応答系とは、HPA軸(視床下部‐下垂体‐副腎)と呼ばれるシステムで成り立っています。
つまり、ストレスを受けた際に視床下部から下垂体に、下垂体に指令が下り、グルココルチコイド(ストレスに対処するためのホルモン)が放出され対応されます。

 本来、動物のストレス応答系とは、急激なストレスに対応するためのものです。ライオンに襲われると急激にホルモンを放出して逃げ去り、またリラックスした状態に戻る、といったことです。

 

 

 人間も同じタイプのストレス応答系を受け継いでいます。
そのため、意外なように思われるかもしれませんが、災害とか、単発のショック体験といったことについては、(もちろん、事後のケアが必要にはなりますが)人間(動物)は強い。


 一方、ずーっと長期間ストレスにさらされ続けることについては、動物のストレス処理系は慣れておらず、弱い。
継続したストレスにさらされると壊れてしまいます。

 

 ラットを使った研究で、ネグレクトを受けたネズミのストレス処理システムが壊れるのは、それが一回ではなくて、一定期間継続されるから。

 

 

 シェルショックといって、第一次世界大戦から復員した兵士が、音に反応して体が飛び跳ねる障害を負ってしまったのも、一回の砲弾の音でトラウマを負ったというよりも、塹壕の中で長期間恐怖にさらされながら、砲弾の音を聞き続けたから。

 

 

 もしかしたら、誤解されている方がいらっしゃるかもしれませんが、ストレスのセンサーが壊れるの原因の多くは、一回の衝撃によって、というより長期間のストレスによってと考えられます。

 

 
 もともと人間のストレス応答系は長期間のストレスへの対応は不得手ですから、ストレス応答系のセンサーが壊れてしまう。あるいは、別の言い方をすれば、長期間のストレスに適応するようなシステムになってしまう。

 

 

 カウンセリングでも、ほとんどのケースが単回性のトラウマではなくて、複雑性(長期間にわたる)トラウマです。長く理不尽な環境にさらされることでストレス処理系が失調をきたし、現在の理不尽さにその場で対処できなくなってしまう。その場の出来事に初々しく反応ができなくなってしまいます

バカにされたり、いいようにされたりしてしまうのはこのためです。

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

●よろしければ、こちらもご覧ください。

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