トラウマとは、“長期のストレス”のことである

 

 スタンフォード大学のサポルスキーが書いた本に
 「なぜシマウマは胃潰瘍にならないか」というタイトルの本があります。

 タイトルのように、ライオンに襲われるような経験をするシマウマは不思議なことに胃潰瘍にならず、なぜ、平和な環境に住む人間に胃潰瘍が見られるのか?といったことなど、ストレスについてかかれた本です。

 

 ストレスに関する研究で分かっていることですが、動物は、単発のアクシデントには案外強い。ストレスホルモンが急上昇して対応し、アクシデントのあとは体を震わせるなどして負荷を除けば、普通に生活することができます(できるようになっています)。

 しかし、そのシマウマも、狭いゲージに長い期間に閉じ込めるなどのストレスでは不調をきたしてしまう。
 動物にとってストレス応答システムは、長期間のストレスには対応するようには作られていない、ということです。

 

 これはシマウマに限らず人間も同様です。
 人間のストレス応答システムも、長期のストレスに対応するようにはできていない。胃潰瘍になるのは、長期のストレスを浴びてしまうからです。

 
 トラウマに関連する本でもあまり触れられておらず、意外なことですが、単発のアクシデントには人間も比較的強いものです。

 シェルショックなどトラウマが注目されるようになったのは、第一次世界大戦ですが、それまでの戦争と違って第一次大戦では、長期の間、塹壕の中で砲弾の音やライフル、マシンガンに怯えながら過ごすことを余儀なくされました。
 人間はそれまでも戦争がありましたが、トラウマがさほどクローズアップされてこなかったのは、ストレス応答システムの特徴もその原因の一つではないか、と考えられます。

 

 もちろん、鉄道事故など大きなハプニングで、ストレスホルモンの閾値を超えるような大惨事はPTSDになりますし、レイプなどの単発の惨事を甘く見ることはできません。
 第一次大戦ごろから一つの兵器の破壊力が大幅に増して、単発であっても閾値を超えるストレスレベルであることも要因として見逃せません。

 

 ただ、上に書いた動物のストレス応答システムの知見からすると、もしかしたら、単発の大惨事の影響は、その出来事によるものよりも、周囲の無理解などその後のケアが不足して、長期にストレスを反芻し続けることでもたらされることなのかも?と思考を巡らせることができます。

 

 

 現代の私たちの多くにとってトラウマとは、「長期のストレスによるストレス応答系の失調」、のことを指します。「母親にぶたれた」とか、何か特定の出来事のことではありません。

(参考)→「トラウマの多くは、単発よりも長期間のストレスによってもたらされる

 

 

 ストレス応答系とは、自律神経系、免疫系、内分泌(ホルモン)系の3系のことを指します。

 

 長期のストレスを浴びて、ストレス応答系が失調することで、

  記憶に障害が出たり、
  テンションを合わせることができず対人関係を築き、維持できなくなったり
  緊張しすぎたり
  仕事がうまくいかなくなったり
  眠れなくなったり、
  体に不調が出たり
  など
 様々な機能障害が生まれるのです。

 

 トラウマとは長期のストレスのことですから、特定しようとしても意味はありませんし、治療にはつながりません。

(参考)→「トラウマを特定する必要はない。

 

 例えば、
 カウンセリングでは
 トラウマによると考えられる症状が出ているのに、
 過去について詳しくお話を聞いていても、特に顕著な問題がないことがよくあります。

 そのクライアントさんたちにとっては、家庭や学校は緊張の高いストレスフルな環境であった。一日だけであれば大したことがないけども、365日何年も続いてストレス応答系は失調をきたした、ということが考えられます。

 これが多くの方(ケース)にとってのトラウマです。

 そのため、子どもの前での激しい夫婦げんかなどは一発レッドカード(間違いなくトラウマになる)になります。最近では、こうした子どもの目の前で不適切なことを行うことを「面前虐待」というそうです。

(参考)→「夫婦げんかは一発レッドカード

 

 

 トラウマが単発のアクシデントととらえてしまうと、問題のありかは見えず、「単発のアクシデントはあったに違いない。忘れているだけだ」とされてしまいます。それをカウンセリングや催眠などで無理に掘り起こそうとすると、フォルスメモリー(過誤記憶)といって、偽の記憶が脳ででっち上げられてしまうことが起こります。

 

 実際海外では過去に、「私は親から性的虐待を受けた」とカウンセリングで掘り起こされても、証拠が見つからずに、大問題になって、逆に治療者側が裁判で訴えられた、ということがありました。
 これも、トラウマとはなにか?を誤解したことによるものと考えられます。
 (もちろん、実際に性的虐待があって、ごまかされているケースもありますからケース毎に慎重に見ていく必要があります)

 

 現代はストレス社会といわれます。
 長期のストレスを浴びる環境はそこここにあります。

 また、「それほどひどい家庭ではなかったけどなあ」「トラウマといわれてもこれといって・・」
 といった方でも、
 過去を振り返って、ストレスフルな環境が続いていた、としたら、トラウマを負っているということは考えられます。※極端に言えば、実は現代でトラウマを負っていない人はいないともいえます。程度の差です。
 

 

 トラウマとは、長期のストレスとそれによるストレス応答系の失調のことである、との視点を持つと、自己理解や解決の助けになります。

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

 

相手の感情が、ありのままにはわからない。

 

 

トラウマを負った人が対人関係でうまくいかない理由としては、相手の感情が、ありのままに理解できない、ということがあります。

 

 
人間には、好意や信頼といった良い感情の一方、嫉妬や反感、また自己愛という面倒くさい部分もあります。
それは、人間だから当然だし、どんなに成熟した大人でも両面を持ち合わせています。

人間のコミュニケーションのプロトコル(コツ、手順)は、そうした相手の1階部分をうまく尊重して、2階部分で楽しく過ごすためにできています。

(参考)→「世の中は”二階建て”になっている。

 

 

 

1階部分とはつまり、反面、嫉妬や反感、また自己愛という面倒くさい部分
2階部分とは、好意や信頼といった良い部分 です。
挨拶をしたり、
根回ししたり、
本音と建て前を使い分けたり、
相手をほめたり、
まず同意を取ってから何事も進めたり、といったようなことをするのはそのためです。

 

 
トラウマを負った人もそれは頭ではわかっていますが、過緊張過ぎたり、距離がうまく取れなかったりして、機能しません。いきなりなれなれしいような入り方をしてしまうこともしばしばです。

 

 

 
例えば、仕事で接客する場面でも、
声のトーンから、話し方が、妙に距離が近いようななれなれしいような話し方になってしまったり。
相手の同意の段階を飛ばしてしまったりすることがあります。

 

 
何かをお買い求めの人に対しても
「はい、提供できます」というのと、
「よろしければ、提供させていただきます」
というのでは、ちょっとした差に見えますが相手の受け取り方は大きく違います。

 

 
常に主体を相手に渡しながら話をしていれば、相手はリスペクトされていると思いますが、自分を主体に話をしつづけると、相手は押し付けられているように感じられます。

 

 

ちょっとわずかなズレが反感を生んでしまって、それに気が付かずに、トラウマを負った人は「なぜうまくいかないのか理由がわからない。自分は呪われているのかも?!」という絶望感に至ります。

 

これは、マナーの問題として、いくら研修などで学んでも身につくものではありません。

トラウマを負った人たちが持つストレス応答系の失調の影響でもありますし、もう一つは、人間観も影響して起こる現象だからです。
トラウマを負った人は、先日も書きましたように「人間とは立派なもの」ととらえています。

(参考)→「トラウマを負った人たちの独特な人間観

 

 

 

「未熟な感情などは、人間は克服してしかるべきだ」といった形で、一階部分の面倒くさいやり取りは無視して人に接してしまいがちです。
「人間は立派で、自己を啓発して真実に気が付けば、やがて理想的な高みに至れるもの」ととらえて、自分にも厳しく接しています。

だから、根回しや本音と建て前などはくだらないものとして無視して、単刀直入にやり取りしてしまいます。

 
しかし、普通の人たちは、「落語の世界観」です。
相手を尊重しあうワチャワチャとしたじゃれるようなやり取りが必要なのです。

 

 

そこに単刀直入なやり取りでこられると違和感を感じてしまいます。

 

 

 
また、トラウマを負った人にとって自分は幼く見え、相手は立派な大人に見えています。
だから、人生経験が豊富な紳士淑女であっても、その方たちの中にも傷つきやすい自己愛が潜んでいて、傷つけないように丁寧にリスペクトを伝える前振りが欠かせないことが、実感として分かりません。

 

 

「大人は何でもできるくらい成熟している。(失礼なことを言っても)傷つかない」と思い込んだ幼い子が、大人に対して率直に接するかのような接し方をしてしまい、相手を怒らせてしまうのです。

 

 

怒られると、湧き上がる恐怖を抑えるために、今度は「こき下ろし」の段階が始まります。
「何、あの人は!よほどおかしいんじゃないの?」とか、「モラハラか、支配者じゃないの?」といって、
モンスターに見える相手をこき下ろす一方で、自分を責めて反省大会をしてしまいます。

これらは、トラウマによって人間観が独特に発達して歪んでしまっていることが原因です。

 

 

 

さらに、ストレス応答系の失調も影響して、相手と波長を合わせることができませんから、妙にへりくだったり、合わせすぎてへとへとになってしまいます。
気分を切り替えて自信をもって人と接しようと思うと、尊大になったり生意気になったりして、また相手を怒らせてしまったりするのです。

 

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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お悩みの原因や解決方法について

 

他人といると意識は気をつかっていても、実はリラックスしている

カウンセリングやセラピーにおいては、しばしば関係を切って孤独にあるときに変化が起きる、とする考えが唱えられてきました。

家族療法という手法も存在するように、関係は人間を拘束し、支配する。そこから自由にならないといけない。

そのためには、呪縛にきずき、そこから解き放たれ、本当は立派な人間であることに気が付かないといけない。

そのような考えはよく耳にします。

 

 

確かに魅力的な考えで、説得力もあります。ただし、実際に実践してみると苦しくなってくる。すぐに限界がやってきてしまうのです。結局は、もともとそれができる人にとっての「強者の論理」であることがわかってきます。

 

 

 
一方、関係が人を癒す、という考えもあります。人の中でこそ人は癒されていく、という考えです。

 

 

いずれが正しいのか、理屈で論じてみても神学論争になってしまいがちです。

 
最近は、スマートウォッチ、活動量計と呼ばれるものを用いて、簡単に心身の状況を自分でモニタすることができる便利な時代になっています。歩いた歩数や睡眠の状況はもちろんですが、最新のものでは、脈拍数、血圧などもわかります。自分がリラックスしている状況か、そうではないかも確認することができます。
あるクライアントさんが、活動量計を購入し、身につけていました。そして、面白いことを発見したと報告してくださいました。

その方も、対人関係などで大変な悩みを抱えていらっしゃいます。他人といるといろいろな気を使ってしまいますから、一人でいるほうが楽だと思っていました。

しかし、その方が活動量計をつけて状態をモニタすると意外な結果が出ました。

 

 

それは、連休などで一人でいるときは血圧や脈拍も高く緊張している。逆に、人と一緒にいるときのほうがリラックスしている、というものでした。

本人も想像していたこととは逆の結果が出たのです。
やはり、一人の時よりも、他人といたほうが実は人はリラックスをしている。でも、本人は逆に感じていたりもするのです。

 
もちろん大規模な量的調査ではありません。ただ、数値で確認できたことは大きな気づきをもたらせてくれました。

 
解釈できることとしてはおそらく、

一人でいるときはたしかに気を遣わずに気楽ですが、自分を悩ませてきた親や過去とつながってしまって、ストレス応答系のシステムは乱れる。そのために交感神経が優位になる。
一方、気楽な他人といると、気は使うかもしれないけれども、でも、利害関係のない人たちとつながって、同調することで、ストレス応答系は整う。副交感神経が優位になる。結果、脈拍、血圧などは落ち着く。

 
統合失調症などでも、一人でいるよりは、社会の中で役割を持ったほうが回復は早いことが知られています。依存症では自助グループの活動が知られています。

前回の記事でも書きましたが、心理療法など大げさなものではなくても、町で出会った気楽な人たちとの触れ合いが、とても大きな安心感をもたらせてくれる経験を私たちはします。

 
これらのことは、人との一体感を回復して生きづらさから抜け出す方法を知るためには何が必要なのか?
私たちに多くの示唆を与えてくれます。

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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トラウマを負った人たちの独特な人間観

 

トラウマを負った人たちは、人間観も独特なものです。

 

簡単に言えば、人間は〝とても立派な存在”ととらえています。
他者もとても立派で優秀な人だと妙にあがめたり、あるいは、本来は立派あるはずなのに、堕落してそのことに気が付いていないとして、とてもこき下ろしてみたり、します。

 

 

例えば、サービスが悪い、仕事ができない、といったことで他者にイライラするのはなぜか?といえば、本来は立派であるはず(べき)なのに、努力もせずに堕落している姿に腹が立っているのです。

だから、あれほどイライラする。
とにかくこき下ろして、“人間”という枠から除外したい。

 

 

 

 

また、神のように立派な存在から堕落したサタンのように恐ろしい存在として見えている場合もあります。
そのため、トラウマを負った人にとって「人が怖い」というのは、単なる「対人恐怖」といった言葉では形容できないような感覚です。

 

 

クレームが寄せられたら、まさに立派な存在からのダメ出しであり、神か悪魔からの天罰のように感じられ、委縮してしまいます。おろおろして、うまく対応することができません。ミスは絶対にしてはいけない、間違いは罪、といった感覚です。言われたことをすべて真に受けてしまい、深く傷ついてしまいます。

 
一方で自分は、一生取れない呪い、罰を受けて放伐された存在、と言ったように感じられています。ずーっと消えない罪悪感を感じて生きています。罪悪感を感じながらも、自分も本来は立派であるはず、と思っています。そのために、自分が何でもできる、本当はすごい存在なのだ、という意識も裏にはあります。人に対して尊大になったり、妙に自信家になったり、することもあります。
ストレス応答系のリズムに置き換えれば、立派な人間とはテンションの波がない、一定の存在です。大人になることとはテンションの波がないものだと誤解しています。
そこに自分も立派な人間になろうとして、テンションを一定にしようとしますが、すると、尊大になったり、へりくだったり、逆に社会の中で自分は傷ついてしまいます。

本来は波を作りながら、真ん中(センター)であるものなのです。

 

 

 

 

対して、普通の人たちの感覚とは何か?と言えば、わかりやすくいえば、「落語の世界のような人間観」です。
人間というのは立派なものではない、どうしようもないもの、弱いもの、という感覚です。

仕事でミスすることもあるし、飲んだくれることもあるし、浮気をしちゃうかもしれないし、どうしようもない。

「もう、しようがないね~」「ちゃんとしておくれよ!」という感覚。

 

人間が立派な存在だなんて感覚はない。化け物に見えることはない。
(たまに、どうしようもない人間に狐がついておかしくなることはありますが)

自分だって、そんなたいしたことはない。
お互いさまで、とぼけることもある。そういうもの。

もちろん、ミスがあれば怒られるし、いいかげんが良いわけではないけども仕方がない、と言ったことです。

人間がどうしようもない、といったこと、そうしたことを「業」というそうですが、そうしたことが肯定される世界観です。

 

 

 

ストレス応答系のリズムに置き換えれば、テンションに波がある。他者同士で互いにリズムを刻みながら、ダンスをしあうような関係。ストレスに合わせてリズムを刻むので、ほのぼのと生きられる。他者とも一体感を感じてつながることができる。

 

 

 

そのリズムの存在は、トラウマを負った人の目から見たら、「どうしようもない」、未熟で、感情的で、動物的なもののように見えるかもしれませんが、自然で美しいものです。

そのリズムの先には一体感や平和な世界が広がっています。

 

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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ストレス応答のリズムが一体感と平和を生む

 

 

クレーム処理の現場では、まず第一声は、相手のテンションに合わせる必要があるそうです。

怒っている相手に冷静に「どうされましたか?」と返すと、怒りでテンションが上がっている相手からするとバカにされたように感じてしまう。
「どうされましたか!!」と少し口調のテンポを上げて対応すると、相手はわかってくれた、共感されたと感じます。実は「冷静な態度で対応しようとすること」が多くの問題を生んでいることがあります。
職場で、感情的な上司がいたりします。今でいえばモラハラやパワハラということに抵触しそうな存在ですが、そうした人に対して、冷静な態度で接すると相手は、話を聞いていない、態度が悪い、と反感を持たれてしまいます。
クレーム処理と同様に、相手のテンポに合わせる必要があります。

 

 

 

筆者も、職場でそうした経験があります。おそらく心理臨床でいえば、強迫性パーソナリティ障害(発達障害傾向)に該当するような先輩がいて、その人が自分の基準で行動して、周りを振り回していました。
そうした人への反発や恐怖もあって、冷静に対応しようとしていましたが、まったくうまくいきませんでした。
筆者は、冷静に対応して、相手にしないようにしてスルーしようとしたのです。
自分の心の中ではアナグマのようにこもってストレスから身を守ろうとしていました。

これが相手からするとバカにされたと感じられ、かえってエスカレートして、悪いうわさを流されたり、大変なことになったことがあります。
人当たりの良い人は、その辺が上手です。
相手のテンションにうまく合わしてテンションを上げて、ストレスはキャンセルして、流していきます。

 

 

 

 

「相手に合わせると、なんだか自分が汚染されるような、巻き込まれるみたいで嫌なんです」
とおっしゃるクライアントさんも多いです。
しかし、体内の免疫や、国に例えれば国境警備隊(軍隊)や警察などもそうですが、ストレスがあった場合に、それを処理する方法はその場を離れるか、その場にいるなら中和(キャンセル)しかありません。外部からのストレスと同じ力まで内部のテンションを上げて、ストレスをキャンセリングするのです。そうすると、相手との境目でキャンセルされて、中身は平静でいられます。

逆に相手とテンポを合わせないと、かえって、やられっぱなしになってしまう。テンポを合わせるからこそ、相手のストレスをキャンセルできる。

 

 

これが、安定型の人であれば、身体のストレス処理系が自動的に行ってくれます。
実はキャンセリングは、された側も心地が良いもので、一体感を感じます。ちょうどダンスを踊っているようなリズムを互いに刻みあうのです。
さながら、ボクサーや格闘家が試合中に恍惚や一体感を感じるみたいに。どれだけ強いストレスであっても拮抗している間は一体感として感じられるのです。
ただ、ストレスホルモンのリズムが遅れて、ガードが遅れると、パンチを食らって、恐怖で心臓がバクバクして、「もう二度と人と接したくない」とも感じてしまいます。紙一重です。

 

 

 

「ビビる」とは何かといえば、それは性格の問題でも、意志の弱さでもありません。ストレス処理系のリズムが悪い、反応が遅い、ただそれだけです。反応が遅れると、外部からのストレスが勝って、まともにパンチを食らってしまうのです。相手に勝つ必要はありません。ただ、相手と同じリズムを刻めばいいのです。そうすれば、嫌な相手にもビビることなく、逆に一体感を感じることができます。
(昔の人たちが、「胆力」といったことはまさにこうしたことです。)
通常、愛着が安定していて、ストレス応答系のリズムのハーモニーが整っていれば、紙一重の難しい機能も自動的に行ってくれますから、人とも一体感を感じられて、生きづらさを跳ね返し、平和でいられます。
この自律神経のストレス応答のリズムの中にトラウマを負った人たちが生きづらさから本当に抜け出すヒントが隠されています。

 
(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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”ストレス応答系の失調”としての心の悩み

 

人間というのは環境に生きています。外からはいろいろなストレスを受けます。それに対して、ストレス応答系と呼ばれる自律神経システムが自動的に対処してくれます。

10段階で5のストレスには、5のストレスホルモンで中和させる、3のストレスには3のホルモンで返す。

瞬間的、自動的なストレスコントロールによって、内部は平静に保つことができます。

 

 

 

また、対人関係でも、ストレスコントロールが相手との“つながり”を作ってくれます。さながら相手とダンスをするように、ホルモンの波形は形作られます。

このホルモンの動きが、「一体感」を演出してくれます。

人からはストレスもやってきますが、ストレスホルモンが同じ波形を作ってくれている限りは、それは一体感と感じられるのです。

 

 

 

 

ただ、トラウマを負った人は、ストレスホルモンの波形が狂っているので、人からのストレスは「一体感」ではなく、「ハラスメント」と感じられてしまいます。だから、人と一緒にいてもしんどいし、億劫で、楽しくありません。
過度なストレスの場合も、ストレス応答系の機能がストレスを排出してくれます。嫌な記憶は、過去のものとして処理してくれるのです。記憶も身体の代謝であるといえます。しかし、トラウマを負った人の場合は、その処理がうまくいかず、処理されないまま、毒素(トラウマ)として残ってしまいます。
トラウマとは、“記憶”というストレス処理系機能の失調なのです。
ストレス処理という側面から、生きづらさや悩みをとらえると面白いことが見えてきます。

 

 

 

例えば、甲状腺や副腎に失調がある人は、心の悩みを引き起こしやすいことが知られています。ちょっとしたことでも虐待、ハラスメントだと感じられたり、情緒が不安定で記憶もおかしくなったりします。これも自律神経で重要な役割を果たす機能が低下することがストレス処理システムに影響した結果であると考えられます。

 
別の例では、発達障害の場合も、心の悩みを引き起こしやすい。原的な不安を抱えていて、些細なストレスでもトラウマ化しやすい。
発達障害の方は、体温の調節ができなかったり、汗をかかない、感覚過敏など身体の問題でも知られています。発達障害とは「身体の失調である」という専門家もいます。
体温の調節など自律神経系が、定型発達であればオートマティックであるのに対して、発達障害の場合はマニュアル操作であると例えられます。頭でコントロールしなければうまく動いてくれない。
体温以外のストレス処理でも、頭でコントロールしなければならないので、些細なストレスでもやられてしまう。
やられないように先回りすると読み違えて「関係念慮」に陥ってしまう。発達障害の方は、代謝がうまく働いてくれていないのです。

 

 

 

トラウマを負った人も同様にストレス処理などの自律神経系に失調をきたします。とくに長期間のストレスには動物は対処できるようにはできていないため、HPA軸と呼ばれるストレス処理システムは狂ってしまう。

 
すると、ストレス、記憶などが更新できなくなってしまうのです。処理ができないがないため、毒素(ストレス)が排出できない。嫌な記憶が抜けない。恥や罪の感覚にずーっとさいなまされてしまう。加害者も覚えていないようなことをずーっと記憶して、それが反芻してしまうのです。

対人関係も悪く固定化されてしまう。小学校のころにいじめられたこと、親から「ダメな子」と呼ばれたことなど、その関係性をずーっと引きずってしまう。

 

 

 

健全なコンディションであれば、新たなネットワークにつながりながら関係はどんどんと更新されていくので、過去の嫌な関係性も自動的に少しずつ変わっていきます。嫌な相手でもある時に「あれ?この人って、こんな人だったっけ」となります。それは自律神経が関係を自動更新してくれたおかげです。

 

 

このように、心の悩みを、“ストレス応答系の失調”であるととらえると、皆様の生きづらさを本当に解決する糸口や悩みの本質が見えてきます。

 

 

(参考)→「トラウマ、PTSDとは何か?あなたの悩みの根本原因と克服

 

 

 

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